刀技
現在自分は皆と別れてひとり戦都バルバロスに向かっている。
理由は簡単、刀技スキルを手に入れるためだ。
今使っている剣技スキルでも問題はないけれど刀技スキルを習得しておいたほうが効果は高いし何より専用の強スキルもあるので早いうちに取ったほうがいいとの判断。
一応ここでもう一度都市について詳しく説明をしておこうと思う。
HGOの世界は二つの大きな丸を南北に繋げた繭のような大陸が舞台だ。
現在実装されている部分はその南側になり大きな都市は4つ存在している。
・中央聖都アーク
南大陸中央に位置しており人族、所謂プレイヤーたちが属している種族の中心都市だ。
様々なクエストやイベントが集まっており、どの職業のプレイヤーでも問題なく活動することが出来る。
・商都ツノハ
ハイジマを除けば尤も南にある都市、商業の中心地。
主に生産職プレイヤー向けの都市だ。
カジノや素材販売店などが軒を連ねている。
・戦都バルバロス
南大陸の西側の砂漠の中に存在しており、主に戦士系の職や武器スキルに関するクエストなどが豊富にある。新しい武器スキルを習得するのにはこの都市に訪れる必要がある。
・魔都マハート
魔法術士のメッカ、都市は森と山に囲まれた天然の要塞と化している。
魔法系スキルを覚えられるだけでなく図書館の本を読むことによって様々な知識系スキルの習得も可能となる。
この4都市がHGOで活動するときに中心となる都市だ。
因みにハイジマのように4大都市に含まれていない町や村は色々なところに点在している。
さて、ここでひとつ疑問に思えるところがある。
その疑問とは。
技能士系の都市が存在していない。
中央聖都には技能士クエストも存在しているけれどそれは他の職業に関しても同じ。
つまり技能士専用の都市と言うのが存在していない。
この疑問の答えになるだろう場所がある。
その場所とは南大陸の最北にある滅んだ都市、「名も無き廃都」である。
公式でも詳しい経緯や歴史などは書かれておらず、ただ廃墟が広がっているだけの場所だ。
おそらくこの場所が自分達のような技能士系職業に就いているプレイヤーにとって重要な場所になるのだろうと攻略組は考えているらしい。
だが実際はβテストの時には何もイベントもクエも存在しない場所で製品版ではどうなっているのか検証を待たれている。
商都から戦都へは街道を歩いているのだがこの街道には魔物が出てこない。
まあ街道を外れれば出現するのだけれど、その場合ランクに合わない強い魔物が出てくる可能性もありここで死に戻った場合また商都からやり直しになる、そんな面倒な事態にはしたくないので大人しく進んでいる。
ついでに言えばこの街道に魔物が出ないと言うのがツノハを商都にしている理由でもある。
都市の位置関係の話を聞けば解ると思うが距離だけなら聖都から戦都、聖都から魔都に一直線に進んだほうが早い。
だがその場合、戦都に向かうには砂漠を魔都に向かうには森を抜けなければならず。
この砂漠と森は天然の迷路になっていたりソロどころかPTで立ち向かっても苦戦するような強力な魔物が居るので安全に行くなら商都経由で進んだほうがいいという話だ。
閑話休題。
なんで今更こんな話をしているかというと・・・。
単純に暇だからです。
そう街道を素直に進む限り魔物は現れずやることがない。
それなのに商都から戦都までの道のりはほぼ一日(平日にIN出来る時間という意味で)も掛かる。
暇つぶしアイテムの一つでも用意しておくか話し相手でも連れてくれば良かったな。
そうして大した事件もなく商都から戦都に到着。
戦都はオアシスを中心に発展しており服装のイメージはアラビアンナイトの世界だろうか。
戦士の都市に相応しい屈強な見た目のNPCも多くいる。
まずは勇士像にて登録を済ませておく。
これを忘れると後々面倒なことになるからね。
さて街の見学もしたいけど先に用件を済ませようと思い目的地でもある「トウシュウサイ道場」に向かう。
その「トウシュウサイ道場」でクエストをクリア出来れば刀技スキルを習得出来るらしい。
目的地にそろそろ到着するだろうというタイミングで・・・。
「この馬鹿者が!!そんな体たらくでワシの技を継げると思うておったのか!壱から出直してこい!」
怒鳴り声と共に扉を突き破り人が飛び出してきた。
もちろん人が怒鳴りながら飛び出してきたわけでは無く、鎧を着たプレイヤーと思われる人物が扉を突き破りながら飛び出してきたのである。
そしてそのプレイヤーの後から壊れた扉を蹴破りながら一人の老人が出てきた。
その老人を一言で表すならサムライだった。
長い白髪を後ろでまとめており、齢60を越えていそうではあるのに腰がまっすぐに伸びていて弱弱しさを全く感じない。
だがなんでアラビアンナイトな砂漠の街に和装の老人が居るんだ?。
「そんなにわか仕込みでワシの前に出てくるでないわ、そもそもだな――――」
老人が説教を始めたが肝心の説教を受けている人物、つまり投げ飛ばされた人は完全に気を失っており当然聞いてはいない。
「こりゃ貴様、話を聞かぬか。まったく最近の若い者は年寄りの話を聞かないもんが多すぎる」
いやだから気を失っているんですって。
「でそこの若いの。お主はなんじゃ」
突然老人の矛先がこっちに向いた。
「いえ、ただの通りすがりです。この近くにあるはずのトウシュウサイ道場ってところに用がありまして・・・」
「なんじゃ、うちに用か」
老人が出てきた建物の門構えには書かれている文字を確認してみると・・・。
トウシュウサイ道場と書かれていた。
ここが目的地らしいな。
まあなんとなく予想は出来ていたけどね。
「それで、お主もワシから刀の極意を習いたいと」
「極意とまでは行きませんが刀技スキルを教えていただきたいなと・・・」
「なんじゃと貴様!!そのような中途半端な覚悟でワシの道場の門を叩こうとしておったのか!」
やばい、もしかして逆鱗に触れたか。
「こっちに来い。その性根を叩き直してやるわ!」
老人に文字通り首根っこを掴まれて道場の中に引きずり込まれてしまう。
・・・どうなるんだろうなぁ。
「まずはお主がどれだけ出来るか確認せんとな、持っている武器を見せてみい」
「は、はい。解放」
老人――――トウシュウサイ先生に言われて刀を解放して手渡す。
連れてこられた場所は典型的な剣道道場っていったところか。
砂漠なので本来なら砂が入って来ていてもおかしくないのだけど何故かそんな状態にはなっていない。
ゲームだからか?
「・・・ふむ・・・ふぅむ」
刀を見たままただ唸っているようにしか見えない。
「お主、封札士か。いや、札から出したのだからそうなんじゃろな」
「はい、そうです。この刀は非常にもろいので封札して使うようにしています」
「なるほどの」
トウシュウサイ先生はこちらを見ながら言ってきた。
「うむ、わからん」
「え?」
えっと分からないってどういうことだろ?




