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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
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 冬の寒さが身にしみます。ちょっと前までは暑い暑いと言っていたのに、季節が巡るのはあっという間ですね。

 そして私佐藤結花は、寒さ以上に世間の厳しさが身にしみてます。

 就職が決まらないのです。単位はバッチリ。修論もメドがついた。三月には無事修士課程を修了できるでしょう。だけどその後の行く先が見つからないのだ。


 今回はそれこそ全国津々浦々捜しましたよ。でも、水族館の求人が無かったんです。…すみません、嘘言いました。何件かあったけどダメだったんです。そうです落ちちゃったんです。

 でもそのときは、まだ心に余裕がありました。夢はしょせん夢、叶わないものなのよ。気持ちを切り替えて次へいくわ!


 しかし、受けても受けても片っ端から落ちちゃうんです。

 どうしてなんでしょうか。院に二年も行って年を食っちゃったからですかね。それとも海洋生物なんて特殊な学科だからでしょうか。もしかして顔か?あまりに平凡すぎて存在感がないとか、第一印象がすでにダメなんだろうか。私の何がいけないんでしょ?面接官に是非聞いてみたいです。




 このところの日課は、就職相談室のパソコンを開いて求人票をチェックすることです。この時期になると条件の合うとこ残ってないです。

 大変困った状況です。このままだと就職浪人決定です。母親のお小言が聞こえてくるような気がします。お小言じゃ済まないかも、ううっ… こわい…



 さて落ち込んでいたって仕方ないですよね。

 今日はこれから亜也子さんのお家へ行くんです。二宮先生が長期出張でいないので、泊まりにおいでって誘われたんです。

 明日は日曜日、研究センターへ行くのは何時もよりゆっくりでいいし、女子トークで夜更かししちゃおうかな。亜也子さんにこの辛い現状を、いっぱい愚痴っちゃお。

 そうだ、就職のアドバイスなんかしてもらうのもいいかも。なんたって有能な秘書だったんだもの。企業が求める人材ってやつを、教えてもらおうかな… って、今更遅いですかね。なんでもうちょっと、早く気付かないんだ。私のおばか!



 


 亜也子さんと一緒に夕食を作る。

 亜也子さんは優秀な生徒で、家事のあれこれを教えてから半年くらいなのに、もう私よりはるかに上手です。さすがパーフェクト美女、亜也子さん。青は藍よりいでてってやつですね。


 ご飯を食べて、お風呂もすんで、リビングで女子会の始まりです。亜也子さんとのお喋りは、時間のたつのを忘れるくらい楽しいです。

 なんかいい感じにお酒に酔って、心がホワホワします。

 亜也子さんもちょっと酔っ払ってるみたい。今なら何を聞いても答えてくれるかなぁ。そう思ってプロポーズの時のことを訊ねました。


 だって気になるじゃん!あの二宮先生が何て言ったのか。それに新婚さんには王道の質問ですよね。

 思い切ってプロポーズしたって言ってたもの、ストレートに“結婚してください”って言ったのかな。それとも高級なレストランでいきなり婚約指輪とかプレゼントして“今度転勤することになった。一緒について来てくれないか”とかなんとか きゃあぁぁぁ 


 ワクワクしながら待ってるのに、亜也子さん何も言ってくれません。なんか微妙な顔してます。聞いてはいけなかったのかな。

「言ったというか、言わせたというか…」それってどうゆうコトでしょうか。


「じゃあ、亜也さんもくる?」

「へっ?」

「じゃあ亜也さんもくる…って言われたの」


 なんですかそれは。それってプロポーズですか?二宮先生、思い切って言った言葉ってこれですか。ムードもなんも、ないじゃないですか!

 亜也子さんは自分と私のコップにビールを注ぐと、変な空気になったのを吹き飛ばすように、笑顔で言いました。

「さあ、今度は結花ちゃんの恋愛話をしてもらうわよ」

 それはちょっと勘弁してください。今、話すととんでもないことを言いそうです。のらりくらりとかわしているうちに、亜也子さんは夢の国に旅立った。あーー助かった!




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