弱者の迷宮8 最終関門~クリア~
「・・・なぜだ、なぜ我が負けている」
今まで強者として悠然と佇んでいたスフィンクスが初めて狼狽している。
当然だろう、有ると思っていた答えたアイテムで不正解になったのだから。
「・・・一体なにが」
「だから言ったでしょ。アイテムがどこにあるのか分かってないと負けるって」
「っ!まさか!」
言葉の意味を理解したスフィンクスがこちらに、部屋の外に一歩だけ出ている俺に眼を向けてくる。
「・・・そういう事か」
「お探しのはこれか?」
懐から「力強化の指輪」を取り出して見せる。
「このゲームで使えるアイテムの条件は部屋の中にある事なんでしょ」
「ミニッツがヒントを出すものだから気づかれないか少しヒヤヒヤしたよ」
「大丈夫よ、それも含めて気を逸らしてたんだから」
確かにミニッツはこちらに気が向かないようにしてたな。
スフィンクスは再召喚をして解答を増やす。
それならプレイヤー側はその逆にアイテムを減らすことで対抗できるんじゃないか。
そんなことをミニッツに言ってみたら即座にアイテムを外に持ち出すアイデアと適切なアイテムを指示してきた。
その辺りは流石としか言いようがないよな。
その指示されたアイテムを持ったまま部屋の中にあるアイテムを適当に動かしていく。そうして於けば指示されたアイテムを持っていても怪しまれないからだ。
同じようにミニッツはスイにもアイテムを動かすように指示を出す。ただしこちらはフェイク。
何かの意図があって部屋の中のアイテムを動かしていると思わせることが目的で本命は俺が部屋の外に持ち出すこと。
問題は持っているアイテムをいつスフィンクスが使ってくるかだが、そこは少し情けないがミニッツ頼みになる。
上手くタイミングが合ってよかったよ。
「それで?」
「それで、とは?」
「まさかルールに反している、認められないとか言い出さないわよね」
「ふむ」
俺たちの視線がスフィンクスに集まる。
ここでスフィンクスが認めることは出来ないとか言いながら最終戦闘に入るのもお約束のひとつなんだよな。
尤もそんなことに成った場合勝ち目は無さそうだな。
「知恵を尊ぶ我が知恵により得られた勝利に水を差すと思うのか」
「思わないわよ。だからさっさと私たちの勝ちを宣言しなさい」
「ふん、生意気な小娘だ。気に入ったぞ。お前には報酬とは別に我からも力を授けてやろう」
スフィンクスの足元に魔法陣が浮かび上がりその魔法陣がミニッツに収束していく。
魔法陣が完全に消えた後には呆然としているミニッツが残されていた。
「・・・これは、スキル?」
「そうだ、そのスキルを使いこなすには知恵がいるぞ」
ミニッツは受け取ったスキルを確認している。
「ここをこうすれば・・・前にヴィジョンで見たことあるわね。なるほど、面白そうなスキルね。私にピッタリのスキルだわ」
「Mスキルね!ミニちゃんもしかしてレアスキルだったりするの」
「落ち着きなさい、後でちゃんと解説してあげるからその前に報酬のアイテムをえらんじゃいましょう」
そうだった、これで迷宮クリアだから報酬を貰えるんだよな。
「それでは報酬はこれらだ。この中から好きなのを選ぶがよい」
再びスフィンクスの足元から魔法陣が現れる。
今度はミニッツが解答に使ったアイテムの本物が現れたみたいだ。
「さて、何が良いかしらね」
この場合一番目に止まるのは最もレアな武器に対してだ。だけど今回の場合は・・・。
「ラピスランス、使い手がいないわね」
「そうだね」
スフィンクスが再召喚後に解答で使われた武器の正式名称だ。
攻撃力も高く特殊な効果も持っている有る武器なのだが使い手が知り合いにすらいない。
いや、あの牛好き騎獣士がランス使いだったか。
「センは何にするか決めているの?」
「一応候補はいくつか、ミニッツは?」
「私はもう決めてあるわ。これよ」
そういってミニッツが手に取ったのは銃の弾丸を納める箇所、弾倉だ。
「これの正式名称は付与弾倉。弾丸への付与効果を高める効果があるわ」
「それってつまりミニッツの呪術付与の効果もか?」
「ええ、事前に弾丸に呪術を付与してこの弾倉に納めるとその付与した呪術の効果を高めた状態で維持できるのよ。そして撃つときにも今までと同じように呪術を付与して撃てばさらに威力が上がるって代物よ」
「えっと、つまり今までより効果が高くなるって解釈でいいのかな」
「まあ、おおざっぱに言えばそうね。ただ撃つときに別の効果の呪術を掛けちゃうと解けてただの攻撃になるのが難点ね。それに使うためには今使っている武器を改造しなきゃいけないし」
すごいな。まるでミニッツの為だけに用意された装備品じゃないか。
「センが使う封札みたいで一目見たときからこれに決めてたのよ」
なるほど、付与効果の維持は確かに封札と同じだな。
さて俺も早く決めるか。
候補にしているアイテムはこれだ。
・跳兎の靴
その装備効果は文字通り跳躍力の強化。
スキルに跳躍を持っている自分とも相性がいい装備だろうな。
・千里眼の額当て
スキル「鷹の眼」が使えるようになる装備だ。
効果そのものは低いがスロット枠を使わずにスキルを使えるようになるのはメリットだ。
・飛斬指輪
これは飛斬が撃てるようになる指輪だ。
威力はLv10にも満たない程度だが遠距離攻撃を持たない自分としては持っていた方が良い装備だ。
目ぼしいのはこれぐらいかな。とは言え額当ては別にいいか。
鷹の眼は命中率も上げる効果があるとは聞いているが今の所そこまで必要ではない。
跳躍力を上げる靴か遠距離攻撃が出来るようになる指輪かの2択か。
「良し決めた」
「何にしたの?」
「跳兎の靴にするよ」
遠距離攻撃は確かに魅力的だがいまさら感があるんだよな。
それなら自身の長所を伸ばす形で行った方が後々有利になるだろうな。
「決まったか?」
「ええ、私たちは決まったわ」
スフィンクスの質問に対してミニッツが答える。
そう俺たちは決まったんだよな。
「見たことないアイテムね。どんな効果が有るのかしら・・・あ、こっちにあるのはレアアイテムの・・・でもでもこっちの装備も捨てがたい」
「まだ時間かかりそうね」
「そうだね」
スイだけが決まらない。
情報魔のスイは知らないアイテムが有ればそれを知りたがる。そしてアイテムは実際使ってみないとその性能は分からないものだからな。
「貰ったスキルってどんなやつ?」
間を持たせるためミニッツが手に入れた新スキルのことを聞いてみる。
「そうね、まだ使ってないからスキルの解説文を見ただけだけど。発動させたら周囲敵味関係なく効果を発動させるのよ。それでその効果なんだけど・・・57種類はあるわね」
「は?57種類?なにが?」
「あ、違うわね。これは単体では効果無いみたいだから56種類かしら」
いや、56も57も大して違いは無いよ。
1種類のスキルでそれだけの効果幅があるってことか?
「まあ、詳しい説明はちゃんと検証してからにするわ。使いこなすにも練習が必要だしね」
すごい気になるな・・・。
「それよりまだ決まらないのかしら」
「まだ時間はかかりそうだね」
スイがアイテムを決まったのはこれから30分後のことだった。
スイは何もしていない。
なお後日、運営から迷宮の部屋の外に出れなくなる仕様になったとの変更が発表されました。




