表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Heroes Guild Online  作者: ムムム
第二の街
46/100

第二の街

 その後ダイチを宥めてギルド報告まで済ませたのだが報告が終わってからもダイチはクノイにベッタリとくっついたままなのだ、正しい性別的にはセクハラコードでGMコール出来るのだが、そうしなかったのはクノイの良心か。

 結局クノイとダイチの追いかけっこが始まってしまい居なくなってしまったのでトイスと二人でRUクエストをしてその日は終わることになった。



 GBアント討伐の翌日、狩りに出る前の日課として露店通りを散策していると本家忍者のように隠れながら移動しているクノイを見かけた。


「クノイ、何してるんだ」

「ひゃ!あわわ、なんだセンさんか」


 声をかけただけで驚かれた、一体何に怯えてるんだか。


「センさん、今日ダイチちゃ・・・くん見なかった」

「いや、まだ見てないけど」

「そ、そうですか、。それなら良いんだけど」


 いくら何でも怯えすぎの気がするが、あれから何かあったのかな。


「昨日あれから何かあったのか、妙に怯えすぎな気がするが」

「いえ、別に何かあったわけでは・・・そうですね、センさんにはお話しますね。センさんは私が何に憧れて目標にしているかは知っていますよね」

「ああ、くノ一だよな」


 これは改めて説明する必要のないぐらいにクノイが言い続けていることだ。

 何せ名前までそうしているぐらいなのだからね。


「私ってほらこんな容姿でしょ、だから昔からあまり女の子扱いされたことがなくってさ。逆に男の子扱いされたり、女の子からラブレターとかもらったこともあったりしてさ、そのせいなのか私自身はそういう女の子っぽいのに憧れててさ」


 よくある話ってほどでは無いけど解らなくはない、人間は自分に無いものに憧れるってのは昔から言われているからな。


「でも女の子っぽくなる憧れは捨てられなくてさ、そこで知ったのがくノ一って職業なの」


 クノイは夢見る乙女の様な眼をしながら語り続ける。


「知ってるでしょ、くの一って自分の”女”を武器に戦う女戦士って感じでさ」


 女を武器にする。所謂色仕掛け(ハニートラップ)ってやつだな。


「戦士で居ながらにして女の色気も持っている、憧れるよねー。私の理想だよ」


 クノイがくの一に憧れている理由はそれなのか、そうなると少しおかしな部分が出てくるよな。


「なあ、クノイ。聞きたい事があるんだが」

「なんです?」

「お色気くの一目指してるのに格好が地味じゃないかな?」


 そう地味なのだ。一般的にくの一と言えば露出の高い服のイメージがある。

 実際には女忍者という意味もあるので地味めの服でも間違ってはいないのだけど、今のクノイの発言からすると色仕掛け(ハニートラップ)のくの一を目指しているはずなのだが。

 それこそ男の子と間違われても仕方がない格好だったりする。


「えっと・・・実は」

「実は?」

「服は用意してあるんですけどあまりに恥ずかしくて着れませんでした」


 一応目指しはしたんだ。


「だからダイチちゃんの近くには居たくないと言うか苦手と言うか」

「話が繋がってないように感じるが?」


 そういえば話の初めはダイチが苦手って所だよな、それがくの一の憧れ話になって。繋がってないな。


「ダイチちゃん自身は嫌ってないんですよ。苦手ではありますけど」

「まあ、悪い子じゃないしな」

「それでダイチちゃんの近くに居ると自分が女として否定されているみたいで・・・」


 否定って・・・でも何が言いたいのか分かった気がした。


「つまりダイチにコンプレックスを感じてるってことか」

「そうです、そのコスプレックスってやつです」

「一文字違うぞ」


 コンプレックス、劣等感ね。

 クノイは女性である自分より女の子な男の子のダイチに対して劣等感があるんだろうな。だけど本人はそのことにまだ自覚出来てなさそうだ、だから今みたいな中途半端な及び腰の対応になっているのだろう。


「気持ちは分からなくも無いかな、俺も昔似たような時期があったし」

「へー、そうなんですか」


 クノイのとは少し違うけど俺も小学生のころは幼なじみの二人にコンプレックスを抱いていたからな。


「それでセンさんは何のコスプレをしたんですか?忍者?」

「だから一文字違う」



 とりあえず今日は何も予定が無かったのでそのままクノイのRUクエを手伝うことにした。

 剣士のRUクエは比較的簡単な部類に入るクエで依頼を受けてサカイ大森林に魔物を討伐に行くだけだった。


「クエストの難易度に差があるような気がするな」


 実際封札士のクエは3カ所回って最期にボスまで出たからな、何か理由あるのかも知れない。それとも封札士だけ特別難易度が高いのか?



 結局クエスト自体は簡単に終わった。ただしクエストは、である。


「お兄さまーーーー!!」

「ひっ!」


 クエストを報告しようとギルドに向かっている途中でダイチに出会ってしまった。

 出会ってしまったという言い方はダイチがかわいそうかも知れないが、クノイからすればまさにその通りなのだろうか、若干顔が引きつっている。


「お兄様見て下さいこの装備、可愛いでしょ見つけた瞬間お兄様にお目にかけなければと思い買ってしまいました。どうです、似合ってますか?」


 ダイチの装備のフリフリが増えていた、そして恐ろしいことにとても似合っていた。


「・・・あ・・・う」

「お兄様?」

「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「お兄様!?」


 クノイが壊れた。

 今のはクノイのコンプレックスをダイレクトにえぐる行為だよな。


 その後クノイはログアウトをして戻ってこなかった。

 取り残されたダイチに対してフォローするのは俺の役目か・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ