なんと魔法
「エクスプロージョン!」
僕の手から小さな火球が放たれ、地面に着弾...。
ドギュッボォガドガァァーーーーーーン
文字道理想像を絶した。
一瞬で着弾地点から半径10mが更地になった。というかクレーターになった。
平原に出てきてて良かったぁ。
「これはいざというときまで封印だな」
僕は今、魔法のテストをしている。
屋敷で、何気なく魔法の本を読みながら「コピー」って言ってみたら、その本の魔法全部いっぺんに覚えられた。
『ファイヤーボールを習得しました』『ファイヤーウォールを習得しました』『ファイヤーピラーを習得しました』『ファイヤーアローを習得しました』『ファイヤーレイを習得しました』『ファイヤーカッターを習得しました』『ウォーターカッターを習得しました』『ウォータービームを習得しました』『ウォーターフィールドを...』
と頭の中が一時的にカオス状態になったが、これは大きな収穫になったといえる。
ちなみに、本に載っている魔法の内、一つだけを覚えることもできた。
まあ、毎回毎回頭の中があんなカオス状態になってたら精神的にまいっちゃうしね。
何はともあれ、これで魔法も使えるようになったわけだ。
「よし、じゃあそろそろ帰るか。
テレポート」
視界が一瞬で変わる。
いやあ、魔法は便利だなあ。
「そうだ、この屋敷が傷つかないようにしておこうか。
プロテクション」
プロテクションはその名の通り、物体を保護する魔法だ。
ただし、衝撃は受けてしまうようで、例えば、人間にこの魔法をかければ怪我はしなくなるけど、強い力で殴られれば最悪の場合死んでしまうらしい。
便利なことに変わりはないけど。
「いやあ、しかし持て余すな。こんな広い屋敷。」
三階建ての部屋数にして30部屋。
一人暮らしだったら2LDKでも広いぐらいなのにこの屋敷なんLDKだよ。
ピンポーン
「ん、誰だろ」
異世界に来てまだ2日もたってないから家に来るほど親しい人なんかいないはずなんだけどな。
まあ、待たせるのも悪いし出るか。
僕は屋敷の扉を開ける。
そこにいたのは、金髪に王冠をかぶりその尊厳のある顔を隠そうともせずに真直ぐにこちらを向くこの国の最高権力者、国王陛下その人であった。
って
「なにしてるんですか」
「いや、先日のは公的な謝礼だったからな。
個人的に感謝を伝えに来たのだ」
「いや、それでもおかしいですよ。護衛の一人も連れずに陛下が出歩くなんて。
...というか、本当に護衛の方は?」
「こっそり抜け出してきた」
「本当に何してるんですかっ!!!」
「はっはっは。そう固いこと言うな。
中に入らせてもらうぞ」
本当に何やってんだこの人。
今頃城中を家臣たちが探し回ってるのかな。
...これ、僕のせいになったりしないよね?大丈夫だよね?
うん、大丈夫だと信じよう。
ごめんなさい、家臣の方々。
僕は凄まじい倦怠感を伴いながら屋敷の中へと入った。
「では、改めて感謝する」
国王陛下は深々と頭を下げた。
「頭を上げて下さい。
そんな大したことしてませんて」
僕のしたことなんて国王の命を狙っていた賊を倒しただけだ。
「いや、黒城殿がどう感じているかは知らんが、あやつらはこの国で一番の賞金首だったのだ。」
え?あの豚リーダーの賊が?
「あやつらによって、計9人の貴族が殺された。ましてや国民の被害者の総数など100では済まないだろう。
しかも、逃げ足も一流でな、なかなか捕まえられんかったのだ」
あのデブリーダーそんなことしてたのか...うわ、今更ながらにあいつら殺したくなってきた。
「だが、黒城殿のおかげで捕まえることができた。
本当にありがとう。」
またも深々と頭を下げる国王陛下。
「そんな黒城殿の力を見込んで頼みがあるのだがっ!!!」
うわっ!いきなり叫ばないで、びっくりするから。
「な、なんですか...?」
「実はな...余の娘、ルミスが何者かによって攫われたのだ!
「な!?」
「このことは国の上位層の者しか知らぬ。
一刻も早くルミスを助けなければぁぁぁぁぁ!
ルミスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
うるさい!うるさいわ!!!
しかし、姫様が攫われたとは...反国王勢力みたいなやつらかな?
国の危機といったやつだろうか。
ちょっとめんどくさいが、是か否かといったら...。
「分かりました。やりましょう」
「おお!やってくれるか!!
成功したら報酬は弾むぞ!」
正直もうお金はいらないが、もらえるものはもらっておこう。
「では、今すぐにでも行きましょうか」
「犯人もわからないのにか!?」
「いえ、僕には魔法がありますので」
魔法にかかればチョチョイのチョイだ。
さ、いっちょ犯人を潰しに行きますか。