ランクアップ3 ラッピングバード
3人で倉庫を出たところでスイが話しかけてきた。
「それで対象の魔物ってなに?」
「えっとショッシン平原のグレタウルフ、パッティの森のパッティゴブリン類、サカイ大森林のラッピングバードこの3種だね」
「ラッピングバードね、厄介なのが対象ね」
「やっかい?」
「ええ、通称魔法士殺しよ」
「ずいぶん物騒な通称ね」
「ラッピングバードは羽と体で顔を包み込んでくる鳥なのよ、そうなったら視界が塞がれて暗闇状態と口を塞がれての沈黙と息が出来ない事でのDoTダメージよ」
暗闇、沈黙、DoTダメージって3つもバッドステータスを付けるのか。
「HP自体は低いから顔に張り付いてる状態の時に攻撃して倒せば良いんだけど、魔法士は物理攻撃力が低いから倒すのに時間が掛かってね」
「その間ずっと張り付いてるわけか、魔法士殺しってよりいじめや嫌がらせの類いだな」
3人居るしそもそも封印するのが目的だからなんとかなるかな。
「どちらから回ろうか」
「そうね、ウルフ、ゴブリン、バードが定番の流れになるのかしら」
「バードから選択してレト達と合流も出来るよな」
「そうね、でもそこまで考えなくても良いんじゃ無いかしらそれこそ指運で決めても問題ないわよ」
「一応サイトにも載せるから定番の流れで行きたいわね」
「それならウルフからだな」
最初の対象グレタウルフを封印するためまずは南門に向かう。
初心者ソロ向け狩場ショッシン平原。
まだサービスが始まったばかりなので人も疎らながら居る。
「この辺りでやりますか」
「ウルフだしここは手伝い必要ないかな?」
案の定ウルフは一発で封印が出来た。
「もしかしてRUクエストって簡単なのかしら?」
「まあ一番最初のだしこんなもんじゃないかな」
「甘く見ない方がいいわよ」
楽観的に考えてる俺たちにスイが釘を刺してくる。
「このゲームってたまに意地の悪い所があるのよね、楽に見せかけて最後に落とし穴ってみたいに」
「そうだな、警戒しすぎは疲れるだけだけど甘く見すぎは痛い目を見そうだし」
「そうね、まだ1匹目だし、まだわからないわね」
次の目的地は東門の先にあるパッティの森のパッティゴブリン。
「これパッティゴブリン類ってなってるけど、何でもいいのかしら?」
「そこは俺も疑問に思ってた、封印した種類で報酬変わるとかかな?」
「そこは確認したいけど一回しか受けられないのよね」
「もうひとり封札士の知り合いいますから何ならお願いしてみましょうか?」
「ホント、じゃあお願いしていいかしら」
「まだ受けてなければですけど、連絡はしときますよ」
というわけで今回は浅瀬の無印ゴブリンと呼ばれるパッティゴブリンを封印しておく。
ついでにアンズにメールを入れておく。
すぐに返事が来た、どうやらまだRUクエは受けていないようだ。
なのでクエストに同行したい事を伝えておく。
ここまでは問題無く順調だ。
3カ所目サカイ大森林。
1番目の町ハイジマと2番目の町ツノハの道を塞ぐ自然の要塞。
実際に抜けるためには道を塞いでいるガードボスを倒す必要がある。
まだそこまでは行かないが近いうちに進めたいな。
「そういえば俺、サカイに来るの初めてだな」
「あら、そうなの」
森はパッティの森より木々が生い茂り先がわかりづらくなっている。
魔物の強さはパッティゴブリンより一段以上強いと聞くし少しばかり不安だ。
「そう身構える必要は無いわよゴブリンロードと事を構えられるぐらいのLvなら問題ないわ」
「そうよ、それにセンには私が付いてるんだからね」
「そこは私達って言っといてほしいんだけど」
スイの訴えにミニッツはそっぽ向いてしまった。
もしかしてミニッツはスイのことが嫌いなのか?
妙に敵対心のようなものを出してる時がある。
「兎に角進みましょう、ラッピングバードはどの辺りにいますか?」
「案内するわよ、こっちよ付いてらっしゃい」
スイの先導で森を進む、少し奥まった処が目的の場所らしい。
「この辺りで出るはずよ、上の方に注意しといてね」
鳥だから上から飛んでくるのか。
暗闇剣を解放して木の上などを警戒しておく、しばらくすると羽音が聞こえてきた。
「来たわよ、構えて」
右手に剣を左手に札を構える。
そこに飛んできたのは黄色く大きな羽をした鳥だった。
って速い!
「封印って外した!?」
封印を発動させたが素早く札の効果範囲外まで逃げられてしまう。
そもそも速すぎて対象に取ることも一苦労だ。
こいつ捕まえられるのか?
封印を外し無防備になった俺に向かってラップングバードが一直線に向かってくる。
「あぶない!」
ミニッツが拳銃をラッピングバードに向けて撃つ。
しかしまだ銃技スキルの低いミニッツの腕では当たることはなくあっさり躱される。
だが銃の攻撃により敵意がミニッツに向かったらしくラッピングバードがそのままミニッツの顔に張り付いた。
「むぐっむぐぐっ」
「ミニッツ今助けるぞ」
銃声が3発森の中に響く。
ラッピングバードが音を立てて落ちる。
「顔に張り付いた所を攻撃すればいいのよね」
「あ、あぁ」
たしかにその通りだがミニッツ、いくら魔物越しとは言え自分の顔に向かって躊躇せずに銃を撃つなよ。
流石に引くぞ。
「倒しちゃダメでしょ、封印するんだから」
「あ・・・しっぱいしちゃったごめんね」
上目遣いに謝ってくる、ちなみに両手は軽く握ってから口元だ。
ミニッツあざといよ、けどかわいいから許す。
「次のラッピングバードを封印すれば問題なしだ」
「そうね、それで問題なしよ」
もう元の無表情に戻ってる。
「あなたたちって・・・」
スイが何か言いたそうだけど気にしないでおこう。
しばらく待つと羽音が聞こえてきた。
次こそ封印するぞ。
「封印」
また外された。
もしかして顔に張り付いてないと封印出来ないのか。
なら顔に張り付くのを待つか。
先ほどの封印が攻撃と認識されたのでラッピングバードがこちらに向かってくる。
そのまま顔に張り付かせ封印だ。
「むぐっ」
予定通り顔に張り付いた、このままスキルを・・・あれ。
しまった、声が出ないからスキルが発動できない!
「むぐぐ、むうぐぐ」
「どうしたのセン君、封印を」
「もしかして口が塞がってるからスキル使えないんじゃあ」
「むぐむぐっ」
右手に持っていた剣でラッピングバードを攻撃して倒す。
「ぜぇぜぇ、意外な盲点だった」
「最初に気付くべき点だったかもね」
「・・・・・・」
全員気付いてなかったんだから同罪だ!
仕方ないので作戦はミニッツかスイの顔に張り付いたら封印を掛ける事に決まる。
その後スイの顔に張り付いたラッピングバードの封印に成功し帰りながらの検証だ。
「これって封札士のソロだとクリアできないんじゃないですかね?」
「そうね、手伝いがいれば簡単だろうけどソロだと難易度が格段に上がるわね」
「てことは書き込むときは要手伝いって書いといた方がいいですね」
「それも窒息しても文句を言ってこないような人のね」
難易度が高すぎますよ。
ともかく3種の封印完了これでクエストクリアかな。




