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猫耳少女の素敵異世界勇者録  作者: apricoap
黒の勇者が旅立つまで
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最初の一歩とちょっとしたお願い

没タイトル「設定の羅列とちょっとした会話」

もうちょっと自然に書けなかったものだろうか


そんな感じで僕は気合いを入れなおしたわけだ。


結構大げさに言っているけど、実は娼婦とかにならずに孤児院から旅立つ権利自体は結構簡単に手に入る。

神殿の神官長様に面会して、訴えて自分だけで生活していけることを認めさせるだけ。

しかも、この行為自体は形式的なもので基本的に通る。


そして、認められたら晴れて自由の身ってわけさ。


ただ、残念ながらさすがに神様が直々に選んだ教会というか、ここの神官長様はとてもいい人でね?


獣人っぽいのに体が弱い僕をとても気にかけていて、生半可な説得じゃ旅立たせてくれない。

というわけで僕は認めてもらうためにはある程度手に職をつけるか強さを見せなければならない。


つまり、段階を踏んで認めざるを得ない状況にしなければいけないってわけだね。


そのためには元の世界だと強くなるためにはまず筋トレとかから始めるんだけどこの世界では違う。

この世界筋トレしても力は強くならないし、走っても足は速くならない。


でも、一生そのままかというとそれも違う。


ここで出てくるのがレベルだ。


そう、レベルなんだ。上げると能力値が増加したり新しいスキルを覚えたりするあれ。


でも、よく考えてみるとおかしいよね。


本当なら能力値が上がったから指標であるレベルが上がるのであって、レベルが上がるから大本の能力値が上がるわけでもないのにゲームとかだと逆転するのは。


ともかく、僕らの視点だとこの世界はそういうゲームみたいに倒錯した世界の一つでレベルが上がったら能力値が上がったりする。


ただ、この世界にもレベルを上げる前にやらなければいけないことがあるわけだ。













「頼むよシスター。僕は強くなりたいんだ。だめ‽」


ここで計算された角度で上目づかい。

ついでに両手の指を組んで耳を伏せ目に涙を少し浮かべて潤いを加えることで保護欲を刺激させる作戦だ。

この時期にしか使えないが我ながら完璧な媚び方だな。


「そんな目は効きません。その手法を教えたのはいったい誰なのか思い出しなさい。あと上目づかいの角度が甘いですよ」


うん通じるとは思ってなかったけどダメ出しまでされるとも思ってなかった。


この評価が厳しいローブをまとった黒髪美人はいろんな意味で神殿一の実力を持つシスターだ。


いつもならここであきらめるところだが、この『お願い』が通るかは俺の生存確率を大幅に変える行為だから今回だけは簡単にあきらめるわけにはいかない。


理由は一つ。今の俺は9歳で、10の年の道選びの儀が明日に迫っているからだ。


道選びの儀というのは自分が将来進む道を決める儀式で、その年に10歳になるすべての子供が受けるもので、簡単に、もしくはゲーム風に言うとメインジョブとかメインクラスってやつを選択する。

この世界でも通称はメインクラスだったはず。職業ジョブは本来の意味通り飯の種をあらわす言葉だ。


さてこのメインクラス、一生変更ができないうえにそもそもこれにつかなければレベルが上がらないという仕様つき。


記憶が道選びの儀より前に復活して本当に良かったと思ったことの一つだ。


さて、この世界はいわゆるメインクラスが一つでサブクラスが二つ同時に所得できる。


幸いなことに目指しているサブクラスの二つはそんなに着くことが難しくない。


一つはギャンブルに勝つことで着くことができる賭け事師ギャンブラー

これは今朝に頼み込んでシーアとじゃんけんをしてきた。

8回目でようやく勝てたからこれから7日分の間晩御飯が少し減るけどジョブ前提はクリアしたから着くことができる。


二つ目は祈るプレイヤーという信じる神様ごとに特性が違うジョブなのだが、こっちは意識が芽生えてから朝から晩までやっていることだから問題はない。


ちなみに選択した理由はこの二つのクラスはどちらも両方ともクラスレベルに比例した幸運上昇スキルが含まれていることだ。


当然だがこれであとは成人の式を待つだけなのかというとそうではない。


5つあるメインジョブはそれぞれ5柱の神様がそれぞれ一つずつ受け持っているのだが、自分が信仰している神様が受け持っていないジョブに着こうとすると特定の能力値制限を乗り越えなければならない。


俺が着きたい戦士ファイターをつかさどるのは赤の神様で必要になるのは力の能力値だ。

そして、もちろんのこと最低の身体能力しか持たない俺では力は足りていない。


「だから、このままでは戦士ファイターになれないのでシスターに協力してほしいのです」

「あなたに戦士ファイターは合いません。それに芸人アーティストも悪いものではないですよ」


正しい『お願い』の仕方を教えてくれるかのようににっこりと妖艶に笑うシスターには悪いがこれは前世からの決定事項だ。

別に芸人アーティストもジョブ自体は弱くはないのはわかっている。

レベルが上がることによる能力値の上昇は魅力に補正がかかるし、最初から黒の神の祝福を持っている俺に相性もいい。


最大の問題は魔物に対して魅了って効かないだろうなあってことだ。

魔物に向かってうっふんあっはんしても素知らぬ顔で襲い掛かられるのがオチだろう。


サブで歌いシンガーや魔物使い《テイマー》あたりとればそれでもいいのだろうが、それではわざわざ操作した生まれの種族特性が無駄になる。

見切りをつけることも重要だというのはわかってはいるのだが、効率が悪いとか聞くと胃袋がシクシク痛むのは前世から続く不治の持病だ。


「それはわかっています。それでも、それでも戦士になりたいのです」


芸人アーティストになりたくないにしても黄の神の職人クラフトとか青の神の学者スカラー、白の神の僧侶モンクの方がまだましだわ。それらなら制限をクリアしているものもあるだろうし、クリアしてなくてもあなたの言う協力はしてあげる。なぜわざわざ戦いや力仕事にしか能のない戦士ファイターになんかなりたがるの‽」


「理由は言えませんがそこをどうかお願いします」


魔王が復活するからなんて言ったら頭が正常か疑われてしまう。

良くて妄想として一蹴だろう。


だからただ頭を深々と下げて頼む。

シスターの提示した選択肢はすべて前世で一度考えたことだ。


実のところ最初の計画上のやりたいことは種族、信仰、サブクラスだけで完成する。


ただ、それをやった弊害としてたとえ魔法が使えたとしても戦闘に耐えうるような能力値ではなく、サポートに徹しようにもサブクラスが固定されて補正できないのは致命的なこと。

直接に戦わないという選択肢は早めに他の勇者たちと合流できなかった時に詰む可能性があり、間接的に世界を滅ぼす行為として罪悪感がすごく大きい。

というか罪悪感を感じる暇があるかどうかも疑わしい。


俺は魔王が襲ってくるのに何もできずにおびえながら過ごすのはごめんだ。


つまり、本来無理である唯一単独で戦闘力をある程度確保できる戦士にちょっとした裏技を使って着かなければならないのだ。

ちなみに俺様天才という言葉はこの裏技に気が付いたときの言葉である。


だが、そのためにはうちの神殿一の実力者である目の前のシスターの協力が不可欠であり、彼女の頭を頷かせなければならない。


頭を下げたまま何分経っただろうか。

時間の感覚がなくなっているからもしかしたら10秒もたっていないかもしれない。

俺が沈黙に耐えきれなくなりそうになったそんなときにシスターのため息が沈黙を破った。


「ふう、仕方がありませんね。どうやら遊び半分ではなく真面目なお願いようです。何があなたをそんなに意固地にしているのかは知りませんがいいでしょう。戦士ファイターになるのを協力してあげます」


「ありがとうシスター!!」


「笑うときはさりげなく歯を見せるように微笑みなさい。ですが、私の意見は変わりません。あと一晩ありますから考え直す時は私に言いなさい」


そう言ってシスターは背を向けて歩き出す。


それを見送っているうちに急に力の抜けた足に逆らわずに地面に座り込む。

解放されてようやく分かったがどうやら気が付いていなかっただけで結構緊張していたようだ。


とにかくこれでシスターの協力も得られたし、俺のかねてからの望み通り戦士のメインジョブに着くことができるだろう。

逆にシスターでさえ無理ならそもそも裏技自体が無理だったということであきらめもつく。


うん、これで最初の関門は突破ってところかな。


あとルビの意味が合ってないのは語感重視なので仕様です。

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