一章 一話
薄暗い部屋の中、太陽が出てきてカーテンの隙間からやさしい光が差し込む。
布団から顔を出し、時計を覗き込むと現在時刻午前5時半。
――――起きるにはまだ早い・・・
そう思いつつも体を起こし、ぼやっとする頭を抱えた。
昨日・・・いや、正確にいえば今日はよく寝れなかった。昨日のうちに睡眠につきたかったが、今日の事を考えると、中々寝付けなかった。
でも今から寝たら、きっと時間通りには起きれない。だから今起きた。
私、橘美夏は布団から出て机の椅子に腰をかけた。ノートと教科書を本棚からとって、高校の授業の予習をした。
私は春休み中、特にすることもなかったから勉強ばかりしていた。勿論、受験前だって、その前だって、常に勉強していた。でも、受験で一番にはなれず、新入生代表のあいさつは私ではない、違う子がするの。
何度も見たページをみて何度も同じところを勉強していた。さすがに飽きる。
飽きるほど勉強したのに、他の子に負けた。私は負けた。
――――――――――バンッ!!!
私は机を思いっきり叩いた。ノートや消しゴムが一瞬宙に舞った。
合格発表の日の事を思い出すだけで手が震えだす。なんともえない敗北感。
力強く握っていたシャーペンを置いて、再び布団の中に入った。ここが一番落ち着く、私の一番大好きな場所。
寝はしないけど、少し休む。この安らぎの場所で。
私は今日の高校の入学式のために備え、少しばかりの休息した。




