表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
16/22

16

  彼氏様と再会し、お互いの気持ちを確かめた後、愛も確かめ合いました。

 今とても満ち足りた気分です。もうずっとこのまま、一緒に暮したいぐらいです。

「ユカ、目が覚めたの」

   うーんいいねぇ、彼氏様の優しい声で目覚めるのは。

「うん、今何時?」

「一時を過ぎたところ。シャワー浴びておいでよ。ちょっと遅いけど昼ご飯食べに行こう」

  はい、賛成です。パパッと行ってきます。




「これはいったいどういうことでしょう… 」

   確かお昼を食べに来た筈なのに、何故か一流ホテルのスイートルームにいます。

  ここで軽くルームサービスを食べた後、なんか、いろんな人が入れ代わり立ち代りやってきて、私を磨き上げていくんです。

   始めはエステの人がやってきて、全身くまなくマッサージそしてパック。次にネイル関係の人。カリスマ美容師? メークアップアーティスト? そして今何故か振袖を着付けられてます。


  理由を聞こうにも、彼氏様は『後は頼むね』みたいなこと言って、何処かに行ってしまうし。

 スタッフさんは無駄口を言わず、黙々と自分の仕事をこなしていって、話しかける雰囲気じゃなかったし。この状況がまったくもって、理解できません。


 どうやら終わったようです。全身が写る大きな鏡の前に連れてこられました。

 なんか別人がいます。これは私ではありません。

  私もおしゃれや美容の研究をして、自分をより美しく見せるテクニックを身につけましたが、やはりプロには敵いません。実力の差ってやつを見せ付けられた感じがします。ちょっと悔しい。


「ああ仕上がったようだね。こちらを向いて、僕に見せて」

 よかった、やっと彼氏様が戻ってきてくれた。実はすごく不安だったんだ、知らない人達に囲まれちゃってさ。

 彼氏様はゆっくり私の所まで歩いてきた。

「きれいだよユカ。こんな美しい人が僕の婚約者だなんて、僕は幸せ者だな」

  そんなに誉められると照れちゃいます。

  彼氏様は私の左手をとると、薬指に指輪をはめた。ちょっと大きめなピンクダイヤ。その周りを小粒のダイヤで縁取ってあって、とても豪華できれい。

 でも、これ高いんじゃないの? この部屋だって高そうだし。大丈夫なのかな、こんなことにお金を使っちゃって。


「貴文さん、これは…」

「婚約指輪だよ、気に入った?」

「ええ、とてもきれい。ありがとう貴文さん。でもこれ、たか… 「よかった、ユカが気に入ってくれるか、心配していたんだ。さあ急ごう、もう時間が無いんだ」 えっ、えっ、えっ」


  なんだか時間に追われているようです。だからあのスタッフさんたち、無言で化粧とか着付けをしてたんですね。なんか鬼気迫るものがあって、怖かったんですけど、これで納得です。

 じゃなくて、なんでこんな格好しなきゃいけないの? 何のために急いでるの? 今から何があるんですか! ちょっと説明する時間もないんですか。そんなに急ぐんなら、着物なんて着せなきゃいいのに。

  ふと気がつくと、彼氏様もきちんとした正装をしています。もしかして彼氏様の御両親に紹介されるのかな、なんて思ったんですけど、ここまでする必要ないですよね。

  そういえば、今の嬉しい気持ちをみんなに伝えたい、とか言ってたっけ。まさか、それを実行するんじゃないでしょうね。こう金屏風の前で二人並んで座って、婚約指輪をみせながら。“私たち結婚します。幸せです” なんてテレビ中継で日本全国に発信する…  そんなわけあるか!

  いくら彼氏様が大学のアイドルだったからって、芸能人じゃあるまいし。

  でもこの格好はもうそれしか思い浮かばない… 



 どうやら目的地は同じホテルにある大広間のようです。

 凝った細工の扉の前で軽く息を整えると、彼氏様は私に手を差し伸べた。

「さあ、行こうか」私が右手を乗せるとギュッと握り締めてくれた。

「大丈夫だよユカ。ユカは何も心配することはないからね。僕の隣で、笑っていてくれればいいから」


  そう言って微笑む彼氏様。

  何が大丈夫なのか、まったく分かってないのに、私はニッコリ笑って頷いた。つくづく流されやすいよね、私って。


   はたして、立派な扉の先に、いったい何があるのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ