三章 二話
―――バキッ!
音がした。
「今日はこれくらいで赦してやる。」
やばい・・・こっちに来る!
そう思って逃げようとしたが、遅かった。
「あ?」
トイレから出てきた怖そうな女たちが出てきてしまった。
足が震え、俯くことしかできない。
私は一番前にいる女に突き飛ばされた。
「チッ」
舌打ちをして、女たちはどこかに行ってしまった。
私は急いでトイレの中に入った。
そして目に入ったのは、赤くはれ上がる頬を押さえながら水道の近くにもたれ掛かる深山さんの姿。
「みっ・・・深山さん!」
私は深山さんに駆け寄ろうとした。
「こないで・・・」
その一言に私の足は止まる。
「こないで・・・見てたんでしょ・・・?」
声が震えている。
「私解ったよ・・・橘さんの影が見えた・・・」
見えた?私の影が?
「助けてくれると思ってたのに・・・」
助ける?
私が?
私はとりあえず謝っとこうとした。
「あ・・・えっと、ごめ・・・」
「私こそごめん。」
私の謝罪が過られ、逆に私が謝られてしまった。
「なんで深山さんが謝るの・・・?何も悪いことは」
「私が橘さんを信じたのがいけなかった。」
え?
なんだろうこの気持ち。足がふわふわする。
深山さんは立ちあがって、私の横を無言で通り過ぎた。
信じた?深山さんが私を?
どうして?
頭の中は疑問でいっぱいだった。
―――キーンコーンカーンコーン・・・
予鈴がなった。
「やばっ・・・」
私は急いでトイレをでて教室に向かった。教室に向かいながら私は決めた。
さっきの事については、深く考えない。
それが一番だと、私は思った。
が、それは後に後悔することになる。
~~~~~~~~~
次の日、私は少し早めに学校に行った。
理由は、深山さんと小説について話したかったから。
昨日のいじめについては、最近始まったことじゃないと思う。だから、深山さんには少しでも楽しんでもらいたかった。
そうすれば、気もちょっとは楽になるだろう。
そんな軽い考えだった。
教室に入るが、深山さんの姿は見当たらない。
早く来すぎたかな・・・?
最初はそう思い、席について深山さんの大好きな青山さんの小説を読んで待っていた。
暫くがたった。教室の中はもうすでににぎやかになっている。
でも、深山さんはこない。
今はもう朝礼5分前。
深山さんはいつも15分前には学校に着いているはずなのだ。
ため息をついて、小説に目を戻そうとすると、5分前にも関わらず先生が教室に入ってきた。
「みんな、席に着いてください。」
先生の表情がいつもと違う。暗い。
みんながあきらかにおかしいとおもい、大人しく席に着いた。
そして、先生の口が重そうに開いた。
「昨日の深夜、深山さんが家で自殺を図りました。」