ランクアップ
今日はモンドとミニッツもログインしている。
課題無かったしね。
初日に待ち合わせ場所にしていた雑貨屋前に集まる。
「揃ったよ、今日どこに狩りに行こうか」
「それもそうなんだがミニッツ武器変えたのか?」
「ええ、銃にしたのよ」
ミニッツの武器が杖から拳銃に変わっていた。
理由を聞いてみると。
「呪術付与を最大限に使う為よ、他人の武器に付与するのは難しくてなかなかLvが上がらなさそうだから自分の武器に付与するようにしたのよ。これならLv上げもやり易くなるわ」
「なるほどね、確かに装備に触れてなければ発動出来ないスキルなら自分が持っている武器に掛ければいいわけか」
「ええ、ただ欠点も有るのよね。杖を装備してないから効果が弱まっちゃって魔法の掛かりが悪いのよ」
つまり杖装備なら効果が高いが使いづらく、銃なら使いやすいが効果が低いとなるわけか。
「一番の理想は杖持って近接戦闘をすることなんだけど無理なのよね」
「そうだね、出来る人は居そうだけどミニッツは無理だよね」
なにせミニッツは運動神経が壊滅的に悪いのだ。
一応VRゲームなのでリアルの運動神経がそのまま反映されているわけでは無いけれど、それでも無関係ではない。
「ソロとか少数のPTでは銃を使ってボスクラスの相手では杖を装備するようにするわ」
「使い分けるのか、そうなると杖技スキルと銃技スキルを両方上げていく事になるのか大変じゃない?」
「そうね、でもその方が面白そうじゃない」
判断の基準が面白そうかそうでないかか、ミニッツらしい。
「二人ともちょっといい」
今まで会話に参加していなかったモンドが声を掛けてきた。
「ミニッツには紹介したけどテスター時代の人達もログインしてきたよ、センも紹介したいから行こうか」
「そういえば初日に紹介される筈だったんだよな」
封札士の性能を知りたくていきなりソロで始めちゃったからな。
紹介してもらえるならしてほしいな。
「それじゃあ、ギルドに向かうよ」
町の中央に位置するヒーローズギルドだ。
周囲の建物よりも一回り大きく立派な造りをしている。
ここギルドはクエストの受注以外にもPT募集時の待ち合わせ等にも使われているので常に人が溢れている状態だ。
今も周囲にはPTを求める人やアイテムトレード等を行っている人達で賑わっている。
「あの人達だよ」
そうモンドが指し示した先には4人の男女が居た。
向こうもモンドに気付いたらしく手を振ってくる。
「お待たせレト」
「こっちも今揃ったばっかだ、おうそっちのヤツが例の封札士か」
「初めまして、封札士のセンです」
「おう、俺は斧士のレトだ。ヨロシクな」
「私はスイよ、初めまして」
「自分はトイスと言うッス。ヨロシクッス」
それぞれ自己紹介をしてくれるメンバー。
しかし一人だけ何も言わずこちらをじっと見つめている子が居る。
「・・・やっぱりそうだ」
「え?」
なんだろう?知り合いだっけ
「この人だ、間違いない」
「何か知ってるのか?」
「昨日剣士と封札士がPVPをやって封札士が勝ったって噂が流れてたでしょ」
「ああ、大半のヤツはデマ扱いしてたけどな」
「デマじゃないよ、私見てたもの。それにその封札士さんってこの人だよ」
見られていたのか。
まあ派手にやったからな知られていてもおかしくないよな。
「ほぉ、そうなのか?」
レトが確認を取ってくる。
隠す気もないし話してもいいかな。
「ええ、多分その噂の封札士は俺の事で間違いないかと」
「ほらね、嘘じゃなかったでしょ」
何故か自慢気に胸を張る少女。
「そだ、まだ自己紹介してなかったね。私はクノイ、ヨロシクね」
「ああ、よろしくな」
「しかしクノイが嘘ついてるとは思っちゃいなかったが実在したとはな」
「まったくね、あなた私の目の届かない所で何してるのよ」
「なんと言うか、成りゆきで」
実際には自分から喧嘩売った形なんだけどね
「それで封札士って剣士にPVPでも勝てる性能なわけなの?そこのとこ詳しく知りたいのだけど」
質問しながらグッと顔を近付けて来るスイさん。
うっ・・・胸が大きい。
「っ!」
後ろから急に痛みが、振り向いたら冷たい目で見つめてくるミニッツがいた。
妙な威圧感を出しながら俺とスイさんを見てくる。
何かを察したのか一歩引いてくれた。
「あら、ごめんなさい。近付きすぎたわね」
「いえ、別に」
「それでどうなの?封札士のスキルは?」
「落ち着けスイ。また悪い癖が出てるぞ」
「悪い癖?」
「こいつはなんと言うか知りたがりでな、兎に角情報を集めたがるんだ」
「あら、悪い癖なんて言わないで欲しいわね。それに情報が正しいと判ったらサイトにも載せてるし、有益な趣味って言ってちょうだい」
つまり俺の情報がサイトに載る訳か、何時かやろうとしてたことだし慣れてる人が代わりにしてくれるならそれもいいかな。
「分かりました、封札士についてわかっている所まで話しますね」
「お願いね」
そうしてスイさんにわかっている範囲で伝えていく。
「へぇ、封札士って予想以上に色々出来るのね」
「そうですね、応用範囲は広いですよ」
「スキル封印って魔物相手でも出来る?」
「さあ、まだやってないので何とも」
「おい、そろそろ終わりにしてくれないか」
「そうだよー狩り行こうよー」
少し話しすぎたかな、最初もの珍しく聞いていた他の人達も流石に飽きてきちゃったみたいだ。
逆にスイさんはまだ物足りないって顔してるけど。
「スイ、今日はそのぐらいしとけ。話聞けるのは今日だけじゃないんだから」
「分かりました、スイさん続きは明日にしましょう」
「仕方ないわね。それとセン君、私の事はスイと呼びなさい。さん付けは嫌いなのよ魚になったみたいで」
「それでレトさん今日は何するよ」
「実はギルドポイントが貯まったんだ、だからランクアップクエスト手伝ってほしいんだが」
「もう貯まったんですか、さすがにレトさんッス」
ランクアップクエスト。
HGOの職業にはランクがあり最初はランク1からだ。
ギルドの発行するクエストをクリアしていく事によってギルドポイントが貯まり一定のポイントに達するとランクアップクエスト通称RUクエストが受けられるようになる。
ランクアップすれば最大HPMPの上昇
各種ステータスの上昇
職業スキルの効果上昇
スロットの開放
スロットスキルLvの最大値の上昇
販売スキルの種類増加
主にこのこれだけの特典がある。
特に大事なのはスロットの開放だ。
ランクが1だとスロットが5箇所しか開いていない。
1ヶ所増えるだけでやれる事が増えるのだ。
ちなみにランクの最大はランク9。
そして3から4、6から7に成るときに上位職に転職になり、その時はスロットが2つ空く。
最大で15個のスロットが空くことになる。
以上公式サイトより
「それで斧士のRUクエストの内容ってなんなの?」
「サカイ大森林のグリーンベアだ、こいつを10体狩ればいいみたいだな」
「それなら私たちもサカイでやれるクエを受けましょう」
レトさんがクエストを受け、自分たちもサカイのクエストを受けようと並ぶ。
そして順番が来てクエストを受注しようとNPCに声をを掛けると。
「セン様でいらっしゃいますね。少々お待ちくださいませ」
あれ?なんか反応が違うな。
「はい、確認しました。ギルドポイントが規定値に達しております、ランクアップクエストを受注されますか?」
え?なんで?




