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なんと狼

「この料理うまっ!」

「そうですか、よかったです!」


 僕は今、王都のとあるレストランに来ている。

 おしゃれで落ち着いた雰囲気が心地よい。

 ファミレスとかではなく、本当のレストランだ。

 なんでも、ルミスのおすすめなんだそう。


「でも、高いよなぁ。コーヒー一杯一万カラーってどうなってるんだ?」

「……そういうことは、聞こえないように言ってください、黒城さん。

 ほら、店員の方がこっちを見てるじゃないですか」


 あ、やべ、本当だ。

 口は災いの門っていうし、すこし考えて喋んなきゃな。

 にしても、高いよな。なんで、サラダ一つで三万カラーってなんだ?三千円するのか、このサラダは。

 でも、うまいはうまいしなあ、あ、そうだ。


「すみません!」

「はい、いかがなさいましたか」

「シェフの方呼んでいただけますか?」

「かしこまりました」


 店員さんが厨房へ入った数十秒後、半端なく長いコック帽をした背の高い男性が現れた。

 ……もともと背が高いのに、あんな1mあるような帽子つけたら移動に困るだろ。あ、ほらぶつけた。またぶつけた。言わんこっちゃない。

 その後もシェフは幾度となくその帽子をぶつけながら、やっとのことでこちらに来た。おそいわ。


「どんな要件だ?さっさと言え」


 ……高圧的すぎるだろ。なんだお前。

「あ、いえ。少しチップをと思いまして」

「ん?あ、そうなのか。じゃあ、さっさと渡せ」

 うわー渡したくねー。でもしょうがない。目的のためだ。

「では、一万カラー程」

「ああー、一万かー、もっとよこせよ」


 こいつ、殴ろうか?殴っていいよな?今なら神様も許してくれるよな?


「そんなこと言うなら渡しませんよ。それどころか、この店を潰しましょうか?私は黒城武人と申しまして、先日ルミス姫と婚約させていただきました。それに伴い、私は公爵位を授かりました。ある程度の権力は持っているはずなので、この店如き簡単につぶせますよ?もし、権力に頼らずとも、この土地を買収することぐらい可能ですし、というかここであなたのことを不敬罪で処刑することも……」

「わかった!俺が悪かった!頼む、この店は潰さないでくれ!」


 まあ、もともと潰す気なんてないし、そもそもさっきの話はできるかどうかも分からないことをずらずらと適当に言っただけだけど。

 若干ルミスが引いているが極めて意識しないようにする。


「では、ありがたくいただきます」

「どうぞ……コピー」

『調理を習得しました』

 シェフは僕から一万カラーを受け取り、そそくさと厨房へ戻っていった。

「あの……大丈夫ですか?」

「あー、うん。平気平気。全然OK。

 目的も達成したしね」

「目的?」

「うん。僕は人の能力とか魔法とかをコピーできるんだ。

 人の能力をコピーすれば、その人と同程度のことができるようになるんだ。

 だから、料理のうまいレストランのシェフの能力をコピーすれば、その料理を自分で作れるようになる。」

 つまり、神。


「それって、かなり凄くないですか?」

「うん、そうだね」

 まあ、簡単に言えば各分野の世界一の能力をコピーすれば、新世界の神になれる。やらないけど。


「さあて、そろそろ帰るか」

「あ、はい!」

 僕らは会計を済ませて店を後にした。



「ん?あれはなんだ?」

 道を歩いていると、何やら人だかりができているようだった。

「なんでしょうね?行ってみます?」

「ああ」

 僕らは人だかりを抜ける。


 するとそこで目にしたのは、オオカミ……いや、オオカミにしてはでかすぎるな、5mぐらいあるぞ。魔獣か?

「あれは……覇狼(はろう)ですね」

 ん?hello(ハロー)?いや、それはないな。まあ、いいか。

「通常は天光山(てんこうざん)にしかいないはずですが……」

「そんなのがなんでこんなところにいるの?」

「なぜでしょうか……空間のねじれがあったとか?」

 あー、もしかして僕がこっちの世界に来た時のやつかな?

「今はおとなしいですが、いつ暴れだすかわかりませんし、殺処分しかないと思いますが」

 マジか。僕がこっちに来たとばっちりで死ぬとか嫌なんだけど。

 うーん、よし、あの魔法を試すか。

「ちょっと待ってて」

「あ、はい」


 僕ははろーの前へ出る。

 はろーは僕の姿を認めるや否や、その巨体でとびかかってきた。

 しかし、僕は動かない。

 周りの群衆が息をのむ。『あいつは死んだ』と。

 そして、はろーの鋭い爪が僕に当たり――


「オビディエンス」


 そうになったところで、僕は魔法を唱えた。

 その瞬間、はろーは急ブレーキをかけ、停止する。

 お座りの状態だ。犬じゃないけど。


「よーし、成功」

 僕がかけたのは服従の魔法だ。

 とても強力な魔法だが、人間には効果がなく、また、至近距離でなければならない。

 前に魔法の効果を試したときは、周りに動物がいなかったから練習ができなかったのだ。

 まあ、別に失敗しても気絶させられたからいいんだけど。


「おっと」

 はろーに舐められた。でけえよお前。

「す、すごいです。あの覇狼を一瞬で手なずけるなんて……」

 ルミスがあっけにとられながらつぶやく。

「そんな凄いことなの?」

「ええ、覇狼は全く人になつきませんから」

 まあ、そんな感じがする。

「まあ、何にせよ、新しい仲間ができたな」

「あ、そうですね。

よろしくね、スキロスちゃん」

「こいつの名前?」

 なかなかかっこいいな。


「はい、『犬』という意味です」

 前言撤回。全然かっこよくない。

「安直すぎるだろ」

「えー、かっこいいじゃないですか。スキロス。

ねー、スキロスちゃん!」

「バウッ」

 おい、お前はそれでいいのか……。

「まあいいや。じゃ、よろしくな、スキロス」

「バウバウッ」



一人(一匹)僕たちに仲間が増えた。

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