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Heroes Guild Online  作者: ムムム
チーム結成
68/100

チーム結成2 会議

 ここでチームに付いて説明をしておこう。


 簡単に言えば他のMMOなどで使われているギルドやクランと同じシステムになる。

 同じ目的を持ったプレイヤーが集まり組織化することだな。

 このゲームではプレイヤーは全員冒険者としてヒーローズギルドに所属しているという設定のため組織ギルド内で組織ギルドを作るのは不自然だと考えたスタッフがチームという名称にしたらしい。


 チームを結成するメリットはいくつかある。


 ひとつがホーム。

 つまり拠点を持てるようになる。

 それによって所持品の保管に使っていた倉庫などに頼らなくてよくなりまた生産施設や個室などもランクが上がれば使用できるようになる。

 今のところメンバーに生産職が居ないので生産施設はまだ意味ないけどね。


 次にチーム掲示板。

 チームに所属している人だけが見ることができる掲示板で様々な情報の共有が出来るようになる。

 これはスイがもっともほしがったシステムだ。

 チームメンバーが持っている情報をいち早く手に入れることが出来るからだとか。

 今までだとTELや直接会って情報を渡していたが時間が合わなかったりするとそれが遅れていたが掲示板が有れば今まで以上に情報を整理出来るようになるらしい。


 最後がチームスキル。

 これはチームメンバーの攻撃力が少し上がるなどの効果があるらしいがその上がり方が小さくまた特殊な条件が必要だったり特定種族に対してだけだったりと使いづらいものが多い。

 だがスロットを使わないで覚えることができるし習得は難しいがかなり有用なスキルも存在しているようだ。



 主にこの3点がチームを作った時の恩恵だ。


 もちろんそういったのを抜きにしても仲間内の結束を高めるなどの意味合いもある。



 そしてレトがチーム結成を口にしたのは理由があり、その理由とは。


「レトはランク3になったんだよ」

「おう、つい昨日な。武器の素材集めのついでになれたぞ」


 チームを結成するためにはまずリーダーになる人物が必要でありそのリーダーは最低でもランクが3以上でなくてはならないとある。

 つまりレトがランク3になったのでチームを作ろうって話になったのだろう。


「ってことで俺がリーダーをやらせてもらうが別にいいだろ」


 聞いてきてはいるが本人も反対が出ないことは分かっているらしく特に確認を取らずにそのまま話を続けようとしている。

 他のみんなも特に反論する気配はない。


「待って私は反対よ」


 レトがリーダーに決まるだろうという空気の中反対意見が出てきた。

 反対したのはスイだった。


「反対ってなんでだ?」

「あなたがリーダーになった場合困ったことが起こりそうなのよ。だから反対」


 困ったことと言うのは何だろう?

 他のみんなも心当たりがないらしく首をかしげているな。


「まずチームリーダーになった場合の仕事は何があるかしら」

「そりゃあ、まずメンバーの勧誘・・・は身内だけだろうからやらなくていいとして。他はチームの行動方針の決定、チームクエストの受注、チームランクのアップってとこか」

「そうね他にも色々あるけど基本その辺りね」


 特に問題は無さそうだが。 


「それで困った事をってのはなんだよ」

「よく聞きなさい。リーダーはチームを運営するのよ。その中には活動資金の管理も含まれているわ」


 スイはレトを見据えながらハッキリと告げる。


「レト、貴方にお金の管理を任せるのは物凄く不安なのよ」


 その時メンバーの全員が納得したのは言うまでもないだろう。


「ちょ、ちょっと待て!流石に俺でも活動資金に手を出したりしないぞ!」

「ええ、分かっているはいくらあなたでもそんなことはしないと思ってはいるわよ。それでも不安は無いとは言い切れないのよ」

「素材集めの合間でもカジノに行こうとするのを引き留めるのには苦労したッス」

「うっ・・・ぐぅ」


 トイスの証言が止めとなったようで反論は無くなった。

 カジノが好きでお金にルーズな人には管理を任せられないと結論になりレトのリーダーは無くなった。


「それじゃあ、俺以外だれがリーダーになるんだ。スイ、お前か?」

「そうねぇ、反対しといてなんだけど私はやりたくないのよね。リーダーやってると情報収集や攻略サイトの編集に時間が取れなくなりそうだし・・・」

「それなら推薦したいのが居るよ」


 そういいながらモンドの視線の先は―――。


「センならリーダーに相応しいよ」


 こちらに向いていた。


「セン君を?そういえばチームクエってリーダーによって・・・そう考えればセン君の方が」

「ちょっと待て、俺は言っては何だが初心者だぞ、チームのリーダーなんて出来るわけないだろう」

「そんなことないよ、センならやってくれると思ってるよ」


 たぶんモンドは本気で言ってるな。

 小学生のころからこいつモンドは俺のことを何かと立てたがる。

 中学の時は生徒会長までやらされそうになったからな。


「私はセンがリーダーになるのは反対ね」


 断りの返事をする前にミニッツから反対意見が出てきた。


「へぇ、珍しいよ。この手の話の時にミニッツが反対意見に回るなんて」


 これは俺も同意見。

 ミニッツもモンドと同じで俺を盛り立てようとする側だ。

 こういった場合モンドと一緒になって説得してくるかと思ってたんだけどな。


「センの言う通りこのゲームの初心者なのよ。それに・・・ただでさえ一緒の時間が・・・」


 何だろう、それに以降の声が小さくてよく聞こえなかったな。


「ふーん、なるほどねぇ。なるほどなるほど」

「な、なによ」


 如何やらミニッツのつぶやきはスイには聞こえていたようで頻りになるほどと言いながら頷いている。

 よく聞こえなかったがミニッツの意見はスイを説得出来たようだな。


「ミニッツちゃんの意見も尤もよね。確かに初心者リーダーは大変よね、だったらそのリーダーをサポートする人が居ればいいんじゃないかしら。それこそ四六時中一緒に居て色々手伝いをするような人がね・・・ねえミニッツちゃん、その役目どうかな」

「私はセンがリーダーに適していると思うわ」


 裏切られた!


「それじゃあ、多数決を取るわよ。センくんがリーダーで――」

「ちょっと待った。俺はリーダーになる気はないからな」


 ここでちゃんと意思表示しておかないとなし崩し的にリーダーをやらされそうだ。


「そうは言っても他に適任は居ないんじゃないかしら。トイス君にクノイちゃん、あなたたちやってみる気ある?」

「無いッス」

「私も無理かな」


 スイの問いかけに二人は即答する。


「それなら俺だって無理だ」

「それがそうでもないわよ。少なくともここに二人・・・いえ三人、セン君がリーダーに適しているって考えてる人が居るのよ」

「レトも何か言ってくれ。リーダーになりたいんだろ」

「いや、俺はやめておくよ」


 この中で一番チームリーダーに適していてやりたがっているはずの人物レトのまさかの辞退。


「流石にお金のことを持ち出されてちょっと堪えてるよ。反省も兼ねてしばらく大人しくしてるさ」


 意外とメンタルが弱いのか珍しくへこんでいるいるようだ。

 しかしそうなると次は。


「それならモンドはどうだ。有名人だろうし」


 モンドを推薦することにする。

 流石に今回は俺よりモンドの方が相応しいだろう。

 こっちは地雷職の封札士、片やβテスト時代の有名人(これはマルロから聞いた)。

 どちらが対外的に見栄えがいいか考えるまでもない。


「セン君、レトも言ってたけど身内のみのチームになるからセン君が気にするような対外的なことは気にしなくていいのよ」


 そうだった、有名人モンドをリーダーにするメリットはこのパーティーには無かった。

 それなら・・・。


「・・・ねえ、セン」

「なんだい」


 次の案を出す前にミニッツが声を掛けてくる。


「やりたくないって言ってるセンに対して確かに私たちは強引すぎるかもしれないわ。でも考えてほしいのこれはセンのためでもあるんだから」

「俺のためって?」

「センはこのパーティーに最後に合流してきたし、それに普段ソロで動いてることが多いでしょ。そのせいであまりこのメンバーになじめてないんじゃないかってみんな気にしているのよ」


 そうだったのか。

 言われてみれば最近このメンバー相手に狩りをすることが少なかった・・・ような?


「そう、これはセンのためなのよあなたとみんながもっと仲良くなれるようにって考えてのことなのよ」


 いや、それなら別にリーダーにならなくてもいいような・・・。


「それにねセン、聞いて――」

「お、おう・・・」



~~5分後~~



 そうか、これは俺に対するみんなの気遣いなのか。それなら仕方がないな。


「そう、これはみんなからのセンに対しての気遣いであり期待なのよ。それが解ったらリーダーになって私をサブリーダーにしてくれる件、受けてくれるわよね」

「ああ、分かったよ。その話受けるよ」


 うん、みんなの気遣いや期待を無下にするのは忍びないな。


「なあ、これってもしかして洗脳・・・」

「あぁ気にしなくていいよ。1時間ぐらいしたら元に戻るから」


 みんなからの気遣いの声が聞こえてくる。

 そうかそんなにみんなから気を使われていたのか。


「怖いッス・・・」

「ミニッツさんは敵に回したくないですね・・・」

「ま、まあこれで決まったし良かったわ・・・良かったのよね」


 さあ、みんなの期待に応えられるよう頑張るぞ。

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