三章 四話
深山さんが亡くなって少しがたった。
あれから私は、何度も手首を切りこもうとした。
所謂、『リストカット』
私は深山さんの葬式に行った時、深山さんのお母さんに話しかけられた。
お母さんの話によると、深山さんは決して言わなかったが、中学に入ってから手首の傷が目立つようになり、日に日に増えていって泣いていた。
どうして私に話しかけたのか、そしてどうしてそのことを言うのか、解らなかったが、前者だけわかった。
高校入ってから、深山さんは私の話をするようになったらしい。
『私と同じ小説読んでるの。』
『あの子もファンタジー小説好きなのかな?』
『友達になりたい。』
私に話しかける前から、深山さんは私を見ていたのだ。
私はそれを聞いて涙が出た。
深山さんが私を信じたのは話をしたその日からじゃない。
深山さんが自分の好きな小説を読んでいる私を見つけた日から、深山さんは私を『いい人』『仲間』だと思っていたんだと思ったから。
悲しい。
私がもっとクラスの人に関心を持って深山さんを見つけたら、私たちはもっと早く友達になれて、信頼し合えたかもしれないというのに。
「私、最低・・・」
薄暗い私の部屋で私は呟いた。
私は筆箱からカッターを取り出した。そして、左手首に刃を持っていく。
両手が小刻みに震える。ツツーと汗が頬を伝う。
こんなもんで怯えるんゃない。深山さんはこれ以上に痛い思いをしたんだ。
私は自分に言い聞かせ、刃を縦にした。
「美夏。入るよ。」
ドアが開いた。
私は驚いて、そのまま硬直してしまった。カッターを手首にあてたまま。
美貴が部屋に入ってきて、私を見る。
美貴の表情が笑みから次第に怒りに変わった。
美貴はドタドタと足音を立てながら私に近寄ってカッターを奪い、私の左手首を美貴の目の前に持ってかれた。
無傷な手首。
美貴ははぁっと息をついて、
―――パシッ!!
私の頬をひっぱたいた。
「何しようとしてるの!?それはどんなことがあっても絶対にしちゃだめだって!」
『五月蠅い』
そう言おうとして美貴のほうを向くと、美貴の眼にはうっすら涙がたまって目が充血していた。
「駄目・・・本当に・・・失敗したらどうするの・・・・?」
美貴は膝をついて、私の左手を両手で包み込む。
美貴の肩が微かに震えている。
・・・泣いてる?
反抗しようとしたけど、なぜかできなかった。
美貴は、本当に私を心配してるみたいだったから。
「美夏・・・私をどんなに無視したっていいよ・・・だから」
美貴が顔をあげた瞬間、私は確かに見た。
美貴の目が涙で埋まっている。
そして、言葉の途中で美貴は泣き崩れた。
おかしい。
いつもだったら振りはらう美貴の手。
けど、今日はおかしい。
振りはらいたくても、はらえない。
動揺してる私・・・
どうして?
おかしいよこんなの・・・・
「・・・泣いてないで・・・」
勝手に口が開いた。
美貴がゆっくり顔を上げる。
「言葉の続き・・・早くいいなさいよ・・・」
どうしてこんなこと言うの私?相手は美貴なのに、心配してるみたいな口。
涙腺が緩む。泣きそう。
すると、私の手を握りしめる力が強くなった。
「無視したっていいから・・・自分を傷つけるのだけは止めて!」
涙が溢れ出した。そして私は声をあげて泣いた。
美貴が私の背中を優しくさする。
中学の時のように。
懐かしくて、温かい。
自分はもしかしたら、美貴がこうしてくれるのを待ってたのかもしれない。
たとえ私が美貴を露骨に避けても。
私はいろんな意味の詰まった涙を、美貴の腕の中で全て出し切った。
こんにちは。ゆいです。
えっと
これから学校が始まるので
更新ペースおちます。すみませんorz
できるだけ一日に一回はできるように
頑張ります(´・ω・`)
応援宜しくお願いしますorz
では。