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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
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「あ..れ、ユカ? どうしたの、いきなり来て。いつ帰ってきたの?」

 珍しいです、もう昼前なのにパジャマ姿の彼氏様。寝起きだからかな、心なしかヨレヨレって感じです。ちょっと痩せた気がするし、それにとても疲れている感じがします。

 ていうか、いたんですね。もしかしたら、会社に行ってるかもって思ったけど。いつまでも待つつもりで来たけど、よかったです。あっ、そうか。会社、無くなっちゃたんでした。


「あんなメールが突然きたら、ビックリするじゃない。その後、いくら電話しても通じないし、メールも返ってこないし。私すごく心配したんだよ」

「メール? ああスマホ電池切れだったんだ。ここ暫く会社に詰めてて、ほとんど寝てなくてね。昨日三日ぶりに家に帰ってきたんだけど、シャワーする以外もう何もする気になれなくて… 今まで寝てたんだ」

 三日間の徹夜。彼氏様、本当に大変だったんだ。

「とにかくあがって、外は寒かっただろう。今すぐ暖房を入れるから」

 相変わらず優しい彼氏様。エアコンのスイッチを入れ、身形を整えると、私の為に暖かいコーヒーを入れてくれた。



 あれ、なんか部屋の様子が以前と違うような… まっ、二年振りだしね。いや、これはちょっと変な感じ。

 そう思って、キョロキョロしてみて違和感の正体が分かった。部屋に置いてある物が、極端に少ないのだ。生活に必要な物しかない感じ… ってあれ、あんなとこに段ボール箱が。これってもしかして。

「貴文さん、もしかしてここ引っ越すの?」

「えっ、ああそうなんだ。ここ引き渡さなくてはいけなくなってね」

 それってあれですね、無職になったから贅沢はやめる! みたいな。


 現実なんだ。お父さんの会社がダメになって、今までのような生活が出来なくなっちゃったんだ。でも、だからって結婚まで考えてたのに、そんなことで破談にするなんて。水臭いと言うか、他人行儀っていうか、あっ、まだ他人か… 

 でも、恋人なんだし、ちゃんと説明してほしかった。私の意志を確認してほしかったよ。



「あの、貴文さん。婚約のことなんだけど」

「うん、そうだね。ユカとはきちんと、話しをしなきゃいけないと思ってたんだ。でもこの事を知ったのは、つい最近だったし、なかなか時間とれなかったし… それにこういう問題は会って話すべきだと思ったから、出来ないでいた」

「私こんな事で婚約を無かった事にするのは、嫌なの。むしろ、貴文さんの力になりたいと思っているのよ」

「でもユカ。苦労するのは目に見えてるよ」



 彼氏様、やっぱり私の為に、身を引こうとしてたんだ。

 彼氏様が無職だろうと、借金を抱えて貧乏生活になろうと平気。

 セレブな若奥様になるよりそっちのほうがいい。それに、若いうちの苦労は買ってでもしろっていうし、彼氏様がいてくれるだけで、私きっと頑張れるよ。


「そんなの苦労だとは思わない。貴文さんと別れるほうが、何倍も辛い。お願い一緒にいさせて。私、ずっと貴文さんのそばにいたいの」

 さっきまで半病人のようだった彼氏様の顔が、パアッと明るく輝いたような気がした。

「ユカ、それは僕と結婚してくれるということ? 僕の奥さんになってくれるの?」

「貴文さんこそ、本当に私でいいの?」

「ユがいいんだ。ユカじゃなければダメなんだよ。やった!!今、僕がどれだけ嬉しいか、大声でみんなに伝えたい気分」


 彼氏様は本当に、嬉しそうに笑った。

 私もとても嬉しい。なんて幸せな気分だろう。私も大声で叫びたいくらいだ。




 彼氏様が私の両肩に優しく手をかける。ゆっくりと頬や目蓋、そして唇にキスをした。

「それだけ?」私は上目使いで、ちょっと不満そうにする。

「好きだよユカ。世界中の誰よりも、ユカを愛してる」


 今度はギュッと抱きしめて、甘くて情熱的なキスを私にくれた。久し振りの彼氏様のキス、彼氏様の体温、彼氏様の匂い。私はキスに夢中になった。


 あれ、あれれ… ちょっとちょっと、彼氏様の手の動きがやばいよ。

 それまで服の上から触っていた彼氏様の手が、スルリと入ってきて、私の胸を優しく撫でてきた。

 これってまさか、今から突入ですか?

 まだ昼前ですよ。ここソファーだし、周りめちゃ明るいし。これじゃぁ、日頃サボってて、ちょっと体型があれなのばれるじゃん!

 そんなのイヤァー 


 彼氏様の両手を掴んでから、頭を左右に振る。

 首筋に埋めていた顔を上げて、彼氏様が悲しそうに私を見つめる。

「ごめん。嬉しくてつい… ユカとキスしたら止まらなくなった」

 えっと、拒否ったわけじゃないです。彼氏様と、その、するのはOKですけど、時と場所が問題なんです…


 なんてこと、恥ずかしくて言えません。

「ねえ、ダメ?」

 ああ、そんな顔して囁かれたら、私もう、流されちゃいます。

「あの、ここじゃ、嫌なの」

 多分、私、顔真っ赤。

 彼氏様、一瞬、呆気に取られ。、それからニコッと微笑むと、いいなり私を抱き上げて、ベッドへ連れて行ってくれました。


 その後は、えーと、二人でとっても仲良くしました。これ以上は言えません。


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