新メンバー1
テスト期間も終わった久しぶりのログインだ。1週間も空けてないはずなのに懐かしいと思えてしまうな。
と早速視界の端の方にメールの着信を知らせるアイコンが見える。誰だ?
メールはキアからだった。
内容はチームへの加入申請。2日前に届いていたようで1日放置してしまったな。
さて、どうしようか。
キアとはいざこざがあったからな、俺自身はもうわだかまりはないが他のみんなはどうだろうか?
あの出来事に関わった人達は自分も含めて誰にも話していないはずなのに何故かチームメンバー全員知っていた。謎だ。
そういったこともあった為、頭ごなしに反対されるとは思わないが難色を示す人が中にはいてもおかしくはない。
取りあえず、みんなに会わせて話をしてそれから決めよう。
キアにメールで返信をしておく、今日はまだログインしていないようなので会う約束のメールだけしておこう。
ギルドに到着。レストルームに集まっているのはレト、トイス、アンズ、リンドウの4人だった。
「おう、やっと来たか」
「こんちわっす」
「ししょー」
「どうも~」
「久しぶり、1週間も空けてすまなかった」
「リアルでテスト期間だったんだろ。事情は知ってる。しょうがない」
「それで早速だけど話が有ってね――」
「あーそのキアって子はあれだろ、以前にお前を騙したって言う武器士」
「そう、その子。一応罰は受けてそれは終わらしたみたいでね。改めてうちのチームに参加したいらしい」
「俺は別に良いけど。お前らはどうだ?」
「女の子っすよね、歓迎っす」
体育会系の思考を持つレトはそうなるだろうと予想はしてた。
トイスはフェミニスト(意訳)だからなぁ。
「私はどうしましょうか~。自分以外の生産職の人がチームに入ってくれるのは賛成ではあるのですが~」
難色を示してきたのはリンドウ。
やはり生産職は横のつながりが大事か。
「新しいお友達かぁ、会ってみたいな」
「私は賛成ですよ~」
・・・アンズ、リンドウも賛成っと。
「なあ、セン。ちょっといいか」
「ん?なにレト」
「その新人加入の件だがな。お前はどう思っているんだ?」
「どうって・・・。俺は入れても良いとは思っているけど」
「なら入れても良いだろ。ここのリーダーはお前なんだから一々メンバーにお伺いを立てる必要なんてないぞ」
そうなのかもしれないけど・・・。
「まあ、確かに今回は以前に問題行動起こしたプレイヤーってことだから確認したいってのは分かるけどな。だが一番の被害者だったお前が問題ないって判断しているんだったら他の誰も文句は言えないだろうが」
「・・・そうか、なら今回は独断だけど。キアを加入させることに決めるよ」
「おう、それでいい」
なんだかんだ言ってもレトはまとめ役に向いているんじゃないのかな。
「それでセンさん。そのキアって子・・・あそこに居る子っすか?」
「え?」
まだキアからメールの返信はないよな。誰だ?
トイスの視線の先に眼を向けるとそこにはレストルームの机に隠れるようにこちらの様子を伺うローブ姿の女性。そこにはクルクルこと従姉のクル姉がいた。
「クル姉。なんでそこに!?」
「センちゃん。お姉ちゃん来たよー」
机の陰に隠れていたがこちらがクル姉の存在に気づいたら、満面の笑みを浮かべてこちらにやってきた。
「知り合いっすか?」
「・・・従姉だ」
あれ?リアルの素性って話しても良かったのかな?まあ話しちゃったものはしょうがないか。
「センさんのイトコのお姉さんっすか。初めましてトイスっていいます。よろしくっす」
「・・・・・・」
「あれ?」
クル姉は勢いよく声を掛けてくるトイスから隠れるように俺の後ろに無言で移動する。
相変わらずの人見知りのようだ。
「ちょっとショックっす」
「クル姉は人見知りが激しいからな」
となりの席が空いていたので椅子を引き座るように促すと大人しく座った。
「えっと改めて紹介するけど、従姉のクルクルだ。俺はクル姉って呼んでいる」
「・・・初めまして」
「お、おう」
「よろしくっす」
「初めまして~」
「・・・・・・どうも」
あ、こっちにも人見知りがいた。
アンズも基本人見知りな方で挨拶をしながらもリンドウの後ろに隠れるようにしている。
そしてクル姉も同じように俺の後ろに隠れるようにしている。
お互い人を盾にしながら様子を伺い合っている、ある意味息が合っているな。
「それでクル姉、何か用が有ったんじゃないの?」
「そうそう、センちゃん。にお願いしたいことがあるんだけど」
「何?」
「私をセンちゃんのチームに入れてほしいの」
チーム参加希望か。
チーム枠ならまだ余裕あるし、クル姉なら問題はないか」
「ああ、それなら別に良いけど」
「セン、その女は誰」
寒気がした。
後ろから聞こえてきた聞きなじんだ声。
いつもそばに居て安心すら覚えるその声を聞こえた瞬間全身に何故か鳥肌が立った。
「・・・ミニッツ」
「もう一度聞くわ、そこのあなたにしがみ付いている女は誰?」
何だろうこの迫力は、だが妙に懐かしくも思う。
そうだ、子供のころにたまにこの状態に成っていたな。確か他の子と遊んでた時だったかな。
そう半ば以上現実逃避な思考を巡らせていると――。
「・・・センちゃん、この子なに?」
すぐ隣から同レベルの寒気がする声がした。
「ずいぶんセンちゃんに生意気な口きく子だね。小学生?」
「・・・・・・高校生よ」
「ふーん、あなたが幼なじみちゃんか。たまーにチビな幼なじみが居るって話に挙がる程度だよね」
「そう、私は貴女のことを一切聞いたこともないわ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何故か俺の前でにらみ合う女の子が二人。
一人は幼なじみ
一人は従姉。
一体何が起こっているんだ。
「二人とも、落ち着きなよ。なんで初対面で喧嘩腰なんだよ」
「ほら、アンズちゃんも参戦しなきゃ~」
「むっ無理だよー」
「ほほぉ、これはまたどうして。面白いことになっているじゃねえか」
「センさんばっかしなんかずるいっす」
アンズの参戦ってなんだ!完全に他人事だなレト!ずるいってなんだそれなら場所変われ!
「センの言う通りだよ。落ち着きなよミニッツ、それにそっちの人も落ち着いて」
仲裁に入ってくれたのはモンドだけだ、やはり持つべきものは幼なじみだな。まあ原因の半分も幼なじみなんだが。
「モンド、あなたは引っ込んでなさい」
「でかい人。これは私たちの問題なんですよ」
「そんなに二人してセンを困らせたいの?・・・嫌われるよ」
「「!!!」」
モンドが最後にボソッっとつぶやいた言葉に二人が動揺している。
「チャンスよ、アンズちゃん。今ならセンさんの好感度を上げるチャンス」
「え?へ?そうなの?え?え?ええ!?」
ついでにアンズも動揺している。
「とりあえず落ち着いて座ってから話をしようか」
モンドの登場で一旦は場が収まったかに見える。
だが騒動の火種はまだこれから広がっていきそうだ。




