またまた~、照れちゃってぇ~!
短編です
1月の末、大寒波がやってくると、ニュースでやっていたけど、たまらなく寒い。冬なんて大嫌いだ。
そう思いながら、真冬の真夜中の道を歩く。暗い、寒い、お腹が空いた。コンビニの明かりが私を誘う。おあぁ・・・おでん・・・おでん食べたぁい。なんて思ったけど、いかんいかん。今日までに食べてしまわなければいけない賞味期限が切れそうなものがたくさん冷蔵庫に入っているのだ。ここはグッと我慢だ・・・。
コンビニの明かりが視界から消えると、ほんの少し寂しさを覚える。でも仕方がない。それに、コンビニのおでんは少し値上がりした。だから空腹に任せて色々と買ってしまうと、財布が悲鳴を上げる。給料日まであと少し。頑張れ、私。食べられるものがあるだけ幸せさ!
コツコツと私の足音が響く。冬の夜中は寒いし嫌だけど、そのぶん星空が良く見える。ちょっとだけロマンチックな気持ちになって、家路を急いだ。
ようやく家に着くころには、空腹はMAXになっていたし、お風呂にも入りたいし、エアコンをかけて暖かい部屋にしたい。
玄関を開けて、靴を脱ぎ捨てて、はたと気づいた。なんか、部屋あったかくない?それになんか、良い匂いがする。
え、もしかしてエアコンつけっぱなしで出かけちゃた?
一気に血の気が引いていく。私の頭の中には、電気代、支払いの二つの単語が渦巻いていた。
そっと自室にはいると、エアコンは消えていた。
ではなぜ少し部屋が暖かいのだろう。少し怖くなったが、さすがに寒い。慌ててエアコンをつける。荷物を置いて、台所に移動して電気をつけると、コンロに鍋が一つ置いてあった。良い匂いの正体はこれか、と蓋を開けると、なかにはおでんが入っていた。
まだほんの少しだけ、鍋が温かい。
慌てて私はスマホを見た。案の定、父から簡素に連絡が来ていた。
[今日行ったけど、仕事だったな。おでんつくっといた]
母が早くに亡くなって、男手一つで育ててくれた父。私が上京したあと、一人で過ごしていたけど、今はもう仕事は辞めて、「自炊に目覚めた」なんて連絡をくれていたんだっけ。
私が子供の頃、父は、冬になると必ずおでんを仕込んでくれた。初めは出汁もとらないで、おでんだねをお湯で煮込んだだけのおでんもどきが出来上がったんだっけ。子供だった私は「美味しくない」なんて言ってしまったけど、一人暮らしをしてから、あの時の大変さはよくわかったつもりだ。
つゆを一口飲むと、幼い頃の記憶も呼び覚まされる気がした。
「おいし」
ぬるくなったおでんが、冷え切った私の体に沁みる。
最近実家に帰っていないなぁ。今度は私が、料理の腕前を披露してやろう。なんて思いながら、大根をひとつまみ。じゅわじゅわと出汁の浸みた大根は、やっぱり美味しい。
だんだんエアコンが効いてきた。部屋の中も暖かくなって、ほっと一息ついたところで、父に連絡を返した。
[おでんありがとう。今度一緒におでん作ろう]
夜中だと言うのにすぐに返事が返ってきた。
[作りすぎたから持っていたんだ。とうぶんおでんはいい]
——またまた~、照れちゃってぇ~!——
冬はおでん食べたくなりますねぇ~。




