閑話その2 それぞれの・・・
彼等は学生である。
学生であるなら当然のように避けて通れる道と言うものがある。
そう――。
定期テストである。
※※※
「えっと・・・えっくすがわいでわいが・・・・・・解らん」
「ダイ、なんかXYがひらがなに聞こえるんだけど」
定期テストの3日前。流石にそんな時期になってまでHGOをやっているわけにもいかず現在俺の家に集まり3人での勉強会となっている。
ちなみにこの勉強会は小学生のころから定期的に行われていて3人の家を順繰りに回っていたのだが今は俺の家でのみの開催になっている。
その理由はミニコは年ごろの女の子なので流石に男が上がり込むのはマズイのではとの理由。これはミニコ自身は気にしていないのだがおじさんからのお願いでそうなった。
ダイの場合は理由がふたつ。
単純に部屋が片付いていないことと、ダイの部屋で行った場合周囲に雑念の元がたくさんある為、ダイが集中出来ないからだ。
結果、勉強会どころか何か理由が合って集まる場合は自然と俺の部屋に集まるようになった。
「まあダイがいつも通りなのは別にいいんだが、ミニコはミニコで何やっているんだ?」
「頭の体操よ」
見捨てないでーと言うダイの声を無視してミニコの手を見ると、そこにはカラフルに色分けされた立方体がクルクルと回り6面が9×9で区切られているそれらを回し色をそろえていく。
「それなんだっけ」
「パズルキューブってやつよ。回して色面を合わせるやつ」
「それヴィジョンで昔懐かしのアナログパズルゲームってので見たことあるよ」
半分死にかけていたダイがゲームと聞いて復活した。
パズル系は苦手なはずなのにだ。よっぽどゲームに飢えているのだろう。
「って言うか、ミニコだけ遊んでてずるいよ」
「何言っているのよ。テストなんて普段の授業をキチンと聞いていれば難しくないでしょ」
「そんなことないよ!」
「そもそもダイは普段の授業で寝てるからいけないんでしょう」
「寝ていなくても俺には解らない!」
「胸を張って正々堂々と何恥ずかしいこと言ってるのよ!」
ミニコの正論もダイの暴論と言う名の自爆には勝てないようだ。
「それよりミニコ、ここの訳なんだけど」
「ああ、それはね」
ミニコを教師役とした勉強会はこうして過ぎていく。
※※※
街の中心近くにある高級住宅街。
その中でもひときわ大きな一軒家の一室。
2階の尤も日当たりの良い部屋、つまり子供部屋だ。
全体的に白色を基調とした清潔感溢れる部屋でどこかの深窓のご令嬢が暮らしているんだろうかと想像をしてしまうほどの少女趣味が入っている部屋だ。その部屋で4人の少女が集まり勉強をしていた。
「幕末はやっぱりいいですね~」
「何を言っているの熱き男たちの血沸き肉躍る。歴史は戦国時代が至高よ!」
「あら~幕末だって熱いですよ~」
「そんなの戦国大名たちに比べればぬるま湯よ。神の生まれ変わりを名乗り。様々な二つ名があり。奇策でもって大軍を打ち破り。最強の名を持つ一族!そんな戦国武将たちの熱さこそ最上」
「中二乙。私のマイブームはせっきから石器時代」
「ふぇぇ、みんなテスト範囲は平安時代だよ」
「マリアちゃーん、おやつの準備が出来たから取りにいらっしゃい」
「はーいママ。・・・クククッ甘美なる漆黒を浴びせた輪円なる褒美を用意しよう。しばしの安息の時間を享受するがよい」
「あら~今日はチョコレートドーナッツなのですね~」
「・・・チョコがちょっことだけかかったドーナツを希望」
「あ、持つの手伝うよ」
四人の勉強会はにぎやかだ。
※※※
二人の少女が机を挟み向かい合いながらノートを開き勉強をしている。
そのうち髪を後に束ねた少女が向かいの少女に声を掛ける。
「むぅ・・・瑞ねぇ」
「なに?」
「ここの公式なんだけど・・・」
「どれどれ」(ふよん)
「うわぁ・・・」
「どうしたの忍ちゃん?」
「な、なんでもないよ(瑞ねぇが前かがみになった瞬間物凄い光景が目に入ったなんて言えないよ!)」
「それにしても今の中学ってこんな事教えているのねぇ懐かしいわ」
「いや、瑞ねぇもちょっと前まで中学生だったでしょうが」
「それより忍ちゃんも女の子なんだからせめて座り方に気を付けなさい」
「座り方?そんなに変かな?」
「せめて胡坐は辞めなさい」
「え、やっぱり男の子ぽく見えちゃうかな」
「男の子ぽくと言うか・・・(短いのを穿いているから見えているのよね。この場に私しかいなくて良かったわ)」
この従姉妹たちの勉強会はある意味刺激的だ。
※※※
「なあ」
「なんすかレトさん」
「誰もインしてこないな」
「そっすね」
「なんでかな」
「テスト期間だからじゃないっすか」
「そか」
「・・・」
「・・・」
「お前はいいのか」
「そういうレトさんこそ」
「・・・」
「・・・」
「狩り・・・行くか」
「・・・そっすね」
ふたりの勉強は一夜浸け。
※※※
ここは商都ツノハのギルド。
流通の中心都市だけあり、常に人でにぎわっている。そのギルドでチーム一覧表を借りて一心不乱に調べ物をしている少女がいた。
1ページずつ丁寧に確認しているその目はやがてあるページで止まる。
「・・・見つけた」
その少女が開いているページのチーム名は「MillionColor」。
チームリーダー名、所属人数が書き込まれている。
チーム特色を書き込む箇所もあるが元々勧誘用の項目なので身内チームである万色はその部分は空欄だ。
つまり目を引く項目が無い。どこにでもあるページだ。
だがその少女はチームリーダーの項目。センの名前の部分を愛しそうに指でなぞり。
「待っててね」
騒動の種がまたひとつ芽吹くようだ。




