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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
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 グズグズ悩んだせいで、余裕のはずだった修論が締め切りギリギリになったけど、本日めでたく教授のOKをいただいたので、二年ぶりに実家に帰ろうと思う。

 就職が決まってないから、両親の(特に母親の)小言が怖いけど、ズルズル先延ばしにしたって、いつかは帰らなきゃいけないんだし、嫌な事は早く終わらせたいしね。

 それに彼氏様… うーん気が重い。でもいつまでも逃げてちゃだめだよね。



 大学に置いていた私物を片付ける。二年間あっというまだったな。

 式に出席する為またここに戻ってくるけど、その時にはもう私の机はなくなっている。

 あっ、やば、なんか涙でそう。


 ちょっと感傷的になった私は、構内をブラブラ歩いてみた。

 そういえば日々忙しくてH市の名所に行ってないなぁ。最後に観光地巡りでもしてみようかな。そうだ亜也子さんを誘ってみよう。そんなことを思いながら歩いていたら、ちょうど二宮先生を見かけた。

「二宮先生、いい所で会えま 「佐藤さん、いい所にいた。ちょっとこっちへ」 ……はい、なんでしょうか」


 二宮先生、私に用事があったみたい。何かな? 心なしかちょっと表情がかたい。もしかして修論に何か不備でも!? 

「実は佐藤さん、僕昨日まで出張でK大に行ってたんだけど、そこで変な噂を耳にしたんだ」

 K大で耳にした噂。はて、私に関係のある話ですかね。

「君と同期の西園寺君、確か佐藤さん彼と付き合ってると聞いた事があるんだけど、そうだよね」

「はいそうですが、彼がどうかしたんですか?」

 先生はなんか言いにくそうにしています。彼氏様に何かあったんですか。いいから早く教えてください。まさか、まさか事故とか…  

「僕はこういう事に疎いので詳しく分からないんだが、西園寺君の勤め先が大変らしいんだよ」

 彼氏様の父親が経営する会社ですね。彼氏様はそこに勤めていますから。そういえば会社がいろいろ大変で忙しいと聞いたけど、どう大変なんでしょう。


「何でも不渡りを出して倒産しそうなので、どこかの何とかって会社に吸収合併されるんだって聞いたんだ」

「えっ… 」



 なんですと。会社が倒産、吸収合併? 

「佐藤さん、何か聞いてる?」

 いいえ、何も聞いてません。青天の霹靂、寝耳に水。えーと、えーと。とにかく彼氏様一大事ってことですよね。


 ちょうどそこに、彼氏様からメールが届きました。

 急いで開くと、“事情が変わった。婚約ははくし” たったそれだけの文字が、送られてきました。これってつまり、先生の情報どおり、父親の会社が倒産して彼氏様は無職に。だから、結婚どころじゃなくなったってことですかね。




 それからの私は、全てが上の空で、気付けば自分のアパートの部屋にペタンと座っていました。

 これは願っても無い状況。彼氏様の方から婚約を白紙にしようと言ってきたのです。

 彼氏様から別れを切り出してもらうという、私の願いが叶ったわけですよ。


 このためにいろんな作戦を考え、実行してきたんです。

 はるばるH市まで来たのもそのためだし。

 でもね、だけどね、なんか全然嬉しくありません。こんな終わり方、望んでないです。

 金の切れ目が縁の切れ目、そんな薄情な女だと思われてたの? 苦しい時こそ、好きな人にそばにいて欲しいもんじゃないの? こんな事になって苦労をかけると思うけど、ついてきて欲しいって言ってくれないわけ!



 こんなの納得できません。


 次の日、朝一番の電車に乗って、彼氏様に会いに行くことにしました。


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