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第二十三話 王都防衛線4

「うりゃうりゃうりゃ!」

鬼丸が叫びながら刀を振る。すれ違う魔物を薙ぎ倒していき、俺がその後ろに続いた。

「多分教会だ!あの坂登りきったらすぐだぞ、見失うなよ!」

「言われなくても……っ」

息は少し上がっているが、俺は何とか鬼丸のスピードについていけていた。運び屋の鬼丸に食らいついていけるのはホークさんの特訓もあるが、それ以上に魔物を斬ることで鬼丸のスピードが落ちているからだ。

「クソっ、このままだと地の利を取られる!おい何とかしろ!」

「無茶言うな!こんなオンボロに何期待してんだ!」

作戦はシンプルだ。鬼丸が俺をアンドリューのところまで護衛し、俺がそれを斬る。そして討ち漏らした分はアルシエルが担当するというものだ。人数が少ないならこの辺りが妥当だろう。担当する魔物の数も実力順。まあ俺の一は魔王もどきなんだが。

「この多さは厄介だな、捌ききれないかもしれねえ」

斬り進みつつも鬼丸は顔をしかめた。確かに、この魔物の数では一太刀で切り伏せたとしても囲まれてしまうだろう。

「クソっ、上からポコポコ殴って来やがって。ケダモノのくせに小賢しいことしやがる」

鬼丸が舌打ちをした。鬼丸の言う通り、魔物たちは坂の上の方から各々の武器を振り下ろしている。対する鬼丸は切り伏せるという動作が行いづらくなり、結果的に鬼丸は防御が必須になって、手数が減っている。

「おい、大丈夫かよ?」

「ケッ、当たり前よ」

鬼丸はにやりと笑う。同時に、、吠える魔物を吹き飛ばし、刀を引く。

「月牙の型――三日月!」

勢いよく踏み込み刀を薙ぎ払う。魔物を吹き飛ばすと同時に鬼丸はさらに刀を引いて、突進した。

「破月!」

そのまま刀を引き抜くと、今度は勢いよく跳びあがる。

「満月ッ!」

魔物の群れへと飛び込むと、今度は刀を地面に突き刺した。衝撃によって魔物が浮き上がる。そのまま鬼丸も刀を支えにして、棒高跳びのように跳びあがった。そしてそのまま魔物の中心で独楽のように回り出す。浮き上がった魔物たちはあっという間に刀によって吹き飛ばされる。

目の前の魔物を粗方吹き飛ばしたところで、鬼丸は着地した。

「ざっとこんなもんよ」

ドヤ顔でこっちを見てるが、お前護衛だろうが。勝手に先に行くんじゃねえよ。

「シャァッ」

いつの間にか俺の周りを魔物が囲んでいた。まずい。こんな数は流石にやり過ごせない。

「――やれやれ、前線を崩すとは二流だな」

それと同時にいくつもの腕が魔物を薙ぎ払った。アルシエルの魔術だ。

「しっかりしろ、生憎とこれは加減が利かんのでな、当たったら命の保障はできん」

明らかに味方に吐いていい台詞じゃねえ。だが、頼もしいのは確かだ。

「いちいち相手にするのもいい加減に面倒だ、さっさと終わらせるか」

アルシエルは腕に魔力を集中させた。腕がゆらめく炎のように変質し、同時に黒いタールのようなものが地面を満たした。

「ソロモン継承術式、奈落の王の嘆き」

途端、タールの部分から湧きだした無数の腕が、魔物たちを引っ掴んだ。魔物たちが振りほどこうと暴れまわっているが、腕はびくともしない。

「穴蔵へ、帰れ」

アルシエルが囁く。すると腕は一気にタールへと戻っていった。同時に魔物たちも黒いタールに引きずり込まれていく。

「な、何か結構エグイ絵面だな……」

「流石は元魔王軍の幹部……」

俺と鬼丸が二人でドン引きする中、アルシエルがきょとんとして問いかける。

「ん、どうした?さっさと魔王モドキを倒して来い」

「あ、ああ」

何だか間抜けな返しになってしまったが、鬼丸とアルシエルのお陰で、何とかアンドリューの許へと行けそうだ。

「よっしゃ行くぜえ!」

俺は再び駆けだした。鬼丸も横についている。このまま一気に聖剣で斬り倒せば、勝てる。

そのために俺にはまだやらなきゃならないことがあった。

「……ホントにコレ食うのかよ」

アルシエルの宝石。メニュー画面から使うことができない以上、食うしかないというのは頭では分かっている。分かっているが……。

「……何というかこんなもん胃に入ったら破れるんじゃないか」

「オイ、さっさとしろ!」

鬼丸が叫んだ。確かにもうアンドリューは目の前だ。

「……ええい、ままよ!」

宝石を口に含む。かみ砕く前に宝石は一瞬で溶けた。一体何があったのか、そう思う間もなく、体中が熱くなる。どくどくと血管が脈打っているのが分かった。

「おい、大丈夫か?」

鬼丸が問いかける。問題ない。確かにあっちこっちが痛む。血の巡りが良すぎて、頭も爆発しそうだ。

でも。

「このために来たんだ、やってやれねえことはねえ!」

自分に言い聞かせるように叫ぶ。アンドリューが近づいてきた。やるしかない。このまま一気に詰め寄って、斬る!

「うおおおおおおおっ!」

勢いよく踏み込み、剣を払う。魔王を斬った剣だというなら、それらしく働いてみせろと、強く剣を握った。

だが、聖剣がアンドリューに届こうかと言う瞬間、腹に衝撃が走る。横へ払ったアンドリューの腕が、肋にの辺りにのめり込んでいた。

「がっ」

やべっと思った瞬間、俺は横へと吹っ飛ばされた。建物に勢いよく突っ込む。何とか助かったけど、動けそうにない。

「クソっ、駄目か」

聖剣は反応しなかった。鬼丸の言葉がいやにはっきりと響く。やっぱり駄目だったか。普通の高校生には少し荷が重い。それでも、できると、やりたいと思ったんだけどな。

何とか目を開く。アンドリューがこちらに歩いてきた。とどめを刺す気だろうか。ずしりずしりと足音が響く。

「あれ……」

見るとアンドリューの体がうっすらと光っている。さっきまでは見えなかったのに。一体どうして……。

さらに目をこらすと、アンドリューの体から発する光はどこかへと続いていた。それを目で追うと、その先にいるのは、

「レナ、さん……?」

遅くなって申し訳ありません。リアルが忙しくなったので、投稿ペースは少し落ちるかと思いますが、一応生きているのでご安心を。最後まで頑張りますのでよろしくお願いします。

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