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第十六話 戦いに備えて

王都警備隊屯所。その離れにあるという道場で、

「あのー、ホークさん?」

「何だ?」

俺はなぜか首に剣を突き付けられていた。

「これ真剣ですよね?」

「ふむ」

「修行じゃないんですか?」

「真剣で修行するんだ」

ナルホドー真剣で修行するんだーそっかあ。死なねえかそれ?

「戦場にお前をやるにはまず真剣の重みを知ってもらわなければならん。文句は言わせんぞ小僧」

まあ時間もないし、付け焼刃にしてもより実戦に近い形が良いということだろうか。しぶしぶと言った感じで置いてある剣を手に取る。

「意外に重いな、これ」

真剣は想像していたよりもずっと重かった。先を思わず地面に置いてしまう。これを振り回すのって実はかなり難しいんじゃないだろうか。

「元々殴るものだからな、重量があるのは道理だろう。魔術師の軽装化に伴い切断力が問われるようにはなっているがね」

改めて、ホークさんは剣を構えた。切っ先を向けながらこちらを見つめる。

「始めに言っておくが、お前に剣の才はない。どう足掻いたところで純粋な剣技はまず完成しない、生涯かかってもな――それでも目指すのか?」

才能はない。随分とはっきり言ってくれるもんだ。だがそれは昨夜思い知った。今更それを理由に降りることなんてありえない。

「くどいぜおっさん、やるっつんだからやるんだよ」

不敵に笑って見せると、ホークさんはそれに無感動に頷いた。足を引き、構えを取る。俺もしれに倣い、眼前に剣を持って行った。

「取りあえず、貴様には実戦で死なぬように、死んでもらう」

……ん?何そのとんち?

「それってどう意味で――ええ⁉」

いきなり剣が振り下ろされる。何だあれ、当たってたら死ぬぞ。

「人は死を前にすると感覚が鋭利になる、その状況を継続して経験することで、貴様には何を喰らえば死ぬのかを体で理解してもらう」

「何だよその理論滅茶苦茶だろ、だったら別に木刀でも良くね⁉」

「馬鹿もん、五日しかないんだ。真剣の重さに慣れておかねば訓練の意味がなくなる」

それに、とホークさんは剣を振りながら言葉を継いだ。

「貴様には聞きたいことがあるしな」

にやりと笑ったホークさんの笑みは、明らかに支障が弟子に向けるものじゃなかった。

――結婚する気があるのかないのか

そっちがメインかあああっ!

「死ねえええ!」

「聞く気ないだろ絶対!」

くっそう修行とか言われてやる気だした若者になんて仕打ちだ!俺でなかったらぐれてるよコレ!

一方で俺が逃げ回っている中、鬼丸はぽつんと立っていた。

「……ったくあのアホは何やってんだ」

言いつつ手近な剣を手に取る。すると剣から紐が伸び、鬼丸の手はぐるぐる巻きになった。

「取れねえんだけどコレェ!」

「貴様には素振りだ!一日千回!」

「はぁ!?」

鬼丸の方もかなりの難題をふっかけられているようだ。

「俺はそこの雑魚とは違うんだ、今更そんな基礎――」

言っているそばからホークさんは俺の襟首を引っ掴んで放り投げる。俺は鬼丸の目の前に突っ込んだ。

「夕べの貴様を見ていたが何だあの構えは。一撃で屠れる相手ならまだしも、そうでなければ隙だらけだ。正しい素振りをやっこなかったからそうなるのだ」

「だったらその正しい素振りとやらを教えるのが筋ってもんじゃねえのかよ」

鬼丸はまあ無理矢理連れてこられたんだし、文句の一つや二つ言いたくもなるだろう。

「一兵卒の成り上がりは往々にして己の哲学に縛られる。そいつを壊して建て直すほどの時間はない」

ホークさんはにやりと笑う。

「体をいじめていればその内体が教えてくれるさ……最も効率の良い体の使い方をな」

どんだけ体って言うんだ。あんた面が完全に悪役のそれだよ。修行をつけてくれる人間の顔じゃないよ。

「さて、質問がなければ私は引き続きそこのアホをしごくが……何かあるか?」

「……無いっス」

「よろしい。では始めるか――おいいつまで寝てる」

ホークさんがこちらを見る。中々にとんでもない師匠にぶち当たってしまったらしいが、四の五の言っても仕方がない。ここは一つ開き直って修行をするしか

「フフフ、安心しろこれは修行だ。うっかり斬りつけても合法、合法なのだ……」

何か言ってることがとんでもなく不穏当なんだが。

もしかしたら俺、修行で死んじゃうかもしれません。

少なくて申し訳ない……。こいつらがいるとギャグになっちゃうなあ不思議だなあ。

果たして始は生きて次回を迎えることができるのでしょうか?

それでは次回。

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