合魔物6 対策
してやられたな。
PKに逃げられたその後、卵を見つけて殻を割るとそこに現れたのはコボルトだった。
洞窟内に現れる犬頭の魔物だがゴブリンより強い程度でしかなくあっさり倒すことが出来た。
すぐに追いかけようとも思ったがすでにPKの姿は無く。追いかけようもなかったので傘犬を倒していたアンズと合流して魔都へ一度戻ることにする。
狩りを再開してもまた現れるだろうし、今回以上の何かを仕掛けてくる可能性が有るので対策を考えなきゃいけないよな。
「どうしましょうか、師匠」
「こういう時は事情通に聞くのが一番いいんだよ」
早速メールを送信、何か知っているかもしれない相手。つまりヤクミチにメールを送るとすぐに返信が来た。どうやら実際に会って話がしたいとのことでギルドに向かうことになった。
「おう、来たな」
「待たせたか」
「こ、こんにちは」
ギルドのテーブルのひとつの席に着く。
「そういえばそっちの嬢ちゃんとは話したことが無かったか。俺はヤクミチ、薬士でクラフトマンズ・ワークってとこで副リーダーをしている。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします。その・・・アンズです、封札士です」
アンズはよっぽど緊張しているのかつっかえながら自己紹介している。
「それでセン。PKに会ったんだな、キルされたのか?」
「いや、キルはされていない。逃げられたけどな」
「倒してないのか、それは助かった」
「助かった?」
どういうことだ?まさかヤクミチがPKと通じている?
「いや、助かったってのは誤解を生むな。実はそのPKに対してはうちのチームでも問題になっててな、その対策を実は今日行う予定だったんだ。それなのにキルされてヤツが喪に服してたら予定が狂ってた」
そうだったのか、図らずもヤクミチたちの計画を潰しかけてたのか。
でもPKへの対策って返り討ちにする以外何かあるのか?
「そこは俺たち生産職の腕の見せ所ってな。それでなセン。その計画に参加しないか?」
「計画にか?」
「ああ、まだ人手が足りなくてな。森の中でソロででも活動が出来て尚且つある程度の実力者で信用出来るプレイヤーって条件出したら意外と人選に手間取っちまってな。その点お前さんなら問題ないだろ」
「良いのか?」
「問題ない。さっきうちのリーダーにも確認取ったけどちゃんとOKもらっているよ」
すでにOK貰ってるって・・・。
「もちろん、成功したらだが報酬は出す」
悪い話ではない。と言うより渡りに船と言ったところか、属性石集めの障害になるPKを排除できて尚且つ報酬まで出るのだ。普通に考えれば受けたほうが得だな。
「それでその計画ってのはいつからだ」
「これから参加メンバーの顔合わせがある、そこで計画の説明をしてから開始って流れだな」
受けても良いが、アンズはどうするかな。
今回の相手はPKだ。
対人戦てのは実は慣れない人にとっては意外とストレスに成ったりする。
そういったことは気弱で優しいアンズには少し酷かもしれないんだよな。
「この話は俺は受けるけれど、アンズはどうする?」
「わ、私ですか・・・えっと、その・・・」
「とりあえず会議だけでも参加していくか、それで受ける受けないを決めてもらってもいいぞ」
そうヤクミチに提案してもらった。
「そうだな、とりあえず話に参加だけでもしていきなよ」
「は、はい。師匠がそういうならそうします」
「おう、ならこっちだ」
ヤクミチに連れられてギルドの奥にある転送クリスタルに向かう。
テーブルの上にソフトボール程の大きさをした水晶がある。
これはチーム専用ルームに移動するための装置でチームのランクが2になれば使えるようになり、ランクが3になれば生産施設を追加できるようになる。
「ヤクミチのところはもうランクが2か」
「いや、もうひとつ上のランク3だ。基本ここまでは金でなんとか出来るからな。そして金は俺たちの得意分野だ」
確かに必要なアイテムはレアではあるが買える物みたいだからな。うちみたいに零細チームは自力で頑張るしかない。
頑張ってくれたメンバーに感謝だ。
「そういえばその話し合いに参加する前に確認しておきたいことがあるんだが」
「ん、なんだ?」
「報酬なんだがこっちが決めていいのか?」
「物にもよるが、何かほしいのがあるのか?」
「報酬は属性石20個でどうだ」
「ぶっ、待て待て。PKのせいでただせさえ在庫の無い属性石をそんなに出せるわけがないだろうが!」
だよな。
「そうか、それならヤクミチがしばらくPTに参加してくれるって条件ならどうだ」
「俺か?・・・ああ、そういうことか。それなら問題ない」
報酬は決まったな。
ヤクミチのスキル「幸運」はクエスト用にも影響があるし、通常の属性石も手に入りやすくなる。
参加してくれればかなり早くクエストを終わらせることが出来るだろう。
「その代り、俺が獲得した属性石は俺のものってことでいいんだよな」
流石ヤクミチ、しっかりしている。
「それじゃあ、行くぞ」
ヤクミチからルームに入るための許可を貰ってからクリスタルに触れると、目の前に移動先を指定するためのウインドウが浮かぶ。今の所はクラフトマンズ・ワークだけだな。
メニューに触れると少し浮かぶような感覚のあと目の前に木製の扉が現れる。
「この先がルームだ」
遅れてアンズが転移してくると、すでに移動していたヤクミチが説明をしてくれる。
ヤクミチを先頭に扉をくぐると、そこは学校の教室2部屋分ほどの広さのある部屋だった。
イメージ的にはテンプレ的なファンタジーな酒場だろうか。
バーのようなカウンターがあり、奥に行くための扉もいくつか見える。そんな部屋に3人の男女が居た。
「おう、ヤの字。そいつらがお前の言ってた。奴らか」
「そうですよ、姐さん」
「姐さんじゃねえ!親方と呼べ!」
ヤクミチに姐さんと呼ばれた女性がチームのリーダーか。
女性にしては背は高く、赤く長い髪を後ろにまとめただけだが、一言でいえばカッコいい女性だ。
ただその装備はシャツに半纏、ニッカボッカに足袋と言う格好で「親方」と言うより「棟梁」と呼びたくなるな。
まあ、今のやり取りから豪快な性格の人っぽいな。
「ふふふ、こんにちは。よろしくお願いしますね」
「・・・・・・ふん」
椅子に座ったまま挨拶してくる女性とその後ろに護衛騎士のように立っている男性の二人組のプレイヤーだ。
姫様と騎士のロールかな?
腰まである長い髪の女性はローブに杖の魔術師型の恰好で後ろに控える男性は重装備に大楯を背負っている。
前衛と後衛でバランスがよさげだな。
「あと一組来れば、参加メンバーはそろう予定です」
「おう、そうか」
ヤクミチの報告にリーダーが返事をする。そういえばまだ名前聞いてないや。
「ん?どうしたセン」
「いや、そういえばまだ名ま――」
「主役は遅れてやってくる!!」
突然大きな音を立てながら扉を開けて入ってきたのは鎧姿で大きな盾を背負った女性だ。
長い金髪を縦ロールにした髪型で装飾が派手な鎧を着ている。鎧姿ではあるが見た目的にはテンプレ的な貴族令嬢と表現するしかない女性だ。
「姉さん、遅れてきたのにその言い方はどうなのさ」
「何を言っているのです。高貴なる私が来たのです、感謝されこそすれ非難されるいわれはないわ!」
性格までテンプレ貴族令嬢!?
弟(?)から注意をされてもどこ吹く風と言った感じだ。
「・・・ちっ」
もしかして今の舌打ちは騎士さんかな。
何というか・・・濃いキャラクターしてるな・・・。
「あー、これで全員そろったな」
参加メンバーを見回してみる。
まず自分たちMillionColorの二人。
クラフトマンズ・ワークの二人。
最初に居た、姫様と騎士の二人。
そして最後に着いた、テンプレ貴族令嬢とその弟(?)
総勢8名のPK対策メンバーがそろった。




