なんと同居
「で、どういうことなんですかね?
僕が姫様と結婚って」
「あ、いやその...。
そのまんまの意味だ...そなたをルミスの婿にと...」
僕は、半端ない威圧感とともに陛下を問い詰める。
「本人の意思は無視なんですか!あなたは!」
「私は大歓迎ですけど...」
「いや、あの姫様...そういうことでなくて。
結婚するにしろしないにしろ、いったん本人の意思を聞きませんかね、ふつうは!」
「あ、いや...その、何と言うか流れでな...。
ノリで言ってしまった...。すまんな」
「ノリぃ!?
あなたのノリで人の人生が変わったんですけども?」
「私は嬉しいですけど...」
「あー、そういうことでは...。」
「というか、黒城殿は嫌なのか?
一国の王女と結婚できるなど幸運のはずだが...」
それは婿側の言葉で、嫁側が言う言葉じゃないぞ。
「黒城さんは私では嫌ですか...?」
そんな涙ぐんだ目で見るな。
なんか苛めてるような気持になるだろ。
「いや、それはありがたいんですけども、僕が言っているのは他人の人生に関わることを本人の意思なしに勝手に決めるのはどうかと...国王陛下、どこへ行かれるんですか?」
「ひっ」
こっそり応接間から出ようとしていた陛下に声をかける。
「なに逃げようとしてるんですか。
まだ話は終わってませんよ。こちらへいらしてください」
「は、はひっ」
有無を言わさぬ威圧感で、陛下を従わせる。
その後、応接間で2時間ほど陛下に説教をした。
最後の方は、もう陛下が涙目になってしまった。
...やりすぎたか?
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...で。
「なんでついてきてるんですか、姫様...」
「なに言ってるんですか。嫁が夫についていくのは当たり前ですよ」
「いや、まだ結婚してませんからね。
というか、姫様はあれでいいんですか?」
姫様も意志など聞かれずに婚約させられてしまったはずなんだが。
「はい、私は大歓迎ですよ。
...やっぱり嫌ですか?」
だから、その涙目はやめろ、反則だ。
「いや...じゃない...です」
「なら、問題ありませんね。
あと、その敬語はやめてください」
えー。
「あー、わかった。姫様がそういうなら」
「『姫様』もやめてください。
私はルミスです」
えぇぇー。
「はあ...ルミス」
「はい!」
「...じゃ、中に入ろう」
僕はルミスの手をとる。
「ひゃっ!?」
「テレポート」
一瞬で屋敷の中に転移する。
「こ、これは?
助けていただいた時も使っていましたが...」
「ああ、テレポートっていう転移魔法だよ。
座標移動だからどんな場所でも行ける」
「転移魔法!?」
ん、どうしたんだろ。
「転移魔法って、使える者は世界に5人もいないという、あの転移魔法ですか!?」
「どの転移魔法か知らないけど、たぶんそれ」
「黒城さんは、だ、大魔導士...なんですか?」
「なにそれ」
「すべての魔法を使いこなすといわれている魔導士ですよ。
禁忌とされている魔法ですらいとも簡単に操るという」
「多分できるよ」
「へ!?」
スキルコピー使えば一発で覚えられるしね。
まあ、魔力が足りなかったら使えないけど、今んところ魔力が減るって感覚はないしたぶん大丈夫だろ。
ピンポーン
ん、なんだ?
屋敷の扉を開けると、そこには、一人の男が跪いていた。
...え?なんだろうこの人。
僕が考えていると、男がいきなりキリッとした目をこちらに向けて言い放った。
「お届け物でございます」
「...へ、あ、ありがとうございます」
僕は箱を受け取る。
え?郵便?こんな真剣に考えさせといて郵便?
「私如きに感謝など、勿体のうございます。
では、失礼いたします!」
「・・・・・・・・・」
え、なにあれ。
「黒城さんは公爵で、しかも私の旦那様です。
つまり、ほぼ貴族のトップにいることになります」
「え、そうなの?」
ルミスが僕の心を見透かしたように答えてくれた。
「はい。かなりの権力を持っているんですよ、黒城さんは」
「えー。めんどくさ」
「そんなことおっしゃらず」
はあ...権力とか別にいらないんだけどな。
「あ、そだ。ルミス、部屋は何処にする?
とりあえず、空いてる部屋の中から選んでくれれば...」
「黒城さんと同じ部屋で!」
「断固拒否」
「なんでですかぁー」
こんなかわいい子が同じ部屋にいたら眠れないわ。
「えっと、時期尚早?まだ早い」
「私は大丈夫です」
「うん、僕がダメ」
「いえ、大丈夫です!」
「いや、ダメ」
「大丈夫です!覚悟はできています!」
「覚悟って何!?何の覚悟!?
ダメだって!」
僕はこの後、1時間ほどかけて、ルミスを説得した。
...苦労しそうだな。これから。