第十八話 戦いの号令
「……んで」
王様が若干顔を引きつらせる。
「何があった」
俺たちを見て王様が訳の分からんことを言っている。はて、一体何がおかしいのか。
「ひとおつ、ふたあつ……」
「そっちに行っちゃ駄目だ……殺される」
「それだよそれ!これから大一番だってのに、何でそこだけサイコスリラーみたいなノリになってんだよ」
「「イメージトレーニングです」」
「何のイメージだっ!」
王様はこちらでは埒が開かないなどと言うと、ホークさんの肩を抱いた。
「テメエ、俺は使えるように鍛えろっつたんだ、何だコレ完全にトラウマ刻まれちまってんじゃねえか!」
「休憩時間もきちっと取らせた。体に問題はないはずだが」
「明らかに心の問題だろうが!お前何やらかした⁉」
ふむ、とホークさんは顎に手を当てる。
「殺し合い(ころしあい)と、素振りだな」
「前半とんでもなく不穏な響きがしたんだが」
「そんなことはない、俺は極めて文明的な訓練を実施したんだ……な?」
「「イエス・サー!」」
俺たちはびしりと敬礼をした。教官に対する態度としては至極真っ当なものだったのだが。
「本当に何やったんだよ!」
王様は頭を抱えながらシルヴィアの方を見る。
「お前は大丈夫か?」
「大丈夫です、要は合法的に暴れられるのですよね?」
「うん分かったいつも通りだね逆に怖いね」
王様は一人で腹を痛めているような面をしているが、一体何を考えているのだろう。
「そういえばレナ君はどうした?」
「訓練の途中で様子を見に来ていたが……」
「ああ、お嬢なら調べごとがあるとか言っていましたが……」
鬼丸が応える。あれ、そんなことあったっけ。まあ訓練期間の記憶なんて殆どないけど。
「調べごとねえ。レナ君が遅刻なんて珍しいな」
「まあ直に姿を見せるだろう、アルシエルの言が正しければ儀式魔法の発動は今日か明日、魔物の群れは今日中に来ることは確定だろうしな」
ホークさんはそう言うものの、王都の周りに不審な気配はない。警備隊の人たち曰く、空の魔物はかなり近づいているらしいのだが。
「アルシエルは来るんですかね?」
「来るには来るだろう。まあでも乱戦になれば確実に敵と見間違われるだろうからなあ。大勢では来ないんじゃないか?」
確かにアルシエルの部下は全員魔物と勘違いされそうだ。ってかあれも魔物なんじゃないだろうか。
「陛下」
俺たちが話していると、衛兵がこちらに駆け寄ってきた。魔物がやってきたのだろうか?
「どうした、何があった?」
「そ、それが……」
「これはこれは皆さんお揃いで、ご苦労様です」
いつものように大きな体をゆっさゆっさと揺らしながら、オムがやって来た。こんなときに一体何の用だろう。
「これはこれはオム神父、相変わらずお元気そうで。教会では清貧が美徳と伺いましたが、どうやらデマなようですなあ」
王様が出合い頭に随分と失礼な台詞を吐いている。いくら政敵とは言ってもそりゃあ流石にまずいんじゃないのかね。
「いえいえ、陛下こそ勇者をあっさり懐柔するとは。全く大したものだ。利用できるものは勇者でも利用する、まさに神を神とも思わぬ所業、あなたぐらいにしかできませんな」
オムの方も随分と挑発的なことを言い、お互いにふふふと笑う。営業スマイルのお手本のような不自然な笑い声が街道に響く。
「おい、今はそんなことをしている場合じゃないぞ」
ホークさんが背後からうんざりとした顔で王様に寄るが、一応教会の偉い人なんだからこんなこととか言っちゃ駄目なんじゃ……。
「まあ、魔物相手に私は無力ですからな、大人しくしていましょう。近頃は物騒ですからなあ」
オムはそう言って立ち去ろうとしたが、俺を見るとにやりと笑って
「……貴方も気を付けなされ」
最後にそれだけ付け足して、今度こそオムは去った。
「……随分とまあ黒幕らしいセリフだこと」
去り行くオムの背中を眺めながら、王様がうんざりとした声で呟いた。
「気づかないふりをしてやれよ……」
まああそこまでニヤニヤ笑ってたら気が付きそうなもんだけど。
「本人は勝利を確信したから出てきたんだろう。やることがいちいち小悪党だからな」
ホークさんも結構辛辣だ。やはり長年の政敵なだけあって鬱憤が溜まっているんだろうか。
「それよりも隊長」
「ああ」
衛兵の耳打ちに、ホークさんが空を見上げる。
それと同時に、甲高い鳥の鳴き声のようなものが空に鳴り響いた。
「始まったな」
空には大量の魔物。改めて見ると凄い数だ。
「多いな」
鬼丸も横で呻いている。
「増えたなら減らせばいい。実に簡単だ」
シルヴィアは相変わらず頭の悪そうなことを言っている。だがその通りだ。敵が何であれ、やるしかない。
「迎撃開始!」
「うおおおおおおおおっ!」
王様の檄に、俺たちが吠える。
王都防衛戦が、始まった。
いよいよ決戦!ゴールが見えてきました!頑張るぞい!頑張るぞい!
……戦闘シーンばっかだろうなあ。字数多くなるなあ。
ぞれでは次回!




