四章 三話
誤字脱字の指摘
アドバイス 感想等
お待ちしております。
---二日前
「もう・・・どうして出ないの?」
望は『呼び出し中 一分三二秒』と画面に映し出された携帯を握ったまま、重いため息をつく。
時計を見ると、午後六時少し。
バイト?そんなわけない。あいつしてないし。
いつもだったらこの時間帯はお互い暇で、連絡取り合ってるのに・・・。
こんなの、初めて・・・
携帯を勢いよく閉じてベットの上に投げつけた。
「悠介・・・何してるの・・・?」
~~~~~~~~~~
「じゃぁ、愛美ちゃんまた明日ね!」
「うん、じゃあね美貴。」
午後六時半。愛美と美貴は駅の前で別れた。
愛美は別れてから直ぐに鞄から携帯を取り出す。すると、着信を告げる携帯のランプが点滅していた。
げっ・・・もしかして、親?
愛美は恐る恐る携帯を開く。
―望―
『着信アリ一件』の文字の下に、望の名前があった。
すぐさま折り返しの電話を入れる。
「・・・あっ、もしもし望?」
「・・・・愛美・・・」
望の様子がおかしい。
愛美はすぐに望の異変を感じとった。
「どうしたの?この時間帯はいつも悠介といちゃついてるくせに。」
少し嫌みをこめて言ってやった。もちろんわざとである。
愛美は、重い空気が大嫌いだから。
「・・・悠介と、連絡とれないの・・」
「え?」
予想外の展開。まさか二人の関係に亀裂が生じているとは思いもしなかった。
「何かわかったらすぐ連絡する。大丈夫だから。」といって望からの電話を切る。
そして悠介に電話をかけようと電話帳を開いたその時、
「・・・悠介。」
目の前に、バスから降りてきた悠介を見つけた。
「お、田代やん。」
のんきな顔でこっちに手を振って向かってきた。
こいつ、望があんなボロボロになってるのに・・・
---ドゴォオッッ!
「いっってぇ!!何すんだよ狂暴女!」
悠介の態度がむかついて、鳩尾に一発入れさせてもらった。
「あんたねぇ、携帯開いた?」
「あ?あぁ、そういえばゲームに夢中で放置してたわ。」
ゲ、ゲームってこいつ・・・
愛美は今にも悠介の左頬に飛んでいきそうな右手をぐっと抑えた。
「今までなにしてたのよ。」
「ん?ショッピングセンターの中のゲーセンでひと遊び。」
「は?今あんたバスからショッピングセンターの前まできたじゃない。」
おかしい。こいつは今までショッピングセンターで遊んでたって言ったけど、今こいつはショッピングセンター前のバス停に降りてきたのよ?
何を隠して・・・
愛美は悠介をじっと見ていると、「あっ」と悠介は口を零した。
「そうそう。美夏を送ってやったんだよ。」
・・は?美夏って、橘美夏?
「美夏と一緒に遊んでたんだよ。ほら、あいつあーゆーの馴れてなさそうじゃん?したらすげーはしゃいでさ。すっげー可愛かったよ・・・ってあぁ!ちょ!二発目なし!」
気がつけば愛美の右手の拳は悠介の手によって押えられていた。
「あんたさぁ!望という彼女がいながらあいつと遊んでたわけ!?しかも名前で呼んじゃって!しかもしかも可愛い!?ふざけんじゃないわよ!」
「いやごめん悪かったって!でも本当だぜ?いきなり変わってさ、お前もそうおもったっしょ?」
「確かにそう思ったけど・・・そうじゃなくて!」
愛美は悠介の胸ぐらを力いっぱい引っ張って殴ろうとした。
「はいストップ!ここでやったらお前の将来に支障でっぞ!」
本気で焦っている悠介をみて、愛美は仕方なく悠介から手を離した。
「とにかくさぁ、望があんたと連絡とれなくて落ちてんのよ。はやく慰めてあげな。」
「え?まじ?携帯鳴ってなかったけどなぁ・・・」
「・・・携帯放置してたら鳴ってても気づかないに決まってんじゃない。」
悠介は制服のポケットから携帯を取り出した。
「あ!電源きれてる!」
「・・・馬鹿。」
「じゃあ俺望んち直行して理由説明するから!ありがとう田代!」
悠介はそう言って改札を通ってダッシュで行ってしまった。
「・・・私も帰ろ。」
愛美は自宅へ向かうためバス停に向かった。