チーム結成4 トイスの受難
ここでゴブリンについて説明しておこう。と言ってもスイの受け売りになるのだが。
基本的にゴブリン種は角が生えており角の大きさがそのまま強さの基準になっていて角が大きいもしくは2本生えている場合は強いゴブリンだと見るらしい。
そしてパッティの森に居るゴブリンだがまだ序盤のフィールドなのでそれほど大きい角はではない。
そして角の生えてないゴブリンも存在している。
生えてないゴブリンは基本的に身体が弱いため強さが全てのゴブリン種内でも迫害の対象として扱われているようだ。そのため角なしゴブリンたちは強さを求める。
その求めた先が魔法と言うわけだ。
なので基本的に角ありゴブリンは前衛戦士が多く角なしゴブリンは後衛魔法術士が多くなる。
だが世の中には例外というものも存在している。
角が生えており戦士としての力を持ちながらさらに魔法という力まで求める存在が。
それがパッティハイゴブリンシャーマンだ。
戦士としても戦いながら魔法まで使う強敵なのだ。
「それってつまり魔法戦士みたいなもの?」
「そういうことよ。大抵の場合ボスを除けばそのフィールドにいるゴブリン種で一番強い魔物はそのハイゴブリンになるわ」
「やっかいそうッスね」
「そして一番強いわけだから群れのトップになるわけよ。だからハイシャーマンは取り巻きを3匹から4匹は連れているわ」
ちなみに魔法を扱うにも才能というものが必要になるため角なしで魔法を習得できなかったゴブリンたちは群れから追い出されてしまうらしい。
無駄に設定がリアルだ。
「センさんひとつ聞いていいッスか?」
「なんだ改まって?」
これから森に向かおうといった時にトイスが話しかけてきた。
それも少し声を落としながらだ。
何か重要な用件かな?
「今日スイ姉さんが連れてきた女の子たちって元々センさんの知り合いなんッスよね」
「まあそうだな」
細かいこと言うならヒナゲシはリアルでモンドの知り合いみたいだけどな。
「どっちもかわいいッスね、顔いじってる様子もないし。あのふんわり髪の子、リンドウちゃんって言いましたっけ。なんか癒し系って感じがするッス。でもポニテのヒナゲシちゃんも捨てがたいッス。あの凛とした佇まいっていうんスか。こうビシッと説教とかされてみたいッス」
唐突にトイスが二人のことをほめ始める。なんだ説教されたいって。
とは言え気持ちは分から無くもない。
実際ふたりとも見た目は下手なアイドルよりよっぽど可愛いと言っても良い。
ただし見た目はね。
何せヒナゲシは隙あらば親父ギャグを入れてくるし、リンドウのほうも見た目に反して気が強くマリーの説明だと腹黒キャラらしい。
幸いというかまだその腹黒さにはかかわったことが無いが忠告して来た時のマリーとヒナゲシの表情からよっぽどの黒さなのが窺える。
それでも友達付き合いを続けてるってことはまあ根は良い子何だろうけど。
「それでセンさん物は相談なんッスけどあの二人と仲好くなるにはどんなのがいいッスかね」
「どんなのって?」
「鈍いッスね、話題だったり贈り物ッスよ。女の子と仲良くなる常套手段じゃないッスか」
あのふたりが興味を引きそうな話題や贈り物ね。
とは言えあまりリアルのことを話すわけにもいかないからな。
当たり障りのないところだと・・・。
「ヒナゲシは親父ギャグか」
「センさんちょっと何言ってるか分かんないッス」
うん、俺もだ。
「正直俺も知り合ってそれほどでもないからな。そんなに詳しくないんだ」
「そうッスか、それなら直接会話で聞き出すッスよ」
「おい、やめとけ・・・」
止める声も聞かずにトイスが二人の元に向かっていった。
別に声を掛けるのは良いんだが終わってからにしてほしかったな。
これで変にこじれたりしたら森の攻略に差し障りがでるかもしれないし。
一応こじれない様に聞き耳は立てておくか。別に好奇心からじゃないぞ。
「ちわーッス」
「こんにちは」
まずはヒナゲシに向かったか。
「俺はトイスって言うッス、よろしく」
「・・・え?よく聞こえない」
「ん?名前トイスっていうッス」
「トイスくんの声少し遠ス・・・クスッ」
「・・・うん、自分それじゃあ向こう行くッス」
いきなりヒナゲシの親父ギャグの洗礼を受けたか。
割と無表情な顔立ちをしてるのに出てくる言葉があれだからな。知らないと面を食らうよな。
「こ、こんにちはッス」
「はい、こんにちは~」
今度はリンドウか。
この子はヒナゲシほど奇妙なところも無いし大丈夫だろう。
「俺はトイスっていう弓士ッスよろしく」
「あら、これはご丁寧に私はリンドウです。装飾士ですわ~」
「(よし、こっちは普通の子ッス)」
本人は小声で言ったつもりだろうが聞こえているぞ。
「スキルの構成はパーティー補助中心なんで色々役立つッスよ。例えばアクセの素材集めなんかにも役立つッス」
「まあ、そうなんですね~」
「そうッス。何か必要な素材が有ったら呼んでほしいッスよ」
「まあ、それでパーティー補助のスキルってどんなのがあるんですか~?」
「たとえばッスね」
トイスはリンドウの質問に対して正直に話していく。
しかしそういったスキル構成ってのはなるべく知られたくないものじゃないのか?
「――といった感じッス」
「なるほど~、参考になりましたわ~」
「そうッスか」
「ええ~、私は装飾士なので戦闘の役に立てなくて他のみんなに申し訳なかったのですが。これでみんなのお役に立てることが出来ますわ~」
「そうッスか、よかったッスね・・・あれ?」
「はい、感謝しますわ~」
「いや、そういうのは自分がやるッスから呼んでほしいんッスけど」
「いえいえ~その必要はございません。私がその役割を果たしますので~」
「え・・・いや・・・」
「ですが今回は準備が整っていないので~お役目はお譲り致しますわ~」
「あ、はい・・・どうもッス」
何やらやり込まれてすごすごと戻ってきた。
「センさん・・・」
「なんだ」
「・・・女の子って怖いッス」
「そうだな」
「それじゃあ、みんな準備は良い?出来たのなら出発するわよ」
丁度いいタイミングでスイから声が掛かった。
「・・・それじゃあ行こうか」
「・・・はいッス」
女の子に対して変な苦手意識を持たなければ良いんだがな。。




