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この恋、終わらせます。  作者: 紫野 月
1/22

 私の彼氏様は極上の男です。


 ……ノロケではありません。本当のことです。

 いわゆる顔よし、頭よし、性格よし、おまけに家柄までいいという完全無欠のヒーローのようなお方です。

 私と彼氏様は同じ大学に通っているのですが、彼氏様は入学した時から注目の的で、学内で全然接点のなかった私にも、その噂話が聞こえてくる程の人気ぶりでした。


 さて、私こと佐藤結花は平凡としか表現できません。

 はい、謙遜ではないですよ。

 素晴らしいプロポーションを持っているわけでなく。ましてや、とびぬけた美人でもない。頭の出来も、まあそれなり。そして、ごく普通のサラリーマン家庭で育ちました。

 それにくらべて彼氏様はというと、西園寺貴文という、いかにもな名前ですし。実家は大変な資産家で、地元で有名な旧家。そして父親は大きな会社を経営しています。

 たしか親族には弁護士、官僚、代議士なんかもいたっけ。なんていうか、華麗なる一族ってかんじです。

 とにかく私と彼氏様とは なにもかもあまりに違いすぎているのです。とんでもない格差だと思います。自分で言うのもなんですが、なんで付き合うことになったのか不思議です。大学の七不思議に入れてもいいと思います。



 付き合いだしたのは一年の前期テストの後だったからもう三年になるのか… その間彼氏様は一度も浮気をせず、私の事を大切にしてくれてます。彼氏様のおかげで、私の大学生活はとても色鮮やかで、楽しく充実したものになりました。

 もちろん、私だって頑張ってますよ。アイドル的存在の彼氏様にふさわしくなる為に。

 付き合うまで は、化粧も服装もテキトーだったけど、今は美容とお洒落にお金をかけてるし研究に余念はありません。成績だって不可なんてありえないから、受験の時より何倍も勉強してる。

 素敵な女性になる為にあらゆる事に挑戦し、性格ブスにならないようにいろいろ自制し…と、私はこの数年で一生分の努力をしているんじゃないかと思う。

 そのかいあってか自分で言うのもなんだけど(でも、誰も言ってくれないし))完璧とはいかなくてもいいセンまでいってると思う。だって、キャンパスでは公認のカレカノだもの!まあ未だに多少の陰口や意地悪はあるけどね… 


さて、そういう訳でこの三年間、順調に彼氏様との愛を育んできたのだけど、去年の秋頃だろうか私はふと思ってしまったのだ。私はこの先何時まで頑張らなくてはいけないだろうかと。

 血と汗と涙が滲むような努力を重ね、死守してきた彼女の座。それを守り続けるためには少しも気が抜けない。 いいや、これからは今まで以上に気合を入れなければならないだろう。

 そう、大学を卒業し社会人となれば結婚という二文字が頭の中をよぎる。というか、彼氏様との会話の中でそれとなくほのめかされたりするのだ。                                                                                           

 彼氏様と結婚…

 いやいやいや。まてまてまて 。 

 それはちょっと無理カモ。


 結婚となると舅、姑をはじめ華麗なる親戚一同を相手に、いい嫁ってヤツを目指さなければならない。 正直出来る気がしない。

 この大学で一番のイケメンの彼女役を務めるのだって死に物狂いなのに。

 極上な彼氏様に好きでいてもらうため、私はいい女になろうといたる所にメッキを貼った。そのメッキは今のところ剥がれていない。でも、どんなに頑張ったってメッキは純金にはなれない。そして私は、メッキを貼る事に疲れてしまったのだ。


 付き合いだした頃は彼氏様にふさわしいいい女になるゾ! って感じだったけど、今はなんか全て投げ出したくなっている。

 化粧するの面倒。ヒラヒラスカートよりジャージにしたい。美顔マッサージも美容体操もサボリたい。そういやあんなに好きだったハンバーガー最近食べてない。誰の目も気にせず、大きな口あけてパクつきたいよ。最近、腹の底から笑った事あったかなぁ? 


 多分私は我慢の限界にきているのだ。

 やっぱり人間は身のタケにあった生活をするベキだよね。じゃないと、今にストレスで胃に穴を開けることになりそうだ。

 彼氏様とのキラキラした恋人期間は大学時代のいい思い出になるよう手を打つのだ。 

 私はこのハイレベルな恋愛から撤退する事にした。

 決心したのは悩み始めてから半年たった桜の舞い散る季節。そう、私と彼氏様は四年生。真剣に将来を考える時がきたからだ。



 私は本来の私に戻る!!  

 その為にも、この恋を終わらせます!! 

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