第二の街6 カジノ
タイトルでネタバレ
何故かレトにしがみつかれている俺。
周りの視線が痛い。
「落ち着け、レト何があった」
「・・・すまない、取り乱した」
ホントだよ。
普段は冷静・・・・・・ではないけれどPTのリーダーとして落ち着いたところのあるレトがあそこまで取り乱すなんて一体なにがあったんだ。
「とりあえず何があったか話してくれないか」
「話せば手伝ってくれるか?」
「いや、そのままスイに報告る」
「なんでだよ?!」
なんでって、そりゃあ別れ際のスイとモンドの態度を考えればなにか自業自得なことがあったんだろうと予想できるからな。
「わかった、話を聞いてくれるだけでも良い。とりあえず場所を変えよう、こっちだ」
そう言ってレトは露店通りを離れ裏道の方に向かう。
「そうだ、PTも良いか。あまり周りに聞かれたい話でもないしな」
「わかった、そういえばレト」
「なんだ」
「武器はどうした」
質問に対して気まずそうに顔をそらすレト。
普段から背負っている大きな武器、両手斧が無いのだ。
どうやらこの辺りに何か理由がありそうだな。
「・・・そうだセン、ツノハについてどの程度知ってるんだ」
「あからさまに話逸らそうとしてないか」
「いや、関係あることだぞ」
いまいち信じきれないけど、まあいいか。
「知っていることと言ってもほとんど情報サイトに載ってるようなことだけだな例えば――――」
ツノハは商都と呼ばれるのにはいくつか理由がある。
ひとつは「素材販売店」これはツノハにしかないお店で他の街には存在しない。
ふたつ目はクエストのだ、ギルドではない街の住人から受けるクエストに職業指定のが存在していてツノハでは主に生産職指定のクエストが多いのだ。
ついでにいえば報酬も生産職向けだ。
3つ目の理由は都市の位置関係だ。
HGOの舞台となる大陸は南北に丸がふたつ繋がった、瓢箪の様なもしくは繭の様な形をしている。
実装されているのはまだ南側だけで北側はまだ未実装部分になる。
そして都と呼ばれる街は全部で四ヶ所ある。商都ツノハもその一つだ。残念ながらハイジマは都市扱いにはなっていない。
ツノハは地理上四都市の中継地になっている。
他の3都市になる王都、戦都、魔都の移動するには一度商都を中継したほうが安全なのだ。
そのため人の流れが集まり易く。人の集まるとこでは商売がしやすいと言うことでここで露店を出す人が多くなるわけだ。
主にこの3つの理由から商都ツノハは生産職、商売人の街として認識されている。
「――――っとこんなとこかな」
「意外と詳しかったな」
「一応基本的なとこはサイトでチェックしてるからね」
主に封札士に関係してそうなところ中心だけどね。
「まあ、そこまで分かってるなら話は早い、つまりツノハの特徴ってのは一言で言うとだな」
「一言で言うと?」
「・・・金だ」
確かにそれは間違っていないのだけど・・・・・・もう少し言い方ってものがあると思うんだが。
しかし何でこんな事を言ってきてるんだろうと疑問に思い始めて来た頃のにレトが裏道にある一軒の建物指差し言ってきた。
「セン、あそこが目的地だ」
レトが指で指し示した建物は特にこれといった特徴のない建物だった。
強いて特徴を挙げるならこんな人通りのない裏路地に入り口を構えている事ぐらいか・・・
危険だ、逃げよう。
「そうだ、レト。悪いが用事を思い――――」
「大丈夫だ、すぐ終わる」
逃げ遅れた!
レトに腕を捕まれて引きずられる。
腕を掴んだままレトは扉を5回ノックする、すると扉ののぞき穴から男がこちら側をのぞき込んできた。
「旅のものなのですが一杯のお茶、それと何かお菓子を戴けないでしょうか」
レトがのぞき込んでいる男に言うと男は無言で扉を開けて中に入るように促してきた。
結局レトに引っ張られる形で建物の中に入ることになってしまった。
建物の中は薄暗くそして入ってすぐに地下に向かう階段があった。
「レト聞きたいことはたくさんあるが・・・まず此処はどこだ」
「ここか?ここは知る人ぞ知る秘密のスポットってとこだな。入るためには本来クエストをしなきゃいけないんだが今回のセンの場合PTを組んでたから俺の招待って形だな」
「入り口のやりとりはなんだ」
「あれは入るのに暗号が必要でな、ただ暗号知ってるだけだと入れないぞ。ちゃんとクエストをこなしてないといくらドアをノックしても誰も顔を出さないからな」
基本誰も知らない、薄暗い部屋、入るのに暗号が必要。
どう考えても危険しかないようなんだが・・・
「そう怖がるなって危険は・・・ないわけじゃないが大丈夫だ」
「不安にしかならない言葉をありがとう」
狭く暗い階段を延々と降りていく、おそらく3階分ほど降りただろうか階段が終わり真っ直ぐな廊下になっていた。
その廊下を進んでいくと――――。
華やかな世界があった。
体育館2つ分ほどの広さの部屋がこれでもかと飾り付けられていて眩しいぐらいだ。
明るさに目が慣れてきたので周りの様子を窺ってみるとそこは。
スロット、ポーカー、ルーレット。
様々な遊具があった。つまりここは・・・
「レト、ここってもしかして・・・」
「まあもしかしなくてもカジノだよ」
「やっぱりか・・・」
この時点でレトに何があったのか、何を考えているのか予想がついてきたな。
「確認するけど武器を持ってない原因ってこの場所に関係あるのかな」
「ぅ・・・」
図星か、つまりレトはこのカジノで負けたわけか。
「それでセン手伝って貰いたいんだが・・・」
「断る。無理だ」
レトの頼みは大方予想が出来る。
カジノでの負け分を取り返したいってとこだろうけど基本的にカジノというのは客側が負けるように出来てるものだからな、勝てるのはほんの一部だ。
「カジノでの負け分を取り返してほしいって頼みなら聞けないよ。こっちだって勝つ自信はない」
「いや、頼みたいことはそうじゃない」
違ったのか?だとすると何だろうな。
「まあ博打の手伝いには変わりないんだけどな、こっちだ」
レトの進む先に3人の男がいた。
真ん中の男は小柄だが身なりも良く、おそらくカジノの経営に関わっている幹部(の役割のあるNPC)だろう。
両隣の大男はボディガードかな。
「約束通り来たぞ」
「おぉレトさん待ってましたよ、では約束したとおりに。おい」
小男が後ろの大男に指示を出すと大男がどこからともなく大きな斧を取り出してレトに差し出してきた。
「やっと戻ってきたー」
「ではこちらに」
武器をレトに渡した後小男はこちらに着いてくるように促してきた。
「レトそろそろ何がどうなってるのか説明がほしいんだが」
流されるままにここまで来てしまったけれど、どう考えても厄介ごとに巻き込まれてるとしか考えられない。
「ちゃんと説明してなくて悪かったな、実はセンにしてほしいことってのはこのカジノで戦ってほしいんだ」
「戦う?どういうこと?」
説明不足すぎるんだけど。
「まあセンの予想してると思うが俺はカジノで負けて借金代わりに武器取り上げられちまってな。取り返す代わりにある条件を呑んだんだ」
「条件?」
「条件ってのはこのカジノで経営する闘技場で戦うことだ」
「それに俺は関係あるのか?」
「あぁ、その闘技場で戦う魔物は最低二人で戦わないといけない相手でな、そのパートナーを努めてほしいんだよ」
「はぁ・・・」
ため息をついてからレトに向かってはっきり言い渡す。
「そういう理由なら最初からはっきり言ってくれ騙すみたいに連れてこられても困る」
「最初からはっきり言ったら断られると思ったからな。自業自得の自覚あるし・・・」
目をそらしながら落ち込むレト。
反省しているなら良いか。
「今回だけだからな、次は手伝わないぞ」
「ありがとう!センこのお礼は必ずするからな!」
「あとスイへの報告はするからな」
「そこは本気で勘弁してください!」
大人の土下座は初めて見た。




