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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
6/22

おはようございます。佐藤結花です。

私の学生生活は、早朝から始まります。朝起きて身支度して、七時頃には研究センターに出勤です。


海洋生物資源学科というのは、まあ簡単にいうと海や河川、湖に住む生物(魚とか海草・微生物など)をいかに効率よく人間に役立てるかっていう研究で、この研究センターでは、食用の魚を大量に美味しく養殖する技術を開発してるんです。

イルカの飼育を目指す私が、食用の魚の研究の手伝い… なんかちょっとね、って感じだけどそこは深く考えないようにしています。


センターで朝の雑務やデータ収集を済ませてから、大学に行って今度は自分の研究です。

特別な事がない限り、五時くらいまで勉強して、それからまたセンターへ行って二時間くらいお仕事。

家に帰って食事してお風呂に入ってってしてたら、次の日早いからもう寝なきゃ。という感じで、物凄く規則正しい生活をしています。

今、私とても忙しい学生生活を送っています。 勉強と仕事の両立。想像してたけどこんなに大変だとは。

えっ。土日があるだろ…ってありません。

相手はお魚、生き物です。毎日お世話しないといけないんです。データも毎日とらないとね。


 雨の日も風の日も雪の日も、毎日センターへ出勤です。

 “学費免除” つまり学費分稼がなくてはならないわけで、人使いがハンパないです。

 でも、おかげでホームシックになることもなく、彼氏様の事もあまり思い出さず、楽しく過ごしています。私、ここに来て良かった。本当にそう思います。


 まあ、困った事の一つや二つはありますけどね。あっ。そんな事思ったら、今、最大の困りごとがやって来ました。

「佐藤先輩。ここにいたんですか。捜しましたよ♪」

 一息つこうとカフェコーナーで缶コーヒーを飲んでいたら、満面の笑顔で奴が来た。

 奴の名は松本瞬。経済学部の二年生。軽くウェーブのかかった茶髪にピアス。なぜか小指にシルバーのリング。チャラそうな外見どおり性格もチャラい。そして少々俺様。


 去年の学祭の時、何故か突然告白された。

 海洋資源学部名物の海鮮鍋(お魚と野菜たっぷりの味噌仕立てのお汁)を必死になって売る姿が可愛かったからとか言ってたが、微妙な気分だった。だって、あの時は研究センターで育てたお魚も販売してたので、魚屋さんの格好をしていたのだ。

 ねじりハチマキに軍手、ゴムの前掛けに黒長靴。それのどこが可愛いと? からかわれていると判断した私はソッコー断った。しかし奴は諦めず再三再四、告ってきた。面倒になった私は「一緒にお酒も飲めない未成年に興味はない」と切って捨てたのだ。 

 しかし奴はそれでも諦めずに私の周りをウロチョロする。正直、迷惑。



 私の近寄んなオーラをものともせず、奴は私の向かいの席に座った。

「先輩、俺、今度の日曜日誕生日なんですよ」

「へえ、そう。それはおめでとう。しかし私は苦学生。プレゼントを買う余裕は無いし、御祝いパーティーには行かないわよ」

「やだなぁ。パーティーなんてやりませんよ。それより、俺これで二十歳になるんです」

「まあ、年をごまかしてなければ、そうなるわね」

 私は奴の方を見もせず、コーヒーをズズッと飲んだ。

「これで先輩と一緒に酒が飲めます。だから、もう俺達の間に障害は無くなったんですよ」

 

 こいつ、いきなりなに言ってんの?

 ああ、そうか。こいつを振る時に言った口実を真に受けてんのか。

「だから日曜、デートしましょう」

「い・や・だ」

 


 私は飲みかけの缶コーヒーを持って立ち上がった。

「私は年下に興味がないってつもりで言ったのよ。それくらい察しなさいよ!それじゃあね」

スタスタと歩き出した私に向かって奴は大声で叫んだ。

「俺、佐藤先輩の事大好きなんですー! 絶対、諦めませんからーー!!」


 やめてぇ。なんつう恥ずかしい事を。

 カフェコーナーにいた他の学生さん達に聞こえたじゃないか。

 私は早足でその場を離れた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 なかなか彼氏様が出てきませんね。実はまだ暫く出番がありません。ヒーローのはずなのに影の薄い彼氏様のこと忘れないでいてあげて下さい。

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