新メンバー5 レイドバトル
大きな音を立てレムが吹き飛ばされる。
軽く10メートルは飛ばされただろうかピクリとも動かない
「おい、奴を見ろ!」
レトの声でハッとなりニードルタイガーの方を向くとそこにはレムが最初に盾を構えて立っていた場所で足をふら付かせている大虎の姿が在った。
「頭の針が一本折れてる・・・成功しやがったんだ」
レトの指摘通りニードルタイガーの頭から背中にある大量の針の内の一本、頭の部分にある針が折れていた。
つまりFAブロックは成功したという事だ
「ガアアァァァァァァァ!!」
「やばい!モンド、守れ!」
「解ってるよ!敵意操作」
耐えられたとは言えあれだけの攻撃を受けたんだ、衝撃で暫く動くことも出来ないだろう。
レムを守る為モンドが即座に倒れているレムとニードルタイガーの間に入りスキルで自分に攻撃を向かわせようとする。
だがモンドのスキルでも完全にヘイトを奪うことは出来なかったようでニードルタイガーはモンドを大きく跳び越え倒れたままのレムに牙を向ける。
「風大跳躍からの旋回突き!」
だがそんなニードルタイガーよりクル姉が高く跳び尚且つ上からニードルタイガーを叩き落とすように攻撃を叩きつける。
「ナイスだフードちゃん!重斧撃!」
クル姉が叩き落したニードルタイガーにレトがすかさず追撃を行う。
その一撃は戦士職最強の一撃屋に相応しい攻撃だ。
流れるような連携攻撃に見惚れてる場合じゃないね。
「二人とも強化を頼む。解放。行けルート!」
「りょーかいです。強化武器」
「いきますよ~。強化装飾」
キアとリンドウから装備強化スキルを受け呼び出すのは二頭の狼である合魔物のルートだ。
合魔物化の影響で攻撃を受けなくても時間経過でHPが減るようになってしまったがその代りに成長も出来るようになった。
そのルートと共にニードルタイガーに立ち向かう。
「アンズちゃん、急いでね清水回復」
「は、はい。光輪回復」
倒れたままのレムに回復役の二人が駆け寄り回復魔法をかけ始めた。これでレムは大丈夫かな?
「ふふふ、その痛み私も貰うわよ。吸収痛打」
レムを回復する二人に何故かマリーも混ざりレムに魔法を掛け始める。
どうやら回復魔法の様だ、だけど闇魔法術士はHP回復では無くてMP回復が専門ではなかったっけ?
「さあ、我が漆黒の英知により極めし呪術、この身に受けし痛みを返せ。呪痛波動」
マリーの右目が紅く光り杖から濃い赤色をした魔法が放たれる。
目を紅く光らせるのはマリーが必殺技設定している魔法だ。
必殺技に相応しく威力は十分、一撃でニードルタイガーに大ダメージを与える。
ただそのせいなのかニードルタイガーの攻撃対象がマリーに移ったようで視線がマリーに向いている。
「え?ちょ、私なの!待って待って」
「守ってケロピーちゃん!」
今にも飛び掛かってきそうなニードルタイガーの目の前に全身は岩に覆われたかの様な大きなカエルが現れる。
ポイズンフロッグとゴーレムの合魔物ケロピーちゃんだ。
ゴーレムとの合魔物化の影響で移動連度はほぼ0だが代わりに異常なほどの防御力を手に入れたらしい。しかも攻撃を受けても与えても相手を毒化する能力付きだ。
合魔物ケロピーちゃんはその大きな身体と長い舌を使ってニードルタイガーを牽制している。
取りあえずレムや回復役の二人、ついでにマリーも大丈夫そうだな。
「姉さんはもう大丈夫そうですね。では僕の方も本気で行きます。召霊泣き女・憑依」
次にニードルタイガーの前に立つのは技能職姉弟の弟のノット。
彼が使用する召霊である泣き女を自身の身体に憑依させることによってステータス強化を行う憑依スキルを発動させる。
「姉さんは覚悟を持って今回の戦闘に参加しました。それでも姉さんをこんな目に合わせたお前はゆるさん!」
ニードルタイガーに対して怒りの目を向けながら他のメンバーと同じように攻撃に加わる、ただし攻撃が少し・・・いやだいぶ激しい。
ニードルタイガーは標的をモンドに移し抑え込まれ始める。
弱体化している為すでに身体中から生えている巨大針の何本かは折られている、このまま行けば勝てるだろう。
そう誰もが考え初めていた矢先、ニードルタイガーが背中に生えている無数の針と共にブルリと身体を振るわせ始めた。
「ヤバい、離れろ!!」
モンドの指示が出ると同じに全員回避行動に移る。明らかに何らかの大きな攻撃の準備行動に見えるからだ。
ニードルタイガーが一際大きく震えた瞬間に背中から生えている針が一斉の発射される。
「大丈夫か?」
「無事だよ」「こっちも無事ですよ~」
モンドやクル姉などプレイヤースキルが高い人達は問題ない、以前に出会った覇王バトルサボテンの針攻撃の方がスピードも密度も格段に上だったからだ。
生産職コンビすでにケロピーちゃんの陰に隠れて身を守っていた。
「こちらも問題ありません」
「少しビビったッス」
「危なかったね」
トイスとクノイはヒナゲシによって守られていたようだ。
「飛んできた針を薙刀で叩き落すって相変わらず信じられないことをする子ッスね」
「これぐらい当然です」
当然なのか・・・あのリアルチートであるモンドが通う道場の後輩だから当然なのかもね。
「それより身体を守る針が無くなったみたいだから今がチャンスなんじゃない」
ミニッツの指摘通り今まで身体を守っていた針が無くなり無防備な状態だ。
これだと普通に体の大きな虎でしかない。
弱点看破でも確認したら元々針が有った場所に赤い線が見える、ミニッツに言う通りチャンスみたいだ。
「ほーほっほっほっ!天才復活!ブロックは成功したようね。それでは天才である私を崇めなさい称えなさい褒めちぎりなさい!」
「無事だったんだね、姉さん」
ケロピーちゃんの陰で守られていたレムが起きたみたいだな。起き抜けに大言壮語なことを口にしているけど実際それだけの成果だから言わせておこう。
「さあ、倒しなさい!私に感謝をしつつ!」
「いや、お前さんも戦闘に参加しろよ」
「無理よ斧の人、何故なら私の人形は全て壊されてしまったのだから」
見てみるとそこには大破した10体の人形が転がっていた。
確かニードルタイガーの攻撃の射線上には無かったはずだけど何で壊れているんだ?
「もしかして生贄人形?」
「そうよ、察しが良いわねビッグ・ザ・マウンテン」
「誰がビッグ・ザ・マウンテンよ!」
ついついある一点に目線が行ってしまったけど、仕方がないことだよね。
「・・・セン」
後からミニッツの殺気立った視線を感じる。怖いから睨まないでくれ。
「みんな何してんだよ。真面目に戦ってよ」
「お、おう、そうだな」
「了解っす」
「そうですね」
モンドを除く男性陣は全員同罪ぽいな。
「ブロックが成功してれば飛針攻撃は無かったはずだけど製品版で改良されたのかな。そうなるとみんな油断しないで」
モンドが忠告した瞬間、針が無くなったニードルタイガーは瞬間移動でもしたのかと思えるようなスピードでスイの目の前に移動していた。
「甘いですわ!」
スイを襲う爪の攻撃をそばに居たレムが即座に防ぐ。
人形のサポートは無いがFAブロックを成功させるためにステータス上の守備力だけではなくプレイヤースキルとしての防御性能を高めていたのが解る動きだ。
「ここからニードルタイガーの移動速度が格段に上がるからね。油断しちゃ駄目だよ」
ニードルタイガーのHPは残り半分。ここからは速度勝負のようだ。




