ランクアップ4 合成魔物
全ての魔物を封印し終わり再び倉庫地区スランダ倉庫前へ。
「これを渡せばクエストクリアなのかな」
「代わりにクエストクリア証明書ってアイテム渡されるからそれをギルド持っていって終了よ」
そうなると次に考えるのは開いたスロットに何のスキル入れるかだな。
倉庫前に到着し戸を叩きスランダさんを呼び出す。
「はーい、開いてるので勝手にどうぞー」
中に入りスランダさんを捜す、雑多な物があふれているので捜しづらい。
奥からスランダさんが物を除けながら出てきた。
「えーと、どちら様ですか?」
「・・・ギルドの依頼を受けていたものです」
「あ、あーそういえば、待ってましたよ」
絶対忘れてただろ。
「では札をこちらによろしいですか」
「どうぞ、確認してください」
札を受け取るとしきりに何かを確認している。
しばらく待ち、3枚とも確認を終えると話しかけてきた。
「はい、確かに指定した魔物が封印されていますね、それでは証明書を渡すので少しお待ち下さい」
札を持ったまま奥の机に向かおうとするが途中で何かを考えついたようでこちらを振り向きながらいってくる。
「そうだ、ついでにこの札を使った実験でも見ていきますか」
言われた瞬間いやな予感がしてきた。
「ねえ、なんかいやな予感するんだけど」
「奇遇ね私もよ」
二人とも同じように感じたらしい。
こちらの様子も意に介さずにスランダさんは人が入れるほどの大きさのガラス管の前まで来ている。
3枚の札をガラス管前の箱にセットしてスイッチを入れた。
「私の実験てのはですね、遙か昔前時代魔法文明の在ったとき存在していた合成魔物を作り出すってものなんですよ。魔物を作るって聞くと危なそうですけど合成魔物は人の役に立つように作られた魔物の事でしてね」
スイッチを入れた後にまた証明書を取りに奥に語りながら向かうスランダさん。
しかし俺たち3人は別の物に目が向かっていた。
例のガラス管の中には液体が入っていたらしく水泡が浮かんでいる。
その水泡に隠れるようにしてガラス管の中に何かが出来上がってきていた。
成人男性より一回り以上小さい子供のような体躯。
大きく開き鋭い牙の生えている口。
頭の上に立っている大きな耳。
極めつけは背中に生えた大きな翼。
つまり捕まえてきた3体の魔物の特徴を持った何かが出来上がろうとしていた。
「これって完成品見せられて終わりじゃないですよね」
「たぶんね」
「あの前って戦いやすそうな空間が出来てるわよね」
ミニッツの指摘通りガラス管前には何もない。
そうか、このための空間だったんだ。
「つまり前時代魔法文明では合成魔物をペットの様にかわいがる富裕層も存在し」
証明書を探してるのか机の上を漁りながらも口は止まらない。
その間もガラス菅の中の合成魔物も完成に近づいていく。
そして、ガラス管の中の魔物が大きく動いた瞬間にガラスが大きな音を立てながら割れて中の液体と共に魔物が姿を表した。
狼の頭をした翼の生えたゴブリンだ。
それ以外の特徴としては爪が長く、皮鎧程度なら簡単に引き裂けるだろう。
「わわわ、なんですか?一体」
スランダさんは音にビックリしたのかその場で腰を抜かして座り込んでしまった。
魔物は割れたガラス管の前で周りを見回している。
「ミニッツ、スイ行くよ」
「ええ、分かったわ」
「行きましょう」
「ちょっと待ってください」
止めたのは腰を抜かしているスランダさんだ。
座り込みながらも戦闘態勢に入っている俺たちに制止を呼びかけてきた。
「先ほども言ったとおり合成魔物はおとなしくて人に危害を加えられないように出来ています、大丈夫ですそんな警戒しないで下さいよ」
そうだったらいいんだけど、そうじゃないんだろうな。
「かしゅっかしゅっ・・・かしゅ」
妙に空気の抜けたような鳴き声をさせながら合成魔物が手を振り回し周りの物を壊し始める。
一頻り壊した後魔物の視線はスランダさんに向けられている。
「あれ?え、えっと」
「危険なので排除します、良いですね」
返事は聞かない緊急避難ってことで済ませよう。
「二人とも改めて行くよ解放解放」
暗闇剣と魅了ウルフを解放して戦闘に備える。
ミニッツは銃をスイは杖をそれぞれ構えた。
「付与器用」
「斬撃!」
まずは先制攻撃、斬撃の一撃を加える。
これによって合成魔物の敵意を自分に向ける、後ろの二人に攻撃はさせないよ。
それに合わせて魅了ウルフも攻撃を始める、指示が出せないので勝手にやらせておく。
「かしゅしゅ」
独特の鳴き声を発しながら爪を振るってくる、剣でさばきながらまずは前線の維持。
合成魔物の攻撃は爪がメインらしく振り回している、大ぶりなので回避はしやすいが恐らく威力は高そうだ。
躱し、剣で受け流しながらこちらに注意を向けさせる。
「付与暗闇、精密射撃」
ミニッツが暗闇付きの銃スキル攻撃で合成魔物の腕を狙う。
銃は現実とは違いそこまで威力は高く無い。
その代わり腕や足などに当たった場合一時的に攻撃不可や移動不可などのバッドステータスが付くことが在る、呪術付与との合わせ技でとことん相手の動きの邪魔をする構成になっているようだ。
「バステにはならなかったみたいね」
もっとも今のミニッツでは呪術もバステも確率がかなり低いみたいだけど。
「水流弾」
スイの杖から水の弾丸が飛び合成魔物に当たるが水魔法自体威力が低い魔法なのでほとんどダメージが与えられてない。
もしかして3人そろって攻撃力が低いのか。
「本命はこっちよ、雷撃弾」
スイの杖から飛んでいく雷の弾丸がを当たると同時に大きな音を立てながら合成魔物が感電する。
「ふふん、一度水に濡らしてからの方が威力が上がるのよね」
今の一撃で合成魔物のHPを大きく削れたようだ。
しかしそうなると次に起こるのは。
「かしゅーっかしゅー」
敵意が一気にスイに向かい攻撃対象にされてしまった。
直ぐさまスイと合成魔物の間に入り攻撃を加える。
この場合ウルフが間に入ってくれれば一番いい盾なのだが命令出来ないので勝手に攻撃させておく。
「スイには攻撃させないよ」
執拗にスイを守りながら合成魔物の攻撃を捌く。
本来封札士にはタンク役は向いてないんだけどな。
「足を狙った方が良さそうね、精密射撃」
ミニッツの弾丸が足に当たり膝をついた。
どうやら移動不可になったらしいので一度離れる。
「今がチャンスね、雷撃弾」
「こっちも二弾射撃」
遠距離があるとこの場合楽でいいな、次のスキルは決まりかな。
移動不可が解けたのか再び立ち上がり向かってくる。
しかし先ほどの攻撃で合成魔物のHPはほとんど残っていない。
「これで最後、斬撃」
「かしゅぅううぅぅー」
斬撃を受けた合成魔物が消えていく。
これで本当のクエストクリアだな。
クリアだよな?
感想でよく聞かれる質問の回答です。
消耗品や弾丸、矢などを封じても使えば無くなります。
封印で固定されるのは変化(状態異常、武器の劣化など)だけで消耗には対応していません。
なので消耗品を封印しても意味がないです。




