刀技2 再会
「まあ、お主には説明しなければいかんのだろうな」
「・・・出来ればお願いします」
なんだろうスキルを習得に来たのにわからんって言われても。
「わしが技を教えるに当たりある程度基準を設けておる、それこそ武器の扱いが全く出来ないやつには教えることは出来んわけじゃないが難しいからの。そこでお主なんじゃが、お主自身は基準を満たしておるからよいのじゃが振るっている刀がのぉ」
「わからない・・・ですか」
「うむ、刀を見ればそやつがどれだけの修羅場を潜ってきたか解る。刀の熟練度の様なものじゃのう。だがお主の刀の場合それが全く見えんのじゃ。それこそ今この場で打たれ完成した直後の刀と言われても納得してしまえるほどにの、見たこともない刀じゃし」
つまりそれって封札されている為常に新しい状態になっているから先生の言う基準を満たしているか判らないってことか?
あ、もしかしてさっきの飛ばされた人って基準満たしてなかったとかか?
「念のため確認するが、お主この刀で戦っておるよな」
「はい、もちろんです」
それこそサカイプラントゴーレムのようなボスエネミーからマルロを相手にしたようなPVPまでこの刀でこなしている。
求める基準がどれほどかわからないけど門前払いされるレベルでは無いと思う。
「仕方がないのぉ、ここでお主に試練を受けてもらうしかないか」
「クエストですか?」
「うむ、基準に満たして居れば受ける必要のないんじゃが判らんからの。受けてもらうぞ」
「はい!」
「受けてもらう試練は簡単なもんじゃ、要は刀で基準に満たした戦闘を行ってもらえば良いのじゃからな」
そうすると目の前にメニュー画面が広がる。
・刀技の試練
クエストクリア条件
指定の武器を使ってバトルサボテンドールの討伐 0/20
クエストを受けますか?
YES・NO
YESをタップする。
「では試練を受けてもらおう、指定する武器はこいつじゃ」
そういって渡されたのは何の変哲もない刀だった。
・試練用刀
atk+13
分類剣・刀
耐久度 100/100
クエスト用の刀
この刀でバトルサボテンドールってのを倒して来ればいいのか。
「先に注意しておくがその刀を封札すると試練はクリア出来んからの」
「・・・はい、わかってます」
とりあえず今日はログアウトしてクエストは明日にするか。
翌日学校でダイから刀技の試練について質問をしてみた。
「それは使ってる刀の耐久度の減り方や修理回数なんかを見てるみたいだよ、モグッ」
「そうなのか。それよりまだ1時限終わったばかりなのにもう早弁かよ」
「朝寝坊したから朝ごはん代わりだよ、でも確かにそれだと封札士の場合基準の満たしようがないよ」
「そうなんだよな、今回は別の武器借りたからいいけどそうじゃない場合どうするんだ。俺の武器は封札解いたらすぐ壊れるぞ」
「ムグッ、そこは後々考えるしかないよ、もしくは別に壊れにくいのをもう一振り用意するかだよ」
それしかないのかな、でも今の武器結構気に入っているんだよな。
「今のところそういったクエストは殆ど無いから頭悩ませる必要ないよ」
それでも対策は考えておくか。
「チュウタ、それ俺のウィンナー」
「情報料代わりにもらっておく」
「情報出したのこっちだよ!」
帰宅後やることやってからHGOにログイン、戦都の中央にある勇士の像前に出てきた。
バトルサボテンドールことバトサボの場所は確認したし後は消耗品を買い足してから出発。
バトサボは戦都の北側に群生しており普通のサボテンに混じっている。
パッと見は同じ様に見えるがちゃんと見分け方があるらしい。
通りを抜けて北門に差し掛かったところで奇妙なプレイヤーを見つけた。
フード付きのローブ姿で長い杖の様なものを持っているところからおそらく魔法術士であろうそのプレイヤーだが門の前通路のど真ん中に座り込んでいるのだ。
一昔前にあった2DのMMOでなら特に問題のない行為だがVRでは悪目立ちする行為だ。
交通の邪魔になるしね。
周りにいる他のプレイヤーも係りたくないのか必要に目を合わせないようにしているふしがある。
その奇妙なプレイヤーに目を向けていると・・・あ、目が合った。
「!?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・こ、こんにちは」
思わず声を掛けてしまったけど大丈夫だろうか・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フードを深くかぶっているためよく顔が見えないけど物凄く見られてる感じはする・・・。
「えっと・・・それじゃあ行くね」
「あ・・・」
あまり係りあわないほうが良さげだな。
すぐにその場を離れることにした。
場所はハオ砂漠、プレイヤーでの通称はサボテン砂漠と何故か通称のほうが長くなっている場所で刀技スキル習得のため狩場だ。
そして今の自分は絶賛ストーカーされているところだ。
本人は隠れているつもりなのだろうがバレバレである。
何故か先ほどの座り込みプレイヤーが岩に隠れながら付いてきている。
何が彼(彼女?)の琴線に触れたのかは不明だが向こうから危害を加えてこないなら無視しても問題ないだろうか。それともPKでもするつもりなのかな?
警戒だけはしておくべきか。
まあ、気にしすぎても仕方がない。まずは狩りをしながら様子見だ。
バトサボと普通のサボテンの見分け方、それは花だ。
ハオ砂漠のサボテンには全て花が咲いておりその色は2種類ある。
白色の花が咲いているサボテンと赤い色の花が咲いているサボテンの2種類だ。
白い花が咲いているサボテンは通常のサボテンでこちらは生産職の人が来て薬の材料として採集していったりする。
赤い花が咲いているのがバトルサボテンドール。今回のクエストの対象だ。
こいつは常にサボテンのフリをしていて正面から近づくのには問題はないが、一定距離内にいて背中を見せると途端に無数の針を飛ばしてくる。
なので背中さえ見せなければ最初の一撃はこちらから加えることが出来る。
「斬撃」
弱点看破と斬撃のコンボで一撃を当てるとバトサボは一瞬怯んだ後に針を飛ばしてくる。
なので怯んでいる間に射線から外れ攻撃を加えていく。
10回ほど攻撃を加えたら倒すことが出来た。
やはりクエスト用の刀だからな、愛用のガラス刀より攻撃力が低い。
そうしてバトサボを倒していく。
やっと3体目か、少しMP休憩でも入れるか。
「つっ!?」
突然の背後からの攻撃。
先ほどのストーカープレイヤーからの攻撃か?
いや、違う。サボテンドールの針攻撃だ。
おかしい、確かそこのサボテンドールは倒したはずなのに。
考え込んでる時間はない。直ぐ様攻撃をしてきたサボテンドールに反撃を加える。
不意討ちをされたけど、それでも倒せない相手じゃない。
ってヤバい、そういうことか。
1体倒すのに時間が掛かっているから後ろに居たやつが再POPしたのか!
後ろの方からもサボテンドールがPOPした気配がする、挟まれた。
「シュウちゃんに何してるのよー!旋回突き」
前にいるサボテンドールを倒し振り向いた先に見えたのは、ストーカープレイヤーがスキルを使い後ろにPOPしたサボテンドールを倒している光景だった。
「だ、大丈夫だった、シュウちゃん。お、お姉ちゃんが来たからにはもう大丈夫だよ」
シュウちゃんって、その呼び方はもしかして。
「・・・アリセ姉か?」
「うん、そうだよシュウちゃん」
そう、目の前にいるのは従姉の久慈ありせだった。
刀技習得に関しての補足
習得に関してはある程度の基準が設けられており具体的には下記のようになる。
・剣技のスキルLvと刀の熟練度が両方満たしている場合
その場でスキルを習得できます。
場合によっては隠しスキルなども貰えるかも。
・スキルLvが足りず刀の熟練度は満たしていた場合
トウシュウサイから直接指導されます。
卒業するにはトウシュウサイの弟子と対決して勝たなければいけません。
・スキルLvは満たしているが刀の熟練度が足りない場合
刀の熟練度が上げられるクエストを与えられます、センの場合はこれになります。
・スキルLvも刀の熟練度も満たしてなかった場合
そのまま帰されます。
クエストを受けることが出来ません。
・そもそも剣技スキルを持っていなかった場合
投げ飛ばされた後に説教されます。




