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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
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 怒涛の一日をおくり、心身の疲労は最高潮だったけど、一晩グッスリ眠ったら、スッキリ爽やかに目覚めることができました。

 この非常に寝心地のいいベッドのおかげかな。さすが一流ホテルのスイートルームだよね。今、食べてるルームサービスもとっても美味しい。こんな贅沢、きっともう出来ないだろうから充分に味わっておこう。うわっ、このフルーツうま! 全部食べきれないや。持って帰っちゃダメかな。テイクアウト用のパック… なんてありませんよね。


  朝食を堪能した後、フカフカのソファーで紅茶を飲んでると、彼氏様がピッタリと体を引っ付けるようにして、隣に座りました。なんだか恋人になりたての、ラブラブモードって感じです。彼氏様の肩に凭れかかっているだけで、幸せっていうか。もう私中心で世界が回ってる気分。…すみません調子に乗りすぎですね私、反省します。


 そうだ、結局昨日のパーティーはなんだったのか。何故わざわざあの場所に行かなきゃいけなかったのか、聞いてないや。今更だが教えてもらお う。



   なんでも、昨日のパーティーは西園寺本家先代当主の、喜寿を祝う会だったそうで、親族が一堂に会する場だったそうです。

  本家とか当主とか、普段使わないようなワードが出てきました。さすがです、西園寺一族。古くから続く名門だものね。

「せっかくだから僕の婚約者として、ユカを紹介したくてね。いきなり思いついたから、時間に余裕がなくて、少し無理をさせてしまったね。それに準備も不十分だったし… 」

 いえいえいえ、あの短時間でスイートルームをリザーブし、いろんなスタッフさんや着物一式そろえるなんて、凄いです。おまけに婚約指輪まで。どんだけ出来る男なんですか!


 フムフムつまりあの二時間で私は、御両親と華麗なる一族様への挨拶を、終えたって事ですね。婚約者として紹介するために、あの凄い格好をしなきゃいけなかったのか。納得しました。

  今思うと、最初に説明されなくてよかったです。もし聞いてたら、物凄く緊張して、とんでもないドジをやらかした気がします。


「昨日はなにもかもいきなりで驚いたけど、そうゆうことだったのね。私正式なパーティーを初めて体験したけど、素晴らしかった。どこかの国の王様のパーティーみたいだったし。一生の思い出にするね」

「一生の思い出って、大袈裟だねユカ」

 彼氏様は楽しそうに笑った。

 いえいえ大袈裟じゃないですよ。あんなことは一生に一回で十分です、マジで。

「今度は僕達の結婚式があるじゃないか。昨日よりもっと素晴らしいものにしよう。ユカの望みどおりにするよ。費用はどれだけかかっても、構わないから」

  何言ってるんですか、彼氏様。お金は大切にしなきゃダメでしょ。以前のようなセレブ気分でいたら、破産しちゃいますよ。


  それにしても、会社が倒産して無職になったこと、いつ言ってくれるのかなぁ。

  私、言ったよね。こんなことじゃ別れないって。まだ信用して貰えないんでしょうか。なんだか悲しくなってきました。


  私は黙ったまま、少しうつむいた。

「どうしたのユカ。何か気に障ること言った?」

   言ったんじゃなくて、言ってくれないんじゃない。

「もしかしてこの指輪、気に入らなかった? 紹介するのに指輪がないと、格好がつかないと思って、勝手に選んだからなぁ」

 なに頓珍漢なこと言ってるんですか、彼氏様。

「そうだ今から宝石商に来てもらうよ。今度はユカが気に入った指輪を買ってあげる」

  ちょっと待って。なんでそうなる。私は慌てて首を横に振った。

「違う、気に入ってるよこの指輪、可愛いしとっても素敵。本当だから」

「じゃあ何が気に入らないのか、僕に教えて」


 困りました。父親の会社が倒産・買収されて無職になるんだから、今までのようなお金の使い方をしちゃダメよ。なんて言えませんよ。

  男のプライドを傷つけちゃいけませんしね。

  ココはやっぱり、私は知らんフリをして、彼氏様から打ち明けて貰ったほうが、いいと思うのです。どうたら言って貰えるんでしょうか… 


「ユカ、僕たち結婚するんだよ。確かに何もかも、全て話す必要はないけど…  気に入らないことや、気をつけてほしいことがあったら、きちんと話し合わないといけないと思うんだ」

 気に入らないのは、彼氏様が隠し事をしているからじゃないですか。だけどそれを、どうやって聞き出せばいいのか分からないんです。

「僕には話せないことなの?」

 話すんじゃなくて、話してほしいんですってば。

「もしかして、何か言えない秘密でもあるの?」

  もーっ! だから隠しているのはそっちじゃない。   


「私秘密にしてることなんてないよ。それより貴文さんこそ、何か私に言うことはないの?」

 これが私から言える精一杯です。もう、早く言っちゃってください。

「……特にはないけど」

「あるでしょ。ほら、今のうちに言った方がいいこと」

 彼氏様、一生懸命考えてる振りしなくていいです。ここは思い切ってスパッと言っちゃってください。

「…やはり、思いつかないけど」

「貴文さん。私、何を聞いても大丈夫だから、安心して言ってください」

「ユカが僕に何を言わせたいのか、見当もつかないよ。そんな曖昧な聞き方をせずに、はっきり言ったらいいだろう」


 彼氏様、ちょっと口調が荒くなってきました。もしかして怒っているのかな。でも私だって苛立っています。イライラの絶頂です。

「だからお父様が事業に失敗して、会社がなくなったんでしょ!」

  あっ、言っちゃった。彼氏様、めっちゃビックリしてる。

でも昨日マンションで話し合ったじゃない。ちゃんと言わなかったけど“私は知ってるよ、そんなの苦労じゃないよ” って、伝えたつもりだったんだけど。


「何、それ? ユカ、何を言っているの?」

「お父様の経営している会社が、買収されてしまうんでしょ。そうなったら、貴文さん仕事続けられないんじゃないの? だから結婚式は、次の就職先が決まってからでいいの。なんなら籍だけ入れて式はあげなくてもいいから」

「…… 」



  無言が痛いです。 彼氏様、怪訝そうな顔してます。やっぱり私から、言うべきじゃなかったかな。でもも出ちゃった言葉は取り消せないしなぁ。

   

  さあ、どうでる、彼氏様。



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