2つ目の事件
学食を食い終わり、教室に戻り、だらだらしていた。午後からも一応授業がある。正直もう帰らせてほしい。休みがかなりいるのに授業は無かろう。まあ、今はまだ中学時代の振り返りみたいなことなので授業に遅れをとると言うことは無いだろうが。
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「終わったー」
まぎれもない谷村の声だ。おいおいこんなもんで疲れてたら体が持たないぞ。
しかし、いたるところからこのような声が聞こえるので別いいだろう。まだ、高校にも慣れていないだろうしな。
とっとと帰ろうとすると谷村と仲村と一緒に帰ることになった。帰宅途中しゃべることは家はどこらへんか、好きな女優が誰か、クラスのかわいい子は誰だとかだった。別当たり前の帰宅光景だろう。
学校を出てしばらくすると聞いたことのある着信音が鳴った。聞いたことのあるのは当たり前でその着信音は俺のだったからだ。
携帯の画面には有希と出ていた。携帯に出る。
「もしもーし、どうした?」
「お兄ちゃん大変!家に帰ったら、置手紙が!なんで、こんなことが書いてるの!」
要領がつかめない。家に帰ったら置手紙がおいてありその内容が大変だったらしい。
「まず、落ちつけ。そして主語と述語をハッキリさせて話してくれ」
「とにかく早く帰ってきて!」
プツッ、ツーツーツー。切られたようだ。
なんだかよくわからないが早く帰ったほうがいいらしい。俺は谷村と仲村に用を言い、家に少し急いで帰ることにした。
「ただいまー」
「あ、お兄さんやっと帰ってきた。早く来てください!あとお姉ちゃんが大変なことに」
「ん、あ、ああ」
次女の春もすでに帰ってきていたらしい。しかし、なんなんだ大変なことって。
リビングに入ると長女の有希がたしかに大変なことになっていた。ソファーの上にうつぶせになってなんか「なんでこんなことに」などを呪文のように呟いてる。私服で比較的短いスカートを着ているので正直パンツが見えそうだ。もうちょい、気にしてほしい。
「なにお姉ちゃんに見惚れているんですか。早くこれを見てください!」
別に見惚れていたわけじゃないんだが。いや、ここはあえて別に見惚れてなんかいないんだからね!と言っておくべきなのか。
とにかく、春に渡された置手紙を読んでみた。
えーと、なになに。『長い間旅に行ってくる。行き先は外国だ。すぐには帰ってこれないと思う。だから、我が弟よ娘3人をよろしく! P.S.教育費などなどはしっかり振り込まれているので心配しないでね by和平』補足だが和平というのは俺の兄貴の名前だ。
……すごいことが書いていたな。旅ってなんだよ、行き先もあいまいすぎるだろ。おまけに長い間ときた。少しの間とかじゃないのもすごいな。筆跡は間違いなく兄貴のものだ。
「この、クソ兄貴!」
とか暴言を吐きながら俺は兄貴に電話をしていた。
「ただいま、電話に出ることができません」
という、どっかのねえちゃんの声しか聞こえなかった。何回かけても結果は同じ。ならば、義姉さんに電話をかけるがやはり結果は同じ。クソ、今は飛行機の中か?
ってか、義姉さんは腹の中に赤ん坊もいるはずだ。それなのに旅に行くなよ。なに考えてんだ、あのバカップル!
俺の頭の中もぐちゃぐちゃになってきた。今なら有希の気持ちがよくわかる。春も落ち着いているように見えるがやはり困惑の表情が見える。
しかし、姪っ子の前でうろたえるのもかっこ悪い。まずは、落ち着こう。
「お兄さん。夏樹にこのことをどういう風に説明しますか?」
春の言葉だ。全然考えてなかった。このことをそのまま夏樹に言うとしたら、大変なことになるだろう。朝までいた父と母が急にいなくなってるのだからな。
有希も考えてなかったのかガバッと起き、顔が青ざめていくのがわかった。
俺たち3人はひとまず夏樹にどういうかを相談する家族会議を開いた。