表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 冬桜
7/7

たんぽぽの綿毛

ある春の日のお話

 窓の外を見ていたら、たんぽぽの綿毛が風に乗って飛んでいた。

 ふあふあと白い綿毛が飛んでいた。

 手を伸ばして捕まえようとするけれど、綿毛が逃げるばかりで捕まらない。

「もっと体が小さくて軽かったら、綿毛に乗って旅に出かけられるかしら」

 きっと、東に飛んでいくのだろう。

 きょうは風が強いから、海を超えた「大陸」と呼ばれる砂しかない場所まで飛んでいくかもしれない。

 そこにはキツネのような生き物がいるらしい。

 そのキツネのような生き物は砂の中に隠れていて、人を砂の中に招き入れるのだそう。

「お嬢さん、ここは灼熱の砂漠の土地。さぞかし喉が乾いたでしょう。美味しい紅茶はいかがですか?」

 カフェのウエイトレスさんのような恰好で、穴の中にある隠れ家のようなカフェに誘い込むのだ。

「熱い紅茶は嫌です。冷たい飲み物はありますか?」

 私がそう聞くと、キツネのような生き物はうやうやしく頭を下げた。

「もちろん!サボテンの花で作ったアイスティーはいかがですか?」

「ぜひ、それを頂戴」

 私は冷たい飲み物ならば、なんでも良かっただろう。

 ずっと遠くまで飛ばされてきたから、すっかり喉がカラカラだった。

(早く来ないかしら)

 待ちきれず、厨房の中を覗き込む。

 すると、小さなハムスターたちが器用にサボテンの皮を剥いてミキサーにいれていた。

(アイスティーと言っていたけれど、紅茶は使わないのかしら?)

「アイスティー」と聞いて、てっきり自分の知っているアイスティーが出てくると思っていたけれど、ここは知らない土地で同じ名前の飲み物でも違うものが出てくるのは当たり前だったことを忘れていた。

 ハムスターたちはサボテンの皮を剥き終えると、私の知っている10倍くらいの大きさのレモンを10匹がかりで絞ってミキサーの中にいれた。

 蓋を閉めてミキサーをかける。

 ぐるぐる回っていると、不思議なことに私の知っているアイスティーのような色になってきた。

「できましたか?」

 厨房の奥からキツネのような生き物のウェイターがやってきて、ハムスターたちに声をかける。

「グラスに注いだら完成です。……できました!」

「では、お客様に持って行きましょう」

 その声で私は慌てて席に戻る…

「お待たせいたしました。サボテンのアイスティーです。お好みでお砂糖をお入れください」

 完璧な配膳でキツネのような生き物のウェイターがおじきをし、去っていく。

「あ、あの!お金は?」

 そう、喉が乾いていてすっかり忘れていたが、この地域で使えるお金を持っていないことに気づいた。

「ここに招いたのは私です。お金は良いですから、ゆっくりとお過ごしください」

 そう言って、再び綺麗なおじきをして厨房の奥に戻って行った。

 私は「本当に良いのか」と思いながら強烈な喉の渇きには勝てず、砂糖も入れずに初めて飲むサボテンのアイスティーを飲む。

 まるでローズヒップティーのような酸味のある、けれど不思議と甘みのある味だった。

(美味しい)

 すっかり冷えていて、一気に飲んでしまう。

 そして、気がつくと目が覚めていた。

 少し起き上がると、目の前には赤いサボテンの花が咲いていた。

「いつの間に咲いたのかしら?」

 今朝見た時は、まだ小さな蕾だったはずだ。


 春と夏の境目。

 サボテンの花がたんぽぽの綿毛の旅をプレゼントしてくれたのかもしれない。


おわり


タンポポの綿毛のお話を書きたいと思い、思いつくまま書きました。

可愛らしい、不思議なお話になりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ