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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
7/22

「モテる女は大変ですねぇ。結花先輩」

  クスクス笑いながら私に話しかけたのは、同じ研究室の後輩で、マスコット的存在の櫻井翔子ちゃんだ。

「さっきの見てた?」

「はい。ばっちりと」

  翔子ちゃんはその可愛い顔をニマニマさせている。

「あの後ちょっとした騒ぎになりましたよ。公衆の面前で、それも大声で告白されたのに、振り向きもせずに出て行ったから。プププ」

  あっ、翔子ちゃん面白がってるね。

「あの俺様の松本が告白して振られるなんて、なんて楽しい展開。いやー、爽快、爽快 ククク 」

  翔子ちゃん、いい加減そのかみ殺した笑いを止めてくれ。というか、なんでそうなる。松本君と何か あったのか?

「あいつとは、いろいろ因縁があるんですよ」

  なぜか翔子ちゃんの可愛い顔が黒く見える… 




  なんでも翔子ちゃんが中学三年の時、松本君と部活が一緒だったとか 。

  吹奏楽部だったそうだが、松本君はドラムをやりたいと入部してきた。

  一年生のくせにことあるごとにドラム・ドラムとうるさく。コンクールの自由曲に何故ドラムの入ってない曲を選ぶのかって文句をつけた。

 私はよく分からないが、コンクールで演奏する曲にドラムはありえないらしい。

 当時、パーカッションのパートリーダーをしていた翔子ちゃんは、彼のせいで余計なトラブルに巻き込まれ散々な目にあった。


 そして、高校三年生の時も松本君とやりあった。

 風紀委員長をやってた翔子ちゃん。入学してきた松本君はこれまた新入生のくせに、学校の風紀を随分乱したそうだ。

「あいつ顔がいいし口もうまいから、いつの間にか多くの女子を味方につけちゃって、私の方が悪者になってたんですよ。おまけにこんな校則、今時ありえないとか言っちゃって。学校中巻き込んで、改変するしないの大変な騒ぎを起こしたんですよ」

 なるほど、それは、まあ、大変だったね… 

「あんなヤツの何処がいいのか。みんなみんな、あいつの肩持っちゃって。先生まであいつの味方って、どうゆうことよ!」

 なんだか、いつもの翔子ちゃんじゃない。どうしよう、これは見なかった事にして、この場を立ち去った方がいいかも。


「あっ、佐藤、櫻井。いいところにいた。二宮先生が明日の実験の準備手伝って欲しいって。すぐに第一共通実験室に行ってくれ」

「「は~い」」あっ、翔子ちゃんが通常モードに戻った。




「結花先輩。二宮先生って素敵ですよね」

 共通実験室に行く廊下で、いきなり翔子ちゃんが切り出した。

「そうだね」

「松本なんかより、二宮先生の方が断然いい男ですよ。ああ、彼女いるのかな?知りませんか、先輩」


「さあ、知らないなぁ」

「同じK大出身なのに知らないんですかぁ。ほら、噂とか本人から聞いたことがあるとか」

 二宮先生とはあの二宮先生のことだ。私が“浮気性な女を演じる作戦”でダシに使った、K大海洋生物学講師の二宮和臣先生。今年、準教授としてここに赴任してきたのだ。

 凄い偶然。


「先生のプライベートの事なんて余程親しくないと聞けないよ。それに、二宮先生って研究一筋って感じで、そんな話冗談でも言えない雰囲気だったし」

「そこが良いんじゃないですか。研究一筋の学者肌。海洋生物にかけるあの情熱。私、本気でアタックしてみようかな」

 えっ、翔子ちゃん本気? 結構年の差あるんじゃないかな。まっ、今時そんなの障害にならないか。

「先輩も彼氏は誠実な人がいいですよ。あの松本なんて論外です!我が儘で、俺様で。あんなの彼氏にしたら、絶対泣く目にあいます」

 ああ、なるほど、そうゆうこと。翔子ちゃんが延々と松本君との因縁話をしてくれたのは、松本君の外見に惑わされて被害に遭わないように教えてくれたんだ。

 ありがとう、翔子ちゃん。でも、大丈夫!イケメンには懲りてるから。

「ハハ、心配してくれるの翔子ちゃん。大丈夫、今私は修論と就職の事で頭がいっぱい。恋愛まで手がまわらないわ」

「先輩にその気が無くても、松本がその気になったら、何やらかすか分からないから心配なんです。それに、あいつの事狙っている女子ケッコーいるんですよ。特に相葉みやびって子が要注意人物です。気を付けて下さいね」


 気を付けろと言われても。

 私、相葉みやびって子のこと、全然知らないんですけど……

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 吹奏楽のコンクールでドラムの曲はありえないと書きましたが、これは作者が学生だった随分前の話で、現在はどうか知りません。

 違ってたらごめんなさい。

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