なんと婚約
「ルッ、ルミスゥゥゥ!!!」
「お父様!」
無事に姫様を送り届けられたな。
「大丈夫だったか?
怪我はないか?
酷いことされてないか?」
「大丈夫です。
黒城さんが助けてくれましたし」
「ならよかった!
黒城殿、本当にありがとう!
街道の時と言い、そなたには助けられてばかりだな」
「いえ、なんてことないですよ。
屋敷もお金もいただいちゃいましたし」
「それは街道の時の謝礼だ。
もう一度、今度は国民の前で感謝を伝えたい」
「え!?いや、それはその...恥ずかしいというか、なんというか...。」
まあ一番の本音は『めんどくさい』だけど。
「そんなこと言わずに、さあ。
今すぐにでも始めようじゃないか」
「今すぐですか!?」
「ああ、もう国民には伝えてある。
さあ、城のバルコニーへ行こう」
手回し速過ぎるだろ!
くそ、もう後には引けないか...。
「分かりました。行きます」
「そうか。では、急ごう」
ああ、面倒くさいな。
はぁぁぁぁ......。
王様に連れられるまま、僕は階段を上がりバルコニーへの扉を開ける。
『ワアアアァァァァァァァ!!!!!!』
凄まじい喧騒とともに僕はバルコニーへ出る。
うわあ、超たくさん人がいるな...。
広場が人で埋め尽くされてる。
「国民たちよ、よく聞け!
我ら王族は二度にわたり一人の男に助けられた!
その男こそ、黒城武人伯爵だ!」
『ワアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!』
うるさい。
「この男の勇気と力に敬意を表し、爵位第一位、公爵位をさずける!
そして...余の娘、ルミスの婿へと迎え入れる!」
『ワアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!!』
「はああああああぁぁぁぁ!?」
ちょっと待て!なんだその話聞いてないぞ!?
え、なに?なんで姫様顔赤くしてるの?
「さあ、黒城殿前へ」
「ええぇ.........」
「こんなの適当に済ませればいいのだよ」
おい、国王がそんなでいいのか。
「分かりました、やります。やればいいんでしょう」
まじでめんどくさい。
なに言おうかな...。
下手なこと言って反感買うのも嫌だしな。
「リペティション、トランスミットセンス
えー。テステス聞こえますかー」
『!?』
「聞こえてますね。
では、改めましてこんにちは、黒城武人です。」
トランスミットセンスは、相手の五感を直接刺激して情報を送信する魔法だ。
視覚を刺激して映像を送ったり、今やっているように聴覚を刺激してスピーカー替わりにしたり、味覚を刺激して疑似試食をしたり、触角を刺激して体中に激痛を走らせたり、用途は様々だ。
とりあえずここはビシッと決めるか。
「えー、公爵位を授かりまして、姫様の婿に取っていただけるということで、より一層精進していきたいと思います」
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『終わり!?』
広場中の声がはもる。
「お、おほん。
では、みなこれからもよろしく頼む」
ああ、陛下ありがとう。あのままじゃ恥ずかしくて死ぬところだったよ。
「はああああああぁぁぁぁ.........」
僕は今までの人生で一番深いため息とともに城の中へ戻っていった。