一章 四話
私は信じられなかった。
どうして私と美貴が同じクラスなのか。
信じられない。信じたくない。
硬直していると、少し離れたところで美貴の声がした。友達と自分の名前を楽しそうに探している様子。
「あ!あった!3組!」
「ほんとだ。うちら違うねクラス。」
「うん・・・あれ、美夏・・・」
その瞬間、私の名前に気付いた美貴と眼が合ってしまった。
私は急いで目をそらし、人ごみから抜け出した。呼びとめる美貴の声を無視して。
変な汗かいてる。手が自分の名前見つけてから震えてる。止まらない。
嫌だ。あいつと同じクラスなんて。嫌。嫌。
「大丈夫・・・?」
思わず差しのべられた手を払ってしまった。
「あ・・・ごめんなさい・・・」
我に返り、相手の顔を見ると、美貴ではなく、知らない女の子。
な、なんて申し訳なことしたんだ私!
私は頭を下げた。
「ごっごめんなさい!つい・・・ほんとにごめんなさ・・・」
「あ、え、えっと・・・・・」
私は必死に誤り続けた。周りがざわついてることにも気付かず。
怒られる・・・絶対・・・
あんなに失礼な事して私・・・
今にも泣きそうな私の肩は誰かに支えられた。
「ごめんなさい!美夏が何したかわからないけど・・・とりあえずすみません!」
この声・・・美貴?
顔をあげると、相手の顔を見つめて謝る美貴の姿があった。
「あ、いえ・・・この子が具合悪そうにしてたから心配で・・・」
私を心配してくれた彼女もあわてている。こんなことになるとは思ってなかったんだから。
それを聞いて美貴はきょとんとし、しばらくしてからまた謝り始めた。
「そ、それこそなんかごめんなさい!お騒がせしました・・・」
美貴は私と同じように深深と頭を下げ、私の方をみた。
そしてやさしい笑顔で私に言った。
「大丈夫?保健室行こうか?」
私は美貴の言葉を無視して手を振り払い、彼女にお礼を言った。
「大丈夫です。有難うございました。」
私はその場を去っていった。
その時、耳に入った。
「ねぇ・・・あの子感じ悪くない?かなのやさしさをさ。」
かなとはきっとあの彼女の事だろう。
「・・・いいよ別に。」
彼女の声。
「よくないでしょ。愛想ない奴だよね。心配されて当たり前だと思ってるんじゃないの?」
嫌でもそれは耳に入った。
少しでも自分の事を心配してくれる人がいて嬉しかった。美貴は別として。でもそれもつかの間。
そう、私は感じ悪い子。愛想ない奴なの。
だからかかわらないで。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。




