チーム結成6 VS一本角
何とかスイを説得して探索再開。
スイの情報への熱意はこちらも役立てているとはいえ少し抑えてほしいよな。
「そろそろ大樹木近くね。トイスくん反応はどう?」
「えっと、右斜め前だいたい40メートルぐらいのとこに4体ほどの反応があるッス。たぶんこれッスかね」
トイスの示した辺りに向かう。
もちろんすぐその場には行かずに木に隠れながら遠目で確認する。
「居たわね。ハイシャーマンよ」
そこには4体のゴブリンが存在していた。
角の生えたファイタータイプが2体、それぞれ斧と槍を持っている。
浅瀬にいるのとは違い身体が筋肉で一回りほど大きく見える。
角なしの魔法術士タイプが1体こちらは杖を持っているが装備はローブではなく他のゴブリンと同じく革の軽装備。身体も浅瀬に居るやつより少し小柄だ。
そしてその3体のゴブリンを従えるようにして居る両手剣を背負った巨大な一本角のゴブリン。
「パッティハイゴブリンシャーマン」である。
「一本角・・・ラッキーね、パワー型のハイシャーマンよ」
「他にも種類がいるの~?」
スイの言葉にリンドウが疑問を投げかける。
「そうね、説明をしておこうかしら。ゴブリンは角の有る無しで強さに差が出る種族なのは説明したけど、その角の大きさや数によってもタイプが変わるのよ。分かりやすく言うとあそこにいるやつはね」
そう言って大樹木の近くに陣取っているゴブリンを指さす。
「あいつみたいに角が大きいやつはパワー型。一応魔法も使ってくるけどホントにたまにしか使わないの、そのためハイシャーマンの中では最もやり易い相手とも言われているわ。
次に居るのが二本角のテクニカル型。
こいつは一本角より力はないけどその分魔法もスキルも使いこなしてきてハッキリ言って一本角より厄介なのよね。
そして最後に居るのが巨大二本角のジェネラル型。
ここまでの説明を聞いてれば分かると思うけどパワー、魔法、スキルそのすべてに於いてトップクラス。
それもあんな感じにパーティーを組んでいるわけだからでフィールドボスのパッティゴブリンロードよりも強いかもしれないわね」
「うへぇ、巨大二本角のやつとはやり合いたくはないッスね」
トイスの言葉が他のみんなの気持ちを代返している。
「でもあそこに居るのは一番弱いタイプなんですよね~?ならみなさんお強いですから大丈夫ですよ~」
「油断大敵、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言うでしょ」
「尤もあそこに居るのは兎なんて可愛いものじゃないッスけどね」
弱いと言ってもハイシャーマンなのは変わりないしな。
「とりあえず説明はそんなもので良いんじゃないかしら。それで作戦なんだけど――」
4体のゴブリンが何をするでもなく大樹木のそばをうろついていた。
配置としては魔法術士型が大樹木を背にしていてその前にハイシャーマン。さらにその前にファイター型が守るような形だ。
つまり大樹木を背中にして1-1-2フォーメーション。
遠距離や支援を担当する魔法術士型を守りながら戦えるゴブリンのくせになかなか理想的な配置だ。
教科書通りともいえるが。
そんなゴブリンたちが頭上からした音に反応して見上げた瞬間、一発の銃弾が襲い掛かる。
黒いオーラ状のものを纏いながら魔法術士型に襲いかかるのは沈黙が掛かったミニッツの銃弾だ。
「ギャッ」
銃弾は見上げていた為に無防備になっていた魔術師型の喉元に一直線に撃ち込まれ魔法を封じる。
沈黙と部位破壊によって魔法術士型の魔法が封じられた。
これによってゴブリンたちの魔法支援が無くなったことを意味する。
「ギッ!ギギャギャ!」
ハイシャーマンがファイター型に指示のようなものを出した後に自身も銃弾が飛んできた方向に向かう。
それとほぼ同時にヒナゲシとトイスが隠れていた藪から飛び出しファイター型を迎え撃つ。
ミニッツ及びスイはいまだ藪に隠れているようだ。
因みにリンドウも強化首飾と強化指輪を施した後ミニッツたちと一緒に隠れている。
と言うわけで魔法術士型は今魔法を封印されていてしかも守るものも居ない無防備な状態。
走行と跳躍のスキルを駆使して木の上を跳び渡り現在大樹木の枝の上に居る俺からすれば倒してくださいと言われてるようなものだな。
ハイシャーマンが十分離れたことを確認してから魔術師型に向かって飛び降りながら攻撃を加える。
「斬撃!」
「・・・!!」
「ギギッ!!」
流石に弱点看破を乗せられなかったが不意打ち+斬撃+居合+飛び降り攻撃の効果で一撃だった。
そして着地の音を聞いてハイシャーマンがこちらに気付いたようだな。
魔術師型が倒されたことで怒っているようだが、ここまでは作戦通りだな。
ハイシャーマンの敵意をこちらに向けて足止めをしておけばあちら側は4人でファイター型2体に対処できる。
少し変則的ではあるけれど戦術の基本の各個撃破ってやつになるのかな。
早速向こう側でヒナゲシがファイター型2体相手に大立ち回りを始めている。
後衛の3人も上手くサポート出来てているみたいだな。
後はこっちがやられない様に時間稼ぎするだけだ。
「ガァァァァァ!!」
ハイシャーマンが怒りの雄たけびを上げながら両手剣を振り下ろしてくる。
その攻撃を後ろにショートジャンプしながらウルフを呼び出す。
「解放。ウルフ」
ハイシャーマンの攻撃は両手剣。そして魔法攻撃なのだが・・・。
どうやら怒り状態のため魔法はなさそうだな。しかも攻撃が大振りになっている。
ハイシャーマンの攻撃をここでも走行と跳躍を駆使して躱していく。
跳躍を使うにはある程度の助走が必要なのだが走行を持っているとその助走をほぼゼロにすることが出来る。
そうするとどうなるかと言うと――。
ただ立って構えた状態からでも相手の頭を跳び越えられる程度には跳ぶことが出来るようになるのだ。
そしてその跳躍の向きを横にして1メートルほどの短い距離の跳躍を繰り返し行いハイシャーマンの攻撃を躱し続ける。
たまにウルフに攻撃が向くタイミングで距離を詰め攻撃を加えていく。
その時も無理にスキルを発動させず通常攻撃で攻撃してすぐに距離を取る。
元々このハイシャーマンは両手剣の大振り主体の攻撃なので間合いギリギリのところでこの対応をし続ける限りはまずダメージはもらわないだろうな。
そうやってヒット&アウェイを繰り返しながら時間を稼いでいたら向こう側から断末魔の悲鳴がふたつ上がった。
どうやらヒナゲシがファイター型を倒したらしいな。
これで残すはハイシャーマン1体のみだ。
「センさん、お待たせしました」
「大丈夫。余裕だったよ」
流石に自分の取り巻きが全滅して焦っている様子だ。
「横薙激!」
「斬撃!」
「衝撃矢!」
「ギャァァァアァァァ!!」
挟み撃ち状態になりどちらに向こうかと混乱していたため結果3人のスキルを全てマトモに受けてしまいそのまま消滅してしまった。
「ずいぶん呆気ないッスね」
「そんなことないわよ。真正面からぶつかってればこっちにも少なくない被害はあったはずよ」
「終わりましたか~」
戦闘終了の気配がわかったのか物陰に隠れていたリンドウが出てきた。
「それでセン。肝心のクエストアイテムは出たの?」
ミニッツに指摘されたので確認してみる。
パッティハイゴブリンシャーマンの角 1/5
ミナズキの葉 0/10
ちゃんと増えてるな。
残りは角4本と葉が10枚。
この調子でがんばるか。




