一章 三話
私は部屋を出た後、リビングに向かわず、玄関に向かった。
それをみて、リビングから美貴が出てきた。
「美夏ちゃんご飯は?一緒に食べようよ。」
私は無視して、家を出た。
朝ごはんなんてもうコンビニで十分。もらったお年玉は中学入ってから一度も使ってないから、それで自分で買う。
もう高校生なんだから。
あまりにもあの家にいたくなかったからそのまま出てきちゃったけど、時間が気になる。まだ早い気がする。
とりあえず最寄りのコンビニに入って、時間を確認した。
七時四十五分。まぁ大丈夫だろう。
私は朝ごはんとなるパンを探した。
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自分で買った朝ごはんを食べ終え、八時ちょい過ぎに学校についた。この近くを歩いているときから解っていたが、親や友達と一緒に来る人が多かった。
みんな楽しそうにこれからの生活について話していた。
別に羨ましいとか思わない。私は高校でだれかと馴れ合うつもりは端からないのだから。
校門の近くにいっぱい桜が咲いていて、花びらが私の周りを舞っている。
「綺麗・・・」
それは思わず声をあげてしまうほど。
私ははっとして口を押さえた。周りを見渡すと、別に私は注目されてなかったから安心した。
すると後ろから話し声が聞こえる。
「あー本当にこの日来ちゃったんだ・・・どうしよう超不安・・・」
振りかえると、少し気弱そうな女の子が友達としゃべっている。
「大丈夫!私がなんとかするよ!ほらっ!元気出して!」
その子の隣に、その子を元気づけようとその子の背中をばしばしと叩く活発な女の子。
そして、二人は笑い合っていた。
似てる。
あの頃の私たちと。
風景、会話全てが同じに見えた。
私は目を擦った。今頭を過った記憶を掻き消すかのように。
あの時のことなんて忘れろ。消せ。これからの人生に必要ない。
私はクラス表を素早く確認し、自分の名前を見つけたので教室に向かおうとした。
が、信じられない光景。
クラス表を二度見した。そして私の名前があった場所を探し、私の名前の下を恐る恐る見た。
目を疑った。でも確かに、書いてある。私の名前の下に。
【橘 美貴】 と。