リベンジ3 アントの群れ
「とりあえず、進路から外れよう」
「そうッスね」
「魔物の群れの大移動ですか、何でしょうね?」
40匹もの魔物が群れを成して移動している理由はやっぱりあれだろうな。
「MPKッスかね」
「可能性高いな」
「MPKってなんですか?」
「MPK知らないッスか?」
MPKと言うのは魔物を大量に引き連れて途中に会った別のプレイヤーに魔物の敵意を擦り付ける行為のことだ。
当然、擦り付けられた側はいきなり大量の魔物を相手にしなければいけなくなるため大抵の場合そのまま死に戻るはめになる。
魔物を利用したPK行為、もしくはその行為を行っているプレイヤーのことをMPKと呼ぶ。
「もうそろそろしたらそのMPK野郎がこの前を通るはずッス」
「ふむふむ」
トイスの言った通りに遠くから誰かが走って来るのが見えてきた。
「だれかーたすけてー!」
大量のブロックアントに追いかけられているのは杖を持った少女だった。
必死にブロックアントから逃げている。
「あれがMPK?」
「いや、トレインだな」
トレインはMPKと違い故意ではない、尤も同じように周りに迷惑を掛けてしまうと言うところでは同じなのかも知れない。
「MPKじゃないなら助けないと」
「へ?」
「ちょっと待て」
「今助けるよ!」
止める間も無くクノイが飛び出していってしまった。
不味い、いくら何でも40匹近くのブロックアントを相手に出来ないぞ。
「火遁の術、火炎玉」
クノイの手から火の玉が飛んでブロックアントの先頭に当たり燃え上がる。
ただし前に居た2~3匹が少し焦げただけで倒せていない。
いくらブロックアントの弱点が火属性だとしても専門家の火魔法術士でも無い、ましてや戦士職であるクノイの魔法では倒せるほどダメージは通らない。
クノイの攻撃でブロックアントの一部の攻撃対象がクノイに変わった為攻撃を受け始めた。
「仕方がない、トイス行くぞ」
「うへー、しょうがないッスね。死に戻り覚悟ッスか」
クノイが少女を庇う様に立ち回り少女も助けが来たことに安心したのか座り込んでしまっている。
先ずは少女に対してPT申請を送る。
「助けるからまずPTに入ってくれ」
でないとペナルティが発生するしサポートも出来ないからね。
「は、はい」
<ダイチがPTに加わりました>
これで良し、ブロックアントとの戦闘に入っているクノイの助けに向かう。
AGIにステータスを振っているからか3匹ほど相手にしていてもうまく避けている、しかし敵は前面だけでなく回り込み横からや後ろからも攻撃を加えようしている。
「やらせないッス、衝撃矢」
「こっちもだ、斬撃」
回り込もうとするブロックアントをトイスと二人で何とか押さえ込みクノイの横に並ぶ。
これで前線の確保は出来たか、しかし多勢に無勢いずれじり貧になるのは目に見えているな。
「ほら、君もやるッスよ」
「う、うん。大地突針」
ダイチのスキル発動に1拍遅れて地面から針が生えてきてブロックアントの1匹を串刺しにする。
土魔法術士か。
「クノイと俺で前線を維持する、トイスはサポートを頼む、ダイチは兎に角スキルで数を減らして」
遅ればせながらも指示を出す、PT戦の場合は意思を揃えておかないと簡単に瓦解する。
MPKを知らないクノイはMMO自体初心者なのかもしれなしダイチもおそらくそうなのだろう。
ならば簡単にでも指示を出して動きを揃える必要がある。
目論み通り指示を出してからの二人の動きは良くなってきているな。
クノイは無理をせず回避に集中してHPの損耗を抑えているし、ダイチも落ち着いて1匹づつ確実に倒している。
「こっち来るな刺突刃」
「右危ないよ斬撃」
「任せろッス衝撃矢」
「地弾倒れてくださいー」
終わりが見えてきた。
後10匹ほどだ、手持ちの回復薬ももう底を着きかけてるけど何とかなりそうだ。
「もう一息だ、いけるぞ」
「もうMPがヤバいッス」
「残り10匹だー」
「は、はい」
残り僅かそう考えた瞬間生き残っていたブロックアントが一斉に離れていった、これで終わりか。
「何でしょうか」
「逃げていく?」
ある程度離れたブロックアント達が穴を堀始めた、これは逃げの演出か。
「終わりッスかね、疲れたッス」
「そうだねー」
「あうぅ、ありがとうでした・・・」
3人はもう終わったモノとして体を休め始めている。
でも何か嫌な予感がするんだよな・・・
ブロックアントが掘っている穴がある程度の大きさに成ると中から何か音が聞こえてきた。
「なんッスか」
「音?」
3人も気付いたようだな。
音が次第に大きくなっていきそして・・・
穴の中から大量の土砂と共に牛ほどの大きさのブロックアントが飛び出してきた。
フィールドボス:ジャイアントブロックアントの登場である。
「・・・これは」
「マジッスか・・・」
「えっと・・・」
「うぇぇ・・・」
全員絶句である。
ここに来てのボスは勝てないだろ。
「全員逃げるぞ!」
「何やってるんッスかセンさん速く逃げるッスよ」
3人とも既に逃げていた、置いていくなー。
しかし逃げた先にはブロックアントが道を塞いでいる。
「逃げ道ないッスね・・・」
トイスの言うことは正しく、どうやらブロックアントの群れに周りを囲まれて逃げ道が無くなっているようだ。
「これは戦えって事だよな」
「勝てるのかな」
「逃げ道ないならやるしかないッス」
幸いにして囲んでいるブロックアントは攻撃してくる気配はない、戦闘が始まったらわからないけどね。
「ギチギチギチッ」
ジャイアントブロックアントがこちらをターゲットしたようだ。
大丈夫だ、4人での連係も上手く行っている勝てる見込みは充分ある。
「倒すぞ!」
「了解ッス」「行きます!」「は、はい」
全員死に戻りました。




