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猫耳少女の素敵異世界勇者録  作者: apricoap
黒の勇者が旅立つまで
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現状確認とちょっとした絶望

どうぞよろしくお願いします。

突然だけど一つ皆に聞きたいことがある。

なんで急にこんなことを言い出したのか怪訝に思うかもしれないけどとりあえず聞いてほしい。

どんなゲームでもいいけど成長計画を立ててからキャラクターとか配下とかのレベルを上げたりしていないだろうか?

計画の密度や方向性に差はあるだろうけどほぼすべての人間が『はい』と答えることだろうと思う。


えっ?自分はそんなことはしてないって?

このキャラがこのレベルになったらこの武器を装備させよう。このスキルとあのスキルの相性がよさそうだから一緒に取ろう。


この程度だったらゲームをしているときに自然に考えているんじゃないかな?


それが慣れてくると今度はこう考えるようになる。


こっちのスキルよりそっちの方が効率がいい。今はこうすると弱いけど最終的にはこっちの方が強い。


そう、『効率』や『最終的』という言葉だ。


こうなったらもうすぐキャラクターの成長の最初から最後まで計画するようになる。


だって、そっちの方が『効率』が良く、『最終的』に強くなるからだ。


自由度が高ければ高いほどこの二つの要素が重要になるといっても過言ではない。


ただそれはゲームの中だからできること。


リセットできない人生で同じことをやろうとする人は少ないんじゃないかな。

特にゲームとかでよくある魔物が出てくるような命が軽い世界だと特にね。

いわゆる完成を見る前に死んでしまっては元も子もないからね。


そこで話は最初に戻る。

なんでみんなにこんな質問をしたのかってところだ。


一言でいうと僕が『魔物の出てくる命の軽い世界』の『リセットできない人生』で『最終的』に強くなる『効率』のいい計画を立てた大馬鹿野郎に他ならないからだ。


うん‽最終的に強くなれるならいいんじゃないかって‽

最後まで生き残れたらたしかにね。生き残れたらね。


ああ、うん。次の質問はわかるよ?

なんでこんなバカなことをしたのかだね。それは……










「ミスったミスったミスった。『5つの国の5人の勇者が力を合わせて魔王を倒す。君も自分の分身を作って勇者になろう』とかゲームだと思うだろふつう」

時は夜。二段ベッドの上でゴロゴロと寝返りを打っている長めの黒髪を持つネコミミ少女が一人。

それが俺のなれの果てことミーアである。


身体能力、魔法適正ともに最低レベルで信仰による選んだ神の祝福は魅力を上昇させるものという役立たず。


ルールをじっくり読んである程度レベルが上がると武器とかの選択肢を駆使することで自分一人でも最低限の戦力を担えることを確認してからやりたいことのために大器晩成型を作ったわけだ。


だが、大器晩成型が喜ばれるのはゲームの中だけで、基本的には自分のレベルを上げるための即戦力が求められる現実において実力不足は致命的。


でも、修正しようにも一つの目的のために生まれた時の種族や性別、所属国家、信じる神様とかをデザインしたために今から修正すると逆に弱すぎて詰みかねない。


これから成長するキャラクターはパーティープレイの基本にそぐわないようなネタキャラだったのだがそちらはあまり後悔していない。


一発芸キャラを作って楽しむのは人それぞれの権利だ。それで驚いてくれれば俺も満足してそれ以上は言うことなし。

そもそもパーティーを組んで戦うのに役割の相談もなしとかは無理だし、そういう時は役割を二つ以上兼ねられるように作っておくか、レベルを上げたときに何かの役割に寄せられるように作成するのがセオリーである。


たとえば自己回復できる戦士あたりが鉄板。


そして、そんなふうにみんなが穴を埋めてくれれば俺が自由にやれるというわけだ。


……ごめん嘘ついたやっぱりすごい後悔してる。


幸運特化型じゃ。うはうはじゃあ。とか言っていた前世の自分の首を絞めてやりたい。


何だよレアドロップ特化で必要最低限の戦闘力も稼げた俺様天才って。

これでみんな驚いてくれること間違いなし。ドヤ顔し放題だとか鏡に向かってやってろ。

テンプレは強いからテンプレなんだよ。金の力でキャラクターが強くなるのはもともと一定の強さがあるからだ。ナンバーワンよりオンリーワンが許されるのはゲームの中だけだ。


ああそういえばゲームだと思ってたね。


ここまで考えたところでがっくりとうなだれる。

あまりにも勢いよくうなだれたせいかベットがガタンと鳴った。


「ミーアどうしたの急に。まだ頭痛いの‽」

「ううん。シーアちょっと落ち込んでいただけだよ」

二段ベッドの下からの声に答える。


名前が似ているが姉妹ではない。どちらかというと同期という言葉がふさわしい。

この黒の神の神殿に拾われたのはほぼ同じ時期らしいから同期だ。


そう、ここは神殿だ。正確には神殿付孤児院だが。


これでも幼いころには父と母に神殿の前に捨てられたんだと幼心に理解していたのだが、高熱と引き換えに前世の記憶を思い出してからはどうやら違うらしいことはわかっている。


いろいろ理由はあるけど最大かつ決定的な理由が一つある。


それは神の力でも借りなければこんな子供が生まれるのは両親の種族的にありえないからだ。


それも特定の神の力を借りなければならない。だからこそ俺はこの黒の神を奉じる国をスタート地点に選んだのだから。


「そう、苦しかったらまた言って。ミーアは病み上がりなんだから無理しちゃだめよ」

「うん。起こしてごめん」

「気にしないで。じゃ、おやすみ」


もう一度だけ寝返りを打って気持ちを切り替える。


過ぎたことを悩んでも仕方がない。それよりは未来のことを考えよう。

前世の俺に向かって恨みごとを言うよりはそっちのほうが建設的だ。


最終的に目指すべきことは魔王を倒すこと。

これが提示された目的だし、対策のとれる立場の人ができることをしないのは間違っている。


ぱっと思いつくそのための手段としては他の勇者たちとの合流や魔王が襲ってくるに備えることとかだろうか。

まあでもそんな遠い目標よりはやるべき重要なことがある。


とりあえず最初の目標は女性の最大の就職先が娼婦とか遊女である黒の神殿からどうやって旅立ちの権利をもぎ取るかだ。


需要があったらここは用語説明になります

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