二章 七話
私以外に誰もいない家の一部屋。
その隅に受話器を持ったまま放心状態の私。
微かに手が震えだす。それと同時に息も少しずつ荒くなって・・・
「み・・・美夏だよね?」
―――ビクッ!!
胸が跳ねあがった。
私の頭はもう真っ白。ただ、受話器を持つ手が震えている。
「どうして美夏が美貴の家の電話に出るの?もしかして今日遊べないのって・・・」
友達の声に怒りが表れている。
「ねぇ。二人で遊ぶから断ったの?」
どうしよう・・・。何も言えない・・・・。
「美貴は?美貴に変わって。」
友達は美貴と話をしたがった。
どうする?
友達はここは美貴の家だと思っている。私の家だとは思っていない。
ここに美貴は今いない。私しかいない。
美貴のいない美貴の家に私がいるって、あきらかにおかしい。
流石にばれる・・・・!
――――ブツッッ!!
自然に私の指が電話を切っていた。
手が尋常じゃないくらい震えている。変な汗が頬を伝う。
バレる
明日学校に言ったら絶対聞かれる
『なぜ電話を切った。』
『なぜお前が美貴の家にいた。』
――――プルルルルルル
――――――――――!!!!!!
電話!?まさか・・・・
さっきの・・・・!!
私は急いで電話のコードを引っこ抜いた。
・・・これでもう電話は来ない・・・・
でも明日が来たら。明日が・・・
「・・・うっ・・・うぅう・・・・」
私はその場に泣き崩れてしまった。そして、頭を抱え、目を瞑る。
今はただ、泣きながら明日が来ることに怯えることしかできなかった。
――――美貴・・・早く帰ってきて!