Ⅰ:それでも僕は義妹萌なのだ。
『お・・・おにいちゃん・・・。』
僕の目の前で、優しく、それでいて高く、幼さの残っている声がする。
その声の持ち主は13歳、中学1年で、はだけたシャツと、はだけたスカートを僕にさらしている。
『や・・・やめよう?きょおだいなんだよ?』
「うひゃひゃうひゃひゃ。」
『んっ・・・。』
ペロッとなめられ、少し恥ずかしがる。
「でへ・・・でへへ。」
『お・・・おにいちゃん、い、いたいよぉ。』
「ぐふ・・・ぐふふふ、ぐぁはっははははははあ!香ちゃんかわぇぇえ!!」
ついに、叫んでまった。
液晶画面に。
萌。
無限大に広がるその世界は、
汚れることなく、ずっとキレイに輝き続け。
信じるものに力を与えてくれる。
その力もまた―――――――輝き続ける。
僕は、萌には敏感だ。
萌こそ、僕のすべてと言ってもいい。
萌と言ったら、男としてやはり女の子に求めるモノがある。
その中でも、ツンデレは代表的だろう。
だが、ツンデレと言うのは代表的であって、そう簡単にいるモノではない、ある意味レア萌の一種でもある。
ライトノベルとかでよく出てくるけれど、実際、身の回りにそう多くはいないと思う。
さらに、ツンデレというのはやろうと思って出来るモノではない。
キャラの個性といい、才能のようなモノだ。
萌という銀河はとても広く、僕が一番求める萌は、
義妹。
義妹は素晴らしい。
先ほど挙げたツンデレもついてくるし、おまけに僕好みの年下だ。
ツンデレだけじゃない、清楚も有りだし、何より義兄を尊重する義妹が一番だ(←この事に関しては夢見すぎだとちゃんと自覚している)。
そんで。
今の今、と言えばエロゲーで、主人公の義妹、(裏ルート)香ちゃんを攻略している
ところだ!!。
・・・なんてこった。
主人公の(うぎゃwww)を丸呑みにしやがった!?
主人公になりてぇ!!
エロゲーをしながらそのエロゲーの主人公に憧れる、主人公がいた。
言うまでもなく、それは――――――。
僕の事だ。
「ぐほwwww・・・・あ、やっべ!?もうこんな。」
5時だった。勿論、朝の。
当然学校もちゃんとある平日で、8時半までには教室にいなければならない。
いい感じな進み具合だったのに、とりあえず、香ちゃんにバイバイした。
「香ちゃん・・・学校から帰ったら真っ先に会いに行くからね!」
そう言って、寝た。
――――-―---おっはよ~ぅ!おに~ちゃ~~ん!!。
朝だ。香ちゃんボイスだ!僕の携帯のアラームだぁ~!!
て言っても、二時間しか寝ていないから。
だるい。
顔を洗って、歯を磨いて、朝ごはんを食べて。
制服に着替え、レッツラ・ゴ~。
マンションの駐輪場で自転車に体重を乗せ、こぎ始める。
7時半のこの町は、なかなか、嫌な空気をしていない。
マンションの目の前の道路は、幅だけは広いのに渋滞になることがめったに無い。
信号を待っていると、不意に肩を叩かれた。
ん、叩かれたというよりは、手を置かれた。の方が正しいかな。
「おっはよぅ!マタタビ。」
声をかけて来たのは、僕の友人、垣原 清音。女の子。
髪はセミロングでさらさらストレート。本人は黒と主張するが、微妙に茶髪気味である。
ちなみに、ツンデレではなくボーイッシュな元気っ子だ。
マタタビ、と言うのは僕の(あまり好ましくない)あだ名だ。
「お、おう。てか、マタタビはそろそろ止めないか?」
「いいじゃんよう。あんた、猫みたいなんだし。」
「走るの速いくらいでなんで猫になるんだよ。」
僕は、足が速い・・・らしい。
昔(自分でもいつだったか定かではない)、僕は何かに憑かれた。
何が僕に憑いたのかは分からない。
どうして憑かれたのか、原因も分からない。
ただ、何かが僕の身の中で、ざわめく何かがいる事だけは確かだった。
「走るだけじゃないでしょ、ジャンプ力だって。」
「ジャンプねぇ・・・。」
信号が青になり、清音と同じタイミングでペダルを踏む。
リハーサルでもしたんじゃないかと思うくらいで、なんか少し面白かった。
家から学校まで30分くらい。
行くまでが遠く、着くと近く感じるような距離だ。
義務教育も終わり、楽しい愛しい給食ともおさらばし、遥々この学校に通うわけだが。
「おい!神前!!」
「ふぁはい!?」
僕を呼んだのは、現代社会の佐野教員。
「な・・・何用でしょう、かぁ?」
「お前、まだレポートを提出してないぞ。いつになったら提出するんだ!?」
「ぐわわわわわわぁ!?」
某有名なアヒルのキャラクターの如く、驚いてしまった。
「今日の放課後までには仕上げろ!」
やばい・・・佐野さん、
僕に何しでかすか大体予想つくけど分かりたくねぇ、てかやんなきゃマジやべぇよ。
「ぺなるちぃだねぇ~。」
「うるせぇ。」
空は晴天、心は土砂降りだった。
きっとそのうち、土砂崩れも起きそうだ。
冬には雪崩も起きそう・・・。
下駄箱で靴を履き替え、
「そういえばマタタビ、あんた昨日の数学小テスト、どうだった?」
清音の問いにお答えする。
「勿論、僕の成績に則っての4点さ。」
10点中、4点。四捨五入で0・・・。
自信たっぷりに言ったけれど、心底落ち込んでもいた。
「わざわざ四捨五入するな~、世の中、四捨五入すればいくらだってバッサリ0だぜ?」
励ましのつもりだろうが、まったくもって効果が出ない。
逆効果ですらでなかった。
焦りと苛立ちを混合させつつも、教室へと向かう。
焦りと苛立ちを混合させると、何が出来るのだろう。
見事中和して、ストレスでも解消してくれないかしら。
自分の席へ着き、さっそく、
レポートを書き始める・・・。
「さっそくかぁ~、意外と気が回るもんだね。」
「あの人の宿題をずるずる引きずってると碌な事がない、てちゃんと学習したんだよ。」
「宿題をずるずる引きずる時点で勉強してない証拠だね。」
――――――だからテストも碌な点数とれないんだよ。
言われたくないことを雑作もなく言われた。
・・・どうやら焦りと苛立ちは中和せず、僕の怒りをヒートアップさせるための材料でしかなかった。
「ぅ・・・。」
焦りと苛立ちは怒りをヒートアップさせなかった。
「ん?どうした?」
どうやら、その混合物は、
「腹が・・・痛い。」
シャウトしているらしい。
腹痛だった。
とりあえずは大急ぎで、トイレへとBダッシュ。
ほど早くはなっかったと思うが、そのつもりで走った。
勢いよくドアを閉め、鍵をちゃんと掛けて呼吸を整える。
「いってぇ~、なんだ急に・・・。」
一応はすっきりしたものの。
まだモヤっとした感覚が残っている。
ふぅ~。とため息と一緒に天井に顔を向けた。
白い髪の女の子が、なんの表情もなくこっちを見ていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
三作目です。
一作目【無銘】と絡みを入れようと思っておりますので、ぜひこの続きも読んでみてください。
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