森へ2 幸運
東門に着くとモンドとミニッツが待っていた。
「お待たせ」
「そんな待ってないよ」
「気にする事ないわ」
相変わらず寛容な幼なじみ達だ。
「紹介するよ、こちらは薬士のヤクミチだ」
「よろしくな、PTに参加させてもらうぜ」
「モンドだよ、戦盾士だよ」
「ミニッツよ、呪術士をやってるわ」
「おう、よろしく。そういえばセンの職業聞いてなかったな、剣士か?」
そういえば伝えてなかったな
「いや、封札士だ」
「そうか、よろしくな」
対応が少し軽いな。
別に言われたいわけじゃないが何かしらの文句でも言われる覚悟は合ったんだが。
「あん、PT参加させてもらってるのに文句言うわけないだろ。そもそも封札士叩いてる連中なんて一握りだよ、ソイツらだって面と向かって文句なんて言ってこねえよ。言えねえからああやってサイトに書き込んでるんだからな」
意外と悪い立場って訳じゃなさそうだな。
いや性能が低いことには変わりないんだろうけどな。
「それじゃPT組んで森に出発しようか」
パッティの森。
ハイジマの町の東門から出て5分ほど歩いた所にある狩場だ。
北側に存在するサカイ大森林とも一部繋がっているため魔物のLvは平原のスライムやウルフより一段階も二段階も上になる。
その森の入り口が目の前に存在していた。
「流石に迫力だな」
「そうね、私もVRだって事を忘れちゃったものね」
独り言に対してミニッツが返事をしてくれた。
この幼なじみは何時もこんな感じだ。
常にこちらを気にしてくれているような。
「森に入るよ、周囲を警戒してね」
森に入ると言っても道がありその道に沿って歩いていく。
ダイを先頭にヤクミチ・ミニッツと並び最後尾に自分が着く。
ゲームだと強い順に並んだりするがVRではそこはリアルに作られていたりする。
後ろから不意討ちなんて平気でくる。
実際ウルフに不意討ちされたしね。
「そろそろ蜂が出る辺りだよ」
ダイが周りを確認しながら道を外れ森の奥に入ろうとする。
「ちょい待ち、スキルを使うぜ」
「スキル?」
ヤクミチが宣言と共にスキルを発動させる。
「幸運強化」
ヤクミチも含めた全員が一瞬だけ白く光る。
どうやらヤクミチのスキルが発動したみたいだけど、幸運強化?
HGOには幸運なんてステータスは無かったはずだけど。
「ヤクミチ、今のスキルは一体なに?」
「ふふん、今のは俺がコンバートしたレアスキルだ」
「コンバート?ヤクミチさんはβテスターだったよ?」
「ヤクミチでいい、さん付けなんて柄じゃねえよ。俺は元斧士だったんだがな、こいつを手に入れたのを切っ掛けに製品版では薬士にしようと決めたのさ」
「効果が気になるわね」
「こいつの効果はアイテムのドロップ率アップだ、とりわけレアアイテムのな」
そいつはすごい。
オフゲームでもそうだが、オンラインゲームでのレアは本当に出ない。
そのレアドロップ率を上げられるスキルなんてとてつもない価値が有るぞ。
「薬士の使う素材はモンスターからのドロップが多いからな、俺はこのスキルで金持ちになる!」
「確かに薬士と相性いいスキルだよ」
「さあ、これでレアアイテムザックザックだ」
ヤクミチのスキルを受けてから改めて森の奥に入る。
しばらく進むと少し拓けた場所があり3匹の蜂が飛んでいた。
蜂は中型犬ほどの大きさだ。
針に刺されたら痛いで済みそうには無い。
「さあ、行くよ」
モンドが気負いも無く蜂に対して向かっていく。
蜂がモンドに気付いたらしくこちらに向かってきた。
「暗闇」
「封印」
俺とミニッツでそれぞれの蜂に対してスキルを発動させる。
封印は失敗したけど暗闇は成功したようだ。
蜂の一匹の顔に暗闇がかかり明後日の方向に飛んでいく。
「敵意操作こっちに来い」
モンドのスキルにより残った2匹がモンドに攻撃を加え始める。
その間に俺とヤクミチは蜂の後ろに回り込み剣で攻撃を加える。
「麻痺」
ミニッツも魔法で援護してくれる。
モンドが魔物を引き付け俺とヤクミチで攻撃ミニッツが無力化する。
そうやって3匹の蜂を狩る。
結果手に入ったアイテムは
・蜂の複眼×2
・蜂の針×3
「いやほらまだ3匹しか狩ってないし、あくまで確率上昇だしスキルLvも低いんだよね」
わかってますよヤクミチ、そこまで慌てなくていいですよ。




