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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
8/22

  私はただ今、人気の少ない中庭に呼び出されております。

 はい、そうです。要注意人物相葉みやびさんからのご指名です。

  あの公開告白からまだ数時間しか経ってません。凄い早業です。さすが要注意人物。

 ですから、私の方は彼女の基本データがほとんどありません。

  翔子ちゃんから仕入れた、経済学部一年のなかなか気の強いお嬢さんで、松本君を狙うと宣言したあと並み居るライバルを蹴散らしている最中という情報のみ。


 おそらくこれはあのイベントの始まりですよね。

 イケメンに告られる(付き合う)と必ずといっていいほど起きると言う… 

 こんなことで私の貴重な時間をとられるなんて。ああ、だんだん腹が立ってきた。



 ちなみに相葉さんは私の事をジロジロ見てます。

  私も彼女の観察でもするか。

  え~っと、なかなかの美人さんです。メイクもまあ上手。自分の欠点をうまくカバーしてます。少しエラが張ってるのをヘアスタイルで目立たなくしているし、カラーリングもいい色合い。花柄の可愛いブラウス。レースをあしらった短めのスカートからスラリとした足が延びてます。きっとスタイルに自信があるんでしょう。でもちょっと、表情きついです。私の事見下した目で見ています。まあ、これはしょうがないですかね。


  総合しますと私の評価は50点てところです。えっ、厳しすぎるって? 

 彼氏様のため、数々の精進努力を重ねていた私からみると、まだまだって感じですよ。

 それにあっちの方が、もっと酷い点数つけてると思いますよ。だって“勝った”て顔してるもの。


 まっ、そりゃそうだ。今の私の格好は完全実用主義。オシャレポイントはとても低い。だけどセンターへ行ってお魚の世話をするのに、ヒラヒラスカートはいて、長い爪にマニキュアってわけにはいかないものね。



 さて、こうゆう場面で言われる事は大体想像できる。

  だって、彼氏様と付き合いだした頃、知ってる人や全然知らない人から、散々言われたもの。

  面と向かって言われるのはまだましで、陰で酷い悪口を言われてたり、ありもしない噂を立てられたりした。

  落ち込む私を慰めてくれる人もいたけど、その人の中にも裏で私の陰口を言ってる人がいたりして、軽く人間不信になった。


 あの頃は辛かったし悔しかったなぁ。

 それに、平凡だとか不釣合いとか言われても、言い返すことが出来なかったしね。自分でもそう思ってたから。だから一念発起して自分磨きを始めたんだよね。

  ああいけない。軽くトリップしてた。とりあえず、聞き流すのが一番かなぁ。



 相葉みやびさんの話は私の予想通りに進んでいった。

 開口一番、女捨ててるってなんですか。そりゃ、ほとんどすっぴんのうえパーカーにジーパン姿ですけどね。それと私が彼より3歳年上だということも、攻撃対象になってる。18歳のお嬢さんには23歳の私はそうとうなおばさんに見えるらしい。失礼なヤツだ!


 それにしても、早く終わってくんないかな。センターに行く前にレポート仕上げたかったのに、これじゃ無理かも。

 ああ、やっと松本君に近づくなって話になった。でも、こっちから近寄った事は一度も無いんですがね。そろそろ終わりかな…… って、まだ続けるんですか。

 また私がダサイって話に戻るんですか。結構ねちっこいんですね。温厚な私でもさすがにムカつきます。ここはちょっと反撃させてもらいます!



「相葉さんでしたっけ。あなたの言いたい事はよく分かりました。でもあなた。ちょっと勘違いしているんじゃないの」

 それまで何も言わなかった私がいきなり反論したので、驚いた相葉さんはマシンガントークが止まった。


「私が松本君に相応しくないというけど、それはあなたが決めることじゃないでしょ。ましてわざわざこんな風に私に言いに来るなんて。あなた何様のつもり?」

 相葉さんが松本君と付き合っていて私が横恋慕したんなら、抗議されても仕方ない。だけど今回の場合、相葉さんはライバルになりそうな人に嫌味を言って諦めさせようとしているだけだ。道理もへったくれもありゃしない。


「こんなことしても、あなたには何の得にもならないわよ。むしろあなたの評判が下がってしまうだけ。そんな事も分からないの?」

 あ、なんか松本君から受けたストレスせいか、私の口調や言動が怖いお姉さま仕様になってる。まあこれくらい、いいよね。


「そんなに松本君の事が好きなら、松本君に告白すればいいじゃない。直接本人に言わなきゃ何時まで経っても伝わらないわよ」

 相葉さんは、私に言い返すことが出来ず、顔真っ赤にして睨んでるだけだ。


 


 これでイベントは終了。私も言いたい事言えたし、ストレスの発散にもなった。意気揚々と中庭を歩く私を呼び止める声がした。


「佐藤さん。なかなかいいことを言うね」

 なんとそこには二宮先生がいらした。もしかして、あのイベント見てたんですか?

「本当にそうだよね。自分の思っていること、ちゃんと言葉にして相手に言わなきゃ伝わらない。特に恋愛に関してはね」

 うわっ!二宮先生から恋愛なんて言葉が出るなんて意外!

「好きとか嫌いとかって、相手に向かってなかなか言えないよね。でもちゃんと言わないとね。大切なことだもの」


 そうですね。でも何故そんな話を私にするんですか?





 ちなみにあれからすぐ、相葉さんは松本君に告白をしたがうまくいかなかったようだ。しかし、さすが要注意人物相葉みやび。松本君のプチストーカーとなりおおいに松本君を困らせているとのことだ。

 愉快、愉快と笑いながら翔子ちゃんが報告してくれたのは、このイベントから数週間後の事である。

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