表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メネラウス  作者: 里見 カラス
少女の章
PR
13/18

13.ひらかれる

 夜、帰ってきた商人は、足元に転がる林檎の欠片に眉を顰めた、テーブルの側では、ヘレナが少女を抱き締めている。


 商人は二人に近寄った、静寂の支配する、部屋の中で靴の音が良く響いた、しかしヘレナは動かない、雇い主の帰宅に挨拶もせず、凭れ掛かる様に少女に抱き付いている。


 異変を感じ、足を速めたが、商人が辿り着く前に、ヘレナの体がゆらりと傾き、床に倒れ込んだ、少女はその姿を表情の無い顔で見下ろしている。


 商人が駆け寄ると、ヘレナの白いブラウスの首元が赤く染まっていた。


 何があったのかと顔を上げると、目の前に居た筈の少女は窓へと移動していた、陶器の人形の様な腕を差し出し、鎖と錠前で固められた窓へと伸ばす。


 少女がそっと窓に触れた瞬間、何重にも巻かれた鎖が軋み、窓が悲鳴の様な金属音をあげて変形した。


 少女はか細い腕を窓に添えたまま、ゆっくりとした足取りで一歩、前へと踏み出す、南京錠が砕け、千切れた鎖を飛び散らせながら、窓が開かれた。


 初めて少女に吹き付ける風が、少女の流れる様な金髪を緩やかに掬い、月光が小さな後姿を照らす、少女の肩越しに見える月は満月。少女はずっと窓の向こうの月を見上げていた、月を追いかけて最上階の窓を点々としながら待っていたのだ、月が満ちるのを。


 蝶が少女に寄り添った、以前より明らかに大きく、子猫ほどもある翅が、青い光沢を放つ、蝶は下手をすれば重そうなほどの翅をゆっくりと動かし、月を目指すように飛び立つ、少女も追う様に足を踏み出した。


 商人は縋り付く様に少女に飛び付いた、行ってはならないと首を振る、少女は商人のモノ。


 緩慢な動きで振り返った少女はふわりと微笑んだ、光った銀の瞳が鏡の様に、商人の顔を映した・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ