刀技6 手伝い
土下座をしてくるリイルを強引に立たせてギルドから連れ出す。
正直周りの視線が痛いです。
「お願いだからあんな風に頭を下げるのはやめてくれ」
「はい!すみませ―――ふがっ!」
「だからやめろと」
ふたたび頭を下げようとするリイルの顔を思いっきり鷲掴みにして注意する。
「ふ、ふみまふぇん・・・」
痛かったのか少し涙目になっているがそれぐらいはいいだろう。
「まあ、別に手伝うのは構わないぞ」
「本当ですか、ありがとうございます」
お礼を言いながらまた頭を下げてくるリイル。
まあお礼で頭下げてくるのはいいか。
それに手伝えばこちらにもメリットはあるからな。
ソロではなくペア狩りで行けば多少の火力不足も解消することが出来る。
なので剣技スキルを外して代わりに跳躍を入れておこう。
「それじゃ、狩場に行きましょうか」
「その前にスキル屋で剣技スキル買ってこい」
「あ、そうでした」
リイルをスキル屋に向かわせている間に露店を巡り消耗品を買い足しておく。
必要なのは回復薬と解毒薬か、MP回復薬はまだ足りるか。
お、こっちの露店には面白いのがあるな。
STR強化薬にHP強化薬か効果は面白いけど少し値が張るし今回は見送りだな。
そうやって露店を見ながら時間をつぶしていると。
「お待たせしました」
リイルが走ってやってきた、別にそこまで急がなくてもいいのにな。
「回復薬は買い忘れてないよな」
「はい、買ってあります」
「センちゃん、解毒薬は?」
「大丈夫、用意してある」
「僕も買ってあります」
「じゃあ準備できたなら行くか」
「はい、行きましょう」
「うん、お姉ちゃんはいつでも準備万端だよ」
「・・・・・・」
知らない間にひとりまぎれ込んでいた。
「クル姉いつの間に居たんだ」
「弟居るところお姉ちゃんありって昔から言うでしょ」
そんな格言知らない。
「もしかしてお姉さんですか、初めましてリイルと言います」
「・・・ど、どうも」
クル姉は先ほどの勢いもなくなり俺の後ろに隠れる。
この人は昔から人見知りが激しいからな、だから今までソロだったわけだし。
「従姉のクルクルだ、少し人見知りする人だからほどほどにな」
「はい、わかりました」
「でこっちがリイル。今日はスキルのレベル上げの手伝いをすることになった」
「・・・その、よろしく」
今日はこの三人で狩りをすることになるみたいだな。
今日の狩場は戦都の西側にあるオアシス付近にする。
この辺りに出現する魔物は大型のサソリ魔物の「ビックスコーピオン」と同じく茶色い大型のバッタ型の魔物の「大砂漠バッタ」の2種類だ。
どちらもHPと防御力が高い魔物で武器のスキルレベル上げるにはちょうどいい相手になる。
「この辺りで狩ろうか」
「はい」
「ん、分かった」
まだ少しクル姉が表情が固いけど何とかなるだろ。
リイルが自分が従えている従魔物を呼び出す。
一つ目のカラス型の魔物アイクロウと鬣が炎のようになっているポニー、フレイムポニーの2匹だ。
「リイルは付与魔法使えたんだよな、AGI付与とDEX付与を頼む」
「・・・・・・お姉ちゃんのAGI付与いらないの?」
「・・・リイルはDEXをクル姉はAGIを頼む」
今にも泣きそうな顔でお願いしてくるのは反則だろう。
全員に付与を済ませてから狩りを始める。
まずは様子見として1体だけはぐれているサソリに狙いを付けことにする。
バッタの方は攻撃した魔物以外も反応するからまずはサソリからだな。
「クル姉遠距離攻撃で引っ張ってきてあとは俺が攻撃してタゲを固定。リイルは後ろから攻撃してくれ」
「はい」「分かったよ」
二人からの返事を聞いて早速狩りを開始する。
「風の刃」
クル姉が風の攻撃魔法をサソリに撃ち込んでこちらに引っ張ってきた。
もともと攻撃力の低い風魔法の初級攻撃魔法なのでこちらが一撃でも当てれば簡単にタゲを向けることが出来るだろう。
「斬撃」
早速居合からの斬撃をやってみるが。
流石にまだ刀技スキルのレベルが低いからなのかたいしてダメージは与えられていない。
ソロだったら苦戦を覚悟するところだが今日は3人PT、このままリイルが魔物の後ろに回り込み攻撃を加えてくれればそんなに苦戦は――――
「指令・攻撃」
後ろから聞こえるリイルの掛け声とともに2体の魔物がサソリに飛び掛かり攻撃を加え始める。
アイクロウがその嘴で突っつき攻撃をし、フレイムポニーの鬣が大きく棚引かせその炎で攻撃を加えていく。
こちらも負けじと攻撃を加えていくがやはりまだスキルのレベルが低いため、従魔物が敵魔物のHPの6割ほどのダメージを与える結果になった。
「うん、充分に狩れますね――あだっ!」
「狩れますねじゃないよ」
思わずリイルの頭を叩いてしまったけど俺は悪くないはずだ。
「何しに来たのか忘れたのか、従魔物にやらせているだけだと剣技スキルが何時まで経っても上がらないだろ」
「・・・あっ」
「あっ、じゃない」
おまけでもう一回叩いておく。
「でもセンさんが後ろからって言ったじゃないですか」
「・・・魔物の後ろに回って攻撃してくれって意味だ」
リイルには従魔物2体を仕舞ってもらう。
「・・・うぅ、不安だな」
「俺だけじゃなくてクル姉も居るんだ、大丈夫だよ」
従魔物を中心にして戦う従獣士としては従魔物が居ない状態での戦闘は初めてなのかもしれないがそれでも今回の目的からすれば必要なことなので我慢してもらおう。
「もう一回確認するぞ、クル姉が遠距離魔法で魔物を引っ張て来てもらって俺が攻撃を加えてタゲを固定する。リイルはその魔物の後ろに回り込んで攻撃をする。分かったな」
「はい、分かりました」
改めて狩りの再開、同じようにはぐれているサソリを見つけてクル姉に引っ張て来てもらう。
そいつに攻撃しながらリイルが回り込みやすいように位置も調整をする。
リイルが攻撃を始めたらタゲが移らないように気を付けながら戦っていく。
こうして並べると俺の負担が多すぎる気がするな・・・。
そうしてスキルレベルを上げながら狩りを続けていく、多少のダメージや途中大バッタが引っかかりなどもあり混乱もあったが概ね順調な狩りだったと言っておこう。
順調だったんですよ。
その日のうちに刀技スキルのレベルはLv14まで上げることが出来た。
リイルの剣技スキルもLv9まで上がっている。
やはり武器スキル上げるに適していると云われるだけのことはある。
特に大リンクで数を熟せたのが大きいな。
「センさん、ありがとうございました。これで一度道場に行ってみようと思います」
「レベルは10まで上げなくていいのか?」
「はい、とりあえず門前払いにはならなそうですし」
本人がそれで良いならいいんだが。
「それにしてもセンさんって同じ技能職系なのに強いですね」
「そうかな。確か従獣士ってスキルは従魔物強化系ばっかなんだろ。そのせいで差は出るし、今回は従魔物呼んでないんだからだろ」
「そうですか?でもセンさんも同じように呼んでないわけですから。やっぱり強いですよ」
・・・あれ?なんか今変なこと言わなかったか?
「呼ぶって何をだ?」
「何をって、従魔物ですよ。センさんも同じ技能職系の封札士ですよね、確か技能職系って系統は違うけどどれも魔物を従えることが出来る職業って聞いてますよ。あれ、封札士の場合従魔物じゃなくて確か合魔物でしたっけ」
本人は事も無げに言っているけどもしかして結構重要な情報話してないか?
確かに自分は魅了と封札の合わせ技で魔物を従えてはいる。
けどこれって正しい方法では無さそうだし、何より合魔物なんて呼び方はしない。
もしかしてだけど・・・。
「なあリイル、その話って誰から聞いたんだ?」
「えっと、確かハイジマのNPCで・・・スラなんとかってNPCです」
「もしかしてスランダじゃないのか」
「あ、あーそうですそうです。スランダです」
当たりか。
もしかしたら封札士の新しい可能性が見えたかもしれないな。




