新装備5 受領
ランキングマッチ。
カジノで行われるプレイヤー同士のPVPマッチのことだ。
内容は簡単でランキングに登録したプレイヤーはランカーと呼ばれ、そのランカー同士が戦い勝てばポイントが入り負ければ減る。
そのポイントを一ヶ月ごとに精算して高位のランカーには景品が送られるというイベントだ。
上位の景品にはレアなスキルや装備品などが上げられるがマイナスで終了した場合それなりにペナルティがあるのはカジノだからと言ったところか。
つまりマルロが要求することとはカジノでの負け分をポイントと言う形で求めてきたわけだが・・・
「お断りします」
当然断らせて貰う。
当たり前の話だがこちらにメリットも無いどころかデメリットもあるし、何より受ける義理も理由も無い。
マルロの言い方は損した責任がこちら側に有るように言っているがそんな物は無い。
少し考えて貰いたい、競馬や競輪などで負けた分の責任を騎手や選手に支払わせるなどあるだろうか?
そもそも根本から主張が間違っているだ。
「――と言うわけだ。分かったか」
まあ多少キツイ言い方になったかもしれないがこちらの主張は概ね伝えることは出来たはず。
あとは相手が理解してくれるかどうかだが・・・
「知るかよ、そんなこと」
どうやら解ってはくれなさそうだ。
取り囲んでいる他の4人は理解出来たのか少しばつの悪そうな顔になっている。
おそらくマルロの勢いに乗せられて付いてきただけなんだろうな。
「そもそもがおかしいんだよ」
「おかしい?なにがだ」
おかしいのはそっちの主張だろが。
「役立たずの封札士が居たのに何で5分切れるんだ。あの時絶対不正が在ったに決まっているだろうが」
「は?」
「だからよ、バグとか何かを使って不正してたんだろ。そのせいで俺等が損したんだから責任はお前にあるだろうが」
・・・・・・・・・そうか
こいつが言いたいことはよくわかったよ
「わかりました、良いでしょう。お話を受けましょう」
「わかりゃいいんだよ」
「ただし、受けるのは勝負を受けるとこまでです」
「あ?どういうことだ」
マルロが怪訝そうな顔をする。
「勝負は受けてやるって言ったんだよ。ただし本気の勝負だ」
一瞬面を喰らったようだがすぐに薄ら笑いを浮かべると
「・・・へっそうかよ。まあ封札士ごときに負けるわけねぇから同じことだな」
マルロは周りに良く聞こえるように宣言する。
「お前等聞いたか勝負を受けてくれるってよ」
「お、おう・・・」
ただし周りの反応はいまいちだ。おそらく最初の説明が尾を引いているのかも知れないな。
「勝負は今からか」
「慌てるな、こっちも準備があるからな。勝負は明日にしてやるよ」
「逃げるなよ」
「こっちの台詞だ」
「困ったな。どうしようか」
「え!?センさん何言ってるの!」
売り言葉に買い言葉。封札士役立たず発言に思わず勝負を受けてしまったが実際の所勝てるかどうかは分からない。
ここでもし負けようものならあのマルロの勝ち誇った顔を見る羽目になるな。
「勝つ自信が有るから受けたんじゃないんですか・・・」
「あははーすごいねー」
今この場に残っているのは自分とヒナゲシとキアの3人だ。
マルロ達はすでに居なくなっていて、キアにはお願いしたいことが有るので残ってもらった。
「負けるつもりは無いけど簡単に勝てるなんて楽観論を言うつもりもないよ。戦いはやってみないとわからないからね」
「それはまあ、そうでしょうけど」
対策は有る、キアもその1人だ。
「それでキア、ひとつ聞くけど」
「なーにー」
「この刀はまだ在庫あるか」
「買ってくれるの、高いよー。と言いたいけど在庫は無し、材料も無いから明日までに用意も出来ないんだ」
それは残念だ。だけどそれはあれば良いかな程度のことなので問題はない。
「とりあえず一振製作依頼させてもらうよ。但し代金は安くね、それで今回の件はチャラにしてあげる」
「ええええ!!」
実はあまり気にしてはいないけど売られた事実はあるわけだから、何かしらの形でペナルティを与えておいた方があと腐れなくなる。
「うー、今回は大損だよー」
「そこは自業自得だ」
さてと次のマルロ対策第2弾だ。
『それで用件ってなんだ』
TEL相手は幼なじみのモンドだ。
困ったときのゲーマー頼みだな。
「実はなりゆきで槍士相手にPVPをやることになってな。その対策の手伝いをしてもらいたいんだが。ミニッツはそばに居るか?」
『PVPね、相変わらず面白そうなことをしているよ。また何か騒動を起こしたのか』
「俺が何かしたわけじゃ無い」
『トラブルメーカーってやつは大抵自覚がないよ。まあいいよ、ミニッツにはこっちから連絡しとくからギルドで落ち合おう』
モンドは人をなんだと思っているんだ。
「とりあえずギルドで落ち合うことになったから行こうか。キア、君にも付いてきてもらうよ」
「はーい、わかりましたー。もうどうにでもなれだ」
「ボクもついて行きますよ。幽霊の様に憑いていきますよ」
商都中央にあるギルドに到着。
このギルドもハイジマと同じで待ち合わせの場所などに使われているため人が多い。
「セン、こっちだ」
そんな人混みの中でも頭ひとつ背が大きいモンドはやはり目立つ。
それに持っている盾も以前より大きくなっているようだ、たしか成長する盾だっけな。
「ミニッツはもう少ししたら着くよ」
「そうか助かるよ」
「あれ?もしかして・・・」
ヒナゲシがモンドを見ながら目を丸くしている。
「もしかして高山先輩ですか?」
「ん?もしかして花房さんか?」
あれ、この反応って・・・
「もしかしてふたりとも知り合いだったりするのか?」
「ああ、俺が通っている道場の門下生のひとりだ」
「あ、はい。習っているのは空手と薙刀術とで違いますけど」
モンドが通っている道場は少し変わっていて師匠でもある道場主が武芸百般を地で行く人で様々な武術を習えるようにしているらしい。
空手や剣術に始まり薙刀、弓術、柔術、合気と習えるらしい。
「まあこのゲームは外見デフォにしてるとそういうこともあるよ」
「いや、珍しいと思うぞ」
そうかふたりは知り合いだったのか。
「ちなみに俺はゲーム内ではモンドって名前だ、改めてよろしくな」
「はい、ボクはヒナゲシです、よろしくお願いします」
場所を少し移動してギルド内休憩所に集まる。
「それで槍士とPVPだっけどういった経緯でそうなったんだよ」
「その辺りの話はミニッツが来てからで良いか、それぞれで話すのも手間だしな」
「それなら今で問題ないわよ」
後ろからミニッツの声が聞こえてきた、相変わらず気配が無いな。
「ミニッツ待ってい・・・たよ」
振り返るとそこには一匹のネコがいた。




