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ある少女の独白―type.A

作者: 千嶋桂華

いつも思うのだ。

私は欠陥人間じゃないか、と。





たとえば、目の前である少女がこけて血を流したとしよう。

当然彼女の周りは騒然となり、友人たちは一斉に駆け寄る。

「大丈夫?」「痛くない?」焦り、心配しながら優しく声をかける。

だが私は動かない。何も感じない。No move.

周りから1秒ほど遅れて、私は行動を開始する。

友人たちの気遣う言葉、仕草をコピーし、さも正常な人間かのように振舞う。

実は彼女のことを、ただのろまな愚かしい者と思いながら

「大丈夫?よかった。」

何が良いのか、分からない。



たとえば、遠く離れた地で多くの人が死んだとしよう。

当然人々は嘆き悲しむ者や、自らの生活を続ける者に分かれる。

「かわいそうに。」「自分には関係ないよ。」心の奥底では、無関係を装いながら。

私は顔をしかめる。何かを感じたようにして。

時には嫌悪感、時には恐怖、時には絶望。周囲にとって、私の表情はころころ変わる秋の空のよう。

しかしその実、何も感じてなどいないのだ。一定の確率で変わるだけの機械的な表情。

「なんてことなの・・・こんな・・・。」

こんな・・・何?




たとえば、優しくしてくれた親戚が死んだとしよう。

人々は私を慰める。家族を慰める。大丈夫だよ、と慰める。


何が大丈夫なものか。


人が死んだ、人が死んだ。祖母が死んだ。

それなのに私は何も感じない。涙も出ない。

「泣きなさい泣きなさい、辛いときは泣きなさい。」

嗚呼ごめんなさい叔母さん。私は辛くなどないのです。

辛くないのに、泣くことができるのです。泣けと言われれば泣くのです。

涙がこぼれる。何も感じないままの、無味の涙。

私の涙はぽつぽつと零れ落ち、周りを濡らしていく。

祖父は咽び、父は項垂れ、私は泣く。


私は悲しくなんて無いのに。泣けと言われたから泣いているだけなのに。



私は未だに理解していない。

少女の痛み、人々の絶望、祖母の死。

何もかもが、理解できない。理解の範疇を超えている。


少女の怪我は痛くなく、人々は皆幸せに今も生きていて

祖母はきっと、何食わぬ顔で帰ってくるだろう。


そんなことしか、想像できない。




何故彼らは共感できるのだろう、人を想って泣けるのだろう。

私にはできない。

私は私にしか共感できず、私によってしか泣けない。





私は人の心が分からない。

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